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072 悪役令嬢マリア、ネルーさんが来訪する

 病院であらゆる検査を受けた。大学病院にも行かされた。その結果はすべて異常なし。担当医からミキさんはどうして普通に歩けるのかと尋ねられた。入院中、意識がないので、栄養は点滴で補給していたのと、二か月間まったく歩いていないので通常なら歩行のリハビリが必要だと言われる。

 

 担当医から、もう少し調べたいから入院してほしいと言われたけれども、未知なる生物を調べる目を担当医がしていたので、即退院した。しかし月に一回経過観察で通院するようにと言われて予約票を渡される。


 タネを明かせば、ガンダルフが私に身体強化の魔法をかけてくれたから、衰えた筋力を補っているのと、毎日乗馬をしていたので、以前よりもバランス感覚がよくなっているから。



「ミキちゃん、会社なんだけど」


「明日から行く」


「ええとね、ミキちゃんがいつ意識を回復するかがわからなかったから、お父さんが会社に迷惑をかけてはいけないと言って退職届けを出してしまったの」


「……」退職届けって本人以外が出しても良いのだろうか? まあ、私の場合父親のコネで入ったコネ入社だからありなのかもしれない。私は無職になった。お母さんはなんか嬉しそうだ。お見合いの日程が組みやすくなったっていう顔に見える。



「ミキ、車にはねられた時の記憶はあるかな?」と父親が早く会社から帰って来て私に尋ねた。


「まったくないけど」


「ミキをはねたおじいさんが言うには、ミキは空中に浮いていたと、警察で何度も言っていたんだよ」


「ミキと車が接触したのは、ミキの着ていた服の繊維が車に付いていたこと、目撃者もいたので間違いないのだけれどね、目撃者全員が、車にミキがはねられて空中に飛ばされて、路肩の植え込みに落ちたと証言している」


「なのに、ミキは擦過傷があったくらいでほぼ無傷だった。警察でも奇跡という扱いになっている。そうそう、新聞にもミステリー扱いで大きく載ったから、明日からマスコミが殺到するかもしれない」



 退院して数日してからマスコミ各社から取材の申し込みが殺到した。家から出ると記者さんがどうして普通に歩けるのですか? とか車にはねられた時空中浮遊をしていたのですか? とか同じことを繰り返し質問された。


 異世界に行っていたのですか? って聞かれたらはいって答えるのだけど、はねられた時の意識がないのでわかりませんとしか答えられなかった。


 SNSでは私は武道の達人で、車にはねられた瞬間跳躍したことになっている。笑える。でも私の話題は一月もしない内に落ち着いてしまった。



 無職だけれど、実家暮らしだし、保険会社から見舞い金が振り込まれたので生活に困ることはない。今のところ事故の後遺症が出ないかと、両親が心配しているのでお見合いの話も止まっている。時間があるので、小説の続きをせっせと書いては投稿サイトに投稿している。


 ゲーム会社と出版社とのタイアップ企画にも投稿してみた。他の応募作品を読むと、よくストーリーが考えられていて、練られているのがわかる。才能の違いはどうしようもないなあとは思った。でも諦めないけれどね。


 ガンダルフは幽霊のようにというか幽霊そのものだけど、私の家のどこかに浮遊している。気が向けば外出もしているのみたいだ。お陰でウチの近所が心霊スポットって某雑誌に載ってしまった。


 家のチャイムが鳴った。新聞の勧誘だろうか? それとも宗教だろうか? 「はい、何かご用でしょうか?」


「ガンダルフに会いに来たのよ。ミキさんお元気」


「ネルーさん、今、玄関を開けます。少しだけ待ってください」私は急いで玄関の扉を開けた。そこには着物姿の美女が立っていた。


「ネルーさん、お久しぶりです」


「ガンダルフはいる?」


「はい、家のどこかに浮遊していると思います」


「あの人ね、どさくさに紛れて体を置いてこっちに来ちゃったのよ。私、あの人の体を持って来たのよね」


 ネルーさんが折りたたんだ紙人形を開いた。その瞬間、その紙人形はガンダルフになった」


「あなた、こっちで何をしていたのかしら?」


「観光をしていました。急に思い立ったので申し訳ありませんでした」


「そうね、新婚旅行ということで勘弁してあげるわ。先に来てたのだから案内してくれるわね」


「はい、もちろんです」


「ミキさん、私たち新婚旅行だからこちらにしばらく滞在するわね。ホテルは予約してあるから、この家に泊まろうなんて考えてないから。ただ、私たちがあちらに戻る時は一緒に来てほしいの」


「ええ、わかりました。両親に話ます」


「その時は私たちも同席させてくれるかな。私のスマホの番号はこれだから。お願いね」


 そう言うと美女とおじさんだけど超格良い。間違いなく芸能人っていう感じの二人が家を出て行った。SNSでは海外からお忍びでスターが来日していることになって、二人の写真がバズっていた。

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