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悪役令嬢の私との婚約を、王子が破棄しないと私は断頭台に直行なのよ  作者: 田中 まもる
第十三章 悪役令嬢マリア、大賢者のもとへ
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067 悪役令嬢マリア、迷子になる

 指南車はこっちを示しているので、方角は間違いないのだけど、全然進めない。


「姫様、どうも迷いの世界とやらに捕まったようです。ここに先程私が印を付けた木がありますから、ぐるぐる回っているだけだと思います」とオアシス都市で同行することになった衛生兵さんが教えてくれた。


「迷いの世界ですか?」


「魔物、魔人が己が世界を展開してそこに旅人を誘いこんで、その命を奪うと私の村では言い伝えられています」


「つまり、この世界を創り出した魔物か魔人を倒さない限り出られないということですか?」


「その通りです」


「ユリアさん、何か敵意なものを感じませんか?」


「敵意というより空腹感を感じます」


「空腹感ですか? 魔人ではなく魔物の類いみたいですね、ユリアさん、その空腹感はどこからより強く感じますか?」


「そうですね。あそこの木々の辺りでしょうか」


 私はユリアさんが指し示した辺りに爆烈魔法を落としてみた。大きな蛇が木々の間から、明らかに怒って、空腹感ではなく強烈な敵意を持って現れた。


 私の頭の中に声が聞こえた。「大人しく喰われればあっさり殺してやったのに、苦痛で殺してくれと叫ぶように、なぶり殺してやる」と頭の中で叫んでいた。ウザイ。


 私は蛇ごときに喰われ気はない。出来れば逆に食べてやる。蛇って以外にあっさりした味だったりする。サバイバル生活では、蛇は必須のタンパク源なのだ。狩るものから狩られるものに変わったことを思い知れだ。


「皆さんはここにいてください。ちょっと狩ってきます。今日の夕食は蛇鍋にしたいと思います」


 何だろう、このドン引きする感じは、兵士さんたちは仕方ないとしても、遊牧の民も蛇を食べないのだろうか?


 私は、マリオから下り、オリハルコンの剣を抜き、大蛇に向かって走り出した。大蛇はなめられたと思ったようで、私の頭の中で「ぶっ殺す」を連呼していた。大蛇が毒液を私に向けて吹いた。きちゃない、ああ、もう濡れて気持ち悪いと思いながら、大蛇に近寄る。大蛇は毒液がまったく私に効かないので、すごく慌てている。


 尾を振り回して私から距離を取ろうとしているけれど、私は風魔法で空中に階段を作って一気に大蛇の頭のところまで、駆けあがり、スパッと蛇の頭を斬り飛ばした。


 そこから後は血抜きをして、皮を剥いで、内臓を取り除いて、骨とお肉を分けた。その時、空間にヒビが入って、ガラガラと音を立てて崩れていった。周囲は見慣れた草原があった。


 私はハーブを摘んで夕食の準備を始める。ネギとか白菜とかあると美味しく食べられるのだけど。ここにはハーブしかない。残念だ。蛇の血とお酒を混ぜてカザルさんに飲ませたいのだけどユリアさんが絶対反対するだろうし、残念だ。


 皆んなのところへ行こうとしたら、ユリアさんが「マリア様、毒液を洗ってから来てください」って怒られた。ウォーターの魔法と風の魔法の合わせ技で、毒液は洗い流したけれど、私のそばには誰も近寄って来ない。なぜだ!


 蛇鍋が出来た。見た目は鶏鍋そっくりに見える。出汁は私、特製の粉にした出汁だ。キャップで食べる分には合格の味だと思う。


 兵士さんと衛生兵さんが恐る恐る蛇鍋に手を出して、一口食べて「これは上手い」と言ってくれた。結局、ユリアさんも食べて、カザルさんもきっちり食べた。美味しかったみたいだ。


 見張られている。これはたぶん、イワンさんたちと対立している部族の人に見つかった。夜襲があるかもなので、私たちのテントの周辺に幾つかトラップを張っておいた。


 見張りは兵士さん、次は私、その次は衛生兵さんがすることになった。二人が付いて来てくれて私は感謝している。でないと、ずっと私が見張りをしなければいけなくなるから。



 夜襲はなかったけれど、正面から千人程度の騎馬集団が現れた。


「ユリアさん、ここは平和的に交渉で何とかなりませんでしょうか?」


「私をあちらに差し出せば無事に通れると思います。抵抗すれば殺されます」


「了解です。ユリアさんを差し出さないで済むように私が脅していや、交渉してきます。交渉決裂なら実力行使で通してもらいます」


「マリア様、私も同行します」


「えっ、カザルさん、体が絶対鈍ってますよね」今までほぼ死体だったのだから。


「まるっきり動きませんが、あの連中よりかは動きます。それと決着をつけたい奴があの中に必ずいるので……」


「カザル様が行くなら、私も行きます」


「ユリア様は巫女です、巫女なら私の勝利を神々に祈ってください」


「カザル様のご命令なら仕方ありませんね」ユリアさんが少し微笑んだ。ユリアさんカザルさんを止めろよ。最愛のカザルさん死ぬかもなのに。


「ありがとう。ユリア様」


 ユリアさん、なぜカザルさんを止めないのか理解不能だ。私では、カザルさんを守りながら戦うのはマジで厳しいのに。



 私とカザルさんは千人程度の騎馬集団に近寄って行く。あちらのリーダーが「カザル久しぶりだな。大変な目にあって気の毒だった。お前たちには用はないのでさっさと行け。俺たちが用があるのは巫女様だ。美人で有名なユリアだ」


「隠してもダメだぜ。オアシスでの出来事はすべて知っている。ユリアを手に入れたら、次はオアシスを手に入れる」


「お前たちには用はない、とっととどこへでも行け。悪魔憑きのカザル」


 ウザイわーー。オアシスの街に行かれるのは困る。私がやらかしたせいで街がなくなるのは嫌だ。


「どなたか知りませんけれど、ユリアさんも手に入らないし、オアシスも手に入れられないですから、元来た道を尻尾を巻いて帰った方が身のためですよ。泣く目にあいますよ!」


「お嬢ちゃん、頭は大丈夫なのかな、二人対千人だぞ」


「カザルさん、何か問題がありますか?」


「問題ありません。マリア様」


「それじゃあ、突撃!」


 私たちは千人の騎馬隊に突撃した。


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