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008 悪役令嬢マリア、戦場に行くその3

 辺境の地に到着した。見渡す限りの草原だ。ハインリヒ王子が一言「広すぎる」


「確かに」とグラントが言う。グラントはハインリヒ王子の参謀としてこの戦に参加している。私のせいだ。申し訳ない。


 どこからでも侵入し放題だ。総兵力一万では守りきれない。


「オット、この広大な草原をどの様にして守るのか? 馬防柵を設置しても回り込まれると防げない」


「馬防柵は槍部隊と弓部隊の前と両側に設置して槍部隊は近づいて来た馬を突き、弓部隊は射程に入った馬を射ます。歩兵は落馬した兵士のトドメを刺す。これの繰り返しです」


「彼らにとって馬は友であり家族なのです。馬が狙われるのは耐えられないのです。おそらくその精神は今も変わっていないと思います」


「彼らも部族同士で争うこともありますが、お互いに馬だけは狙いません」


「騎馬隊は相手の騎馬隊を追い散らすのが役目です。問題は相手の騎馬隊が五千らしいという事です。こちらは三千しかいないと言うことでしょうか」


「騎馬隊を追い散らすことが出来ずに後ろに回り込まれれば全滅でしょうな」


 アメリーの祖父、オットさんがあっさりと言った。


「マリア、わかったか! シャルロッテの怖さが」


「クーデターを起こさなくても、俺がここで戦死すれば、手駒の叔父上が国王になる」


「ハインリヒ王子、計画は前倒しにされたのですから、予定通りの数の騎馬隊がそろいますでしょうか?」


「それに期待を掛けるしかないか」


「ハインリヒ王子、おそらくマリアの言うことが正しいかと愚考いたします。早期に暴発させたことで、相手に万全の体制を立てさせなかった。問題はオット殿が言うように三十年ぶりの戦ゆえ、兵がどの程度戦えるかだと思います」


「訓練では満点でも実戦では零点と言うこともありますから……」


「グラント、戦の前から不穏なことを言わないでもらいたい」


「ここは内輪の集まりゆえ本音で話すのが良いかと」


「クレール家のご息女に、期待しております」


「ご期待に応えてみせます」


「さすがわ疾風のイライザのご息女ですな」


 いや別に褒めて貰わなくてもただ、英雄物語のセリフを言っただけだから。



「私の指示あるまで待機」


「ハインリヒ王子、クレール家は独自で動きたいのです。ある策を試してみたいのです」


「その策とは何か?」


「敵の騎馬隊が十騎出れば、クレール家の騎馬隊も十騎出します。ですので相手次第です」


「到着の儀に付き合うおつもりか?」


「はい、王国軍が臆病と思われるのはしゃくですから、オット様」


「クレール家の令嬢、オットと呼び捨てでよろしいですよ」


「お前たちの話していることはよく理解出来ないのだが、王国軍が臆病者にされるのは、私も我慢ならない。その機会があれば、クレール家の独自行動を許可する。それ以外は、私の命令に従うように」


「伝令、各部隊にこの事を伝えよ!」


「騎馬隊五千はいないようですな。まあ、それでも四千弱はおるようですな」


 ハインリヒ王子の表情が一瞬固くなった。すぐに戻せたのはなかなかのものだ。アメリーに見せてあげたい。



 相手の騎馬集団から十騎の騎馬が駆け出した。到着の儀式を行うようだ。私はハインリヒ王子を見た。首を縦に振った。


「クレール家の者、常に二人一組で一騎は盾役、もう一騎は盾役に守られながら、相手に接近すること。相手に接近したらそのまま並走する。私と私が選んだ相手とが戦いを始めたら、手出し無用。ジョーダンは私とともに。ジョーダン、私が落馬したら連れて逃げてね」


「マリア様が馬から落ちるとは考えられません。馬の上で逆立ちをされないか心配でございます」


 クレールの騎馬隊が一斉に笑った。よし!


「クレール家の騎馬隊出陣!」


 ふう、ジョーダンさんと何度も練習した出陣の挨拶を噛まずに言えた。ほっとしたよ。



 私たちが出陣すると矢が射掛けられ始めた。


「盾役、矢から剣役、槍役を守れ」


 私に向けては、相手方は矢を射って来ない。私が大将の旗ざしものをしているから。到着の儀式は大将戦なのだ。


「マリアお嬢様、さて誰が敵の大将だとお考えですか?」


「前から三番目の馬が苛立ています。大将はあの馬に乗っている方です」


「では、儀式通りに」


 私は三番目の馬に並走を始めた。相手方の騎馬集団が大盛り上がりをしている。当たったみたい。これで王国軍を臆病者呼ばわりは出来なくなった。


 剣が私の首に向かって振われた。私はマリオのお腹にくっついて避けた。見ようによっては落馬に見えたかも。私が元の位置に戻ると、これまた相手方の騎馬集団が大盛り上がりをしている。




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