066 悪役令嬢マリア、オアシス守護に会う
医務室の扉を開けると十数人の兵士が痙攣していた。廊下にも立つのもやっとな兵士がいた。衛生兵らしき人とユリアさんを連れに来た兵士さんにカザルさんを抱えてもらって、マリオを返してもらいに、兵士たちを命令していた人を探した。
兵士と出会したが、私を見るなり武器を放棄した。
「あのう、軍務長官はどこにいるのでしょうか?」
「おそらく、オアシス守護の屋敷に逃げたと思います。姫様」
「オアシス守護ですか?」
「オアシスを管理、運営するこの街の長のところだと思います」
「ありがとうございます」と兵士にお礼を言うと敬礼された。ここの軍務長官って人は部下にまったく慕われていないのが良くわかった。
◇
カザルさんを介助している兵士さんと衛生兵の人の案内でオアシス守護の屋敷の前に立った。一応風魔法で私たちの周囲には空気の塊で守備を固めて。
「私はマリア・フォン・クレールと申します」と名乗りを上げたが、相手からの名乗りではなくその代わり銃声が響いた。撃たれた弾丸は私たちを取り巻く空気の塊に当たって落ちた。
ふむ、壁に銃眼、銃を撃つための小窓が装飾に紛れて開いている。
それじゃあってことで、風魔法でぶ厚い扉を粉砕した。
「マリア様、壁まで崩れていますけれど、入っても大丈夫でしょうか?」
「今日一日くらいは持つのでは……」なんとなく礎石らしきものも砕けているので、ユリアさんの心配はよくわかる。
屋敷の中から「悪魔が来たぞ!」って叫び声が聞こえる。全周囲警戒、電撃魔法を重ねてと屋敷の裏から出て来た人たちは感電して動けなくなったみたい。屋敷の庭を抜けようとした人も感電している。誰も外に出ようとしなくなった。
建物の封鎖は完了っと。後はここの偉いさんに会って、私たちの荷物とマリオを返してもらって出来れば良い馬を二頭もらえると良いのだけれど。
屋敷の中に入ると廊下にバリケードがはられていた。また上から銃撃もされた。二階に狙撃兵がいる。狙撃兵兵士隠れていて見えない。仕方ないから空気の塊を乱射してみた。柱に当たった。柱に亀裂が入ってかなりヤバい状態になっている。
「マリア様、この建物大丈夫でしょうか?」
「半日くらいは持つと思います。もし崩れても私の側にいる限り大丈夫です」なぜかカザルさんを介助している兵士さんたちが私にくっついてきた。
ミシミシって音がし始めたし、半日は持たないかもしれない。窓から飛び出して建物の周囲に流れている電流に感電している人が多くなっている感じがすると言うか、窓から見える。二階の窓から飛び降りている人がいる。
偉い人って一番上の階にいるわけで、バリケードに空気の塊をぶつけて吹き飛ばしてながら建物の三階に向かって螺旋階段を上がっている。時折、銃撃されるので、空気の塊を乱射してはさらに柱にダメージを与えた。ミシミシという音が絶え間なくしている。
一時間は持ってほしい。でないと一階で伸びている兵士が建物の下敷きになってしまうと思う。救出出来るように建物周囲に電流を流すのをやめた。命は大事だから。
三階に到着っと。偉い人がいそうな部屋はっと三階を見回したら、私にくっついている兵士さんが右から二番目の部屋がオアシス守護の部屋ですって教えてくれた。
ユリアさんも兵士さんたちもかなり焦り始めている。ミシミシ音がドンドンひどくなっている。
二番目の部屋の扉を開けると、二人の男の人が窓から飛びさそうか、どうしよかと悩んでいた。私たちを見ると一人が窓から飛び降りた。ボキボキ、「ギュアー」と声がした後静かになった。
もう一人の人はそれを見て、窓から飛び降りるのを諦めて、震えながら「お前たちは誰だ? 私はここの守護であるぞ」とか細い声で自己紹介をしてくれた。
建物の音がミシミシからギシギシ、ゴンゴンと言う音に変わったので「守護様、この建物は間もなく崩れますので、ともかく逃げましょう!」
守護さんは恐怖心で動けないようなので、守護さんの周りの空気を回転させて持ち上げた。守護さんは何か叫んでいたようだが緊急時なので、無視をしてそのまま私たちは建物の外に逃げた。
一階で伸びていた兵士たちは別の兵士に救出されていた。私たちが建物を出てから約五分後、ズーン、ゴーという音とともに守護さんの屋敷が崩れ落ちた。
私は気を失っている守護さんを兵士に預けた。しばらくすると「ここはどこか? 俺はまだ生きているのか? 悪魔はもういないのか?」と守護さんがさっきと違って大きな声で叫んでいた。
「あのう、守護様」と私が声をかけると「ヒヒャー」と叫ぶとまた守護さんは気を失った。
「兵士の皆さま、守護様と窓から飛び降りた男の方を病院に運んでもらえませんか?」
「悪魔殿、これ以上この街を破壊しないと約束してもらえるだろうか? 私はこの街の治安を守る部隊長だ」
「私の馬と私たちの荷物と良い馬を二頭……」
「姫様、お願いがございます。私たちも連れて行ってください。私たちは間違いなくここにいると協力者として処刑されてしまいます」
「隊長殿、この人たちを人質にして連れて行くので馬は四頭でお願いします。それを守ってもらえるなら、これ以上街を壊しません。約束します」




