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悪役令嬢の私との婚約を、王子が破棄しないと私は断頭台に直行なのよ  作者: 田中 まもる
第十一章 悪役令嬢マリア、結婚式に出席する
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060 悪役令嬢マリア、ガンダルフの結婚式に出席するその五

 グラントは最果ての島での英雄譚を恋愛物語にアレンジをして、最初は気が合わず口喧嘩ばかりしていた二人がいつしか恋に落ちる物語に変えて、歌い、アメリーはそれに合わせて剣舞を披露していた。


 ネルーさんが大感動している横でガンダルフの仏頂面が面白くて笑うのを我慢するのが辛かった。その後は新婦側友人の余興が続いた。人間的には生命の危機を感じるような余興もあった。雷よるプロジェクトマッピングとか、人間に当たったら即死だと思った。


 ネルーさんの侍女さんが、帰る際に必要なアイテムを私に渡してくれた。引き出物は飛龍だそうだ。私たち三人にそれぞれ一頭の飛龍が引き出物だそうだ。三頭の飛龍は式場の外に繋いであるので、いつでも帰って良いと言われた。


 アメリーを見るとまたお酒の臭いで酔いそうなので、早々に退席しよとしたら、ガンダルフが切ない顔で私たちを見つめているのに気が付いたけど見なかったことにした。


 私は非情なのだ。ガンダルフを残して私たちは披露宴会場を後にした。


 外に出て私が用意された飛龍に乗ると、「マリア、王都に直接戻らず、オット様がいる辺境地で飛龍を降りて馬で王都に戻る方が良いと思う」


 確かに王族すら乗れない飛龍を私たちが乗って王都に戻ったら、身分不相応だと私も思う。


「グラント、その案を採用します」


 私たちは王都には戻らずオット辺境伯領を目指して飛龍を飛ばした。飛龍も馬も同じ扱いで大丈夫だったので、少しホッとしたが、飛龍の餌代を考えると大変かもって、つい貧乏症が出てしまう。


 飛龍の餌って牛に豚に羊だから。下手をすると人間まで食べてしまうかもしれないし、かなり危ない生き物だったりする。たぶんこの三頭は大丈夫なのだろう。



 オット辺境伯領に到着した。途中遊牧の民の皆さんが見えたので手を振ったら、かなり驚かれた。前回は空飛ぶ馬で今回は飛龍だもの、アップグレードしてるし……。


 オットさんの砦で、飛龍が降りられるところを探す。砦で周辺では新しい街づくりのために、大勢の人が作業をしていた。その上を飛龍が三頭も飛んだので、皆さん逃げまどうことになってしまった。申し訳ない。


 砦の内側に静かに飛龍を舞い降りさせた。オットさんが、何とも言えない顔で私たちのところにやって来て、「アメリーこれはどう言うことか?」


「私たち、ドラゴンの姫君の結婚式に招待されて、その引き出物が飛龍だったので……」


「オット男爵、このまま飛龍で王都に戻ると、王族すら乗れない飛龍で戻るのは躊躇ためらわれまして、一旦こちらで馬に乗り換えて王都に戻ろうとした次第でございます」とグラントが説明した。


「ドラゴンから、飛龍を譲り受けたことは当然、国王陛下に報告するのだな」


「はい、もちろんです」


「ならば、飛龍を国王陛下に献上しなさい。臣下が乗って良いものではない」


「オット男爵、そう致します」


「マリア様はどうされます。マリア様のお立場であれば献上の必要はないかと思いますが」


「私も国王陛下に献上します。餌代が大変ですから」


 オット男爵が下を向いてそっと笑っていた。


 ああ、前々回は空飛ぶ馬だし、前回はドラゴン、で、今回は飛龍というのは、王城の方ではダウンクレードになるのかなぁとつまらないことを私は考えていた。



 飛龍たちをオット男爵に預けて、私たちは三人は馬に乗って王都に戻った。王都に戻るとすぐに私たちは修道院に連れて行かれて検査及び尋問を受けることになった。


 修道院長から私に悪魔が憑いていないと証明されるまで、修道院からは出られないと言われる。とは言え王家とクレール家から幾ら寄附されるかで、早く出られるし、遅くもなるという口ぶりだったけれど。


 私に悪魔が憑いているかどうかなんてまったく、修道院の人にはわからないから。私もアメリーもグラントも魔法使いなので、池に沈められても火で焼かれても何ともない。一般の人だと池に沈められて上げられて生きていれば悪魔憑き、火で焼かれて生きていれば悪魔憑きという判定になるらしい。


 私たち、魔法使いはそれだと悪魔憑きになってしまう。少々不愉快だ。一般の人は検査の段階で絶対に死ぬし、この検査方法は止めないといけないと思う。


 私たち三人は、修道院で他の修道女、修道士から完全に隔離された。その上で毎日聖水をかけられ、神に祈りを捧げる日々を送ることになる。


 朝、起きて、神に祈りを捧げて、部屋を掃除して、朝食を食べる。朝食はパンとスープだけ。食事が終われば、神に祈りを捧げて、聖水をかけれられる。

 

 修道院の庭の草抜き、で、また神に祈りを捧げて、パンとスープと野菜サラダと玉子がたまに付く夕食を食べて、また神に祈りを捧げて、寝るだけの生活を一月送ることになった。これって以前放り込まれた営倉よりキツい。


 私は心の中で修道女物語を書こうと誓った。こんなに変化のない修道院生活を物語にするのは、本当にキツいと思ったのでチャレンジしてみたいのだ。


 私もグラントもアメリーもかなり痩せた。私は二の腕がプルプルすことが、たまーにあったけれど、当分そんなことは起こらないと思う。



「国王陛下、ただ今戻りました。悪魔憑きの疑いも晴れました」


「マリア、かなり痩せたようだな」


「修道院での修行はなかなか厳しいものでしたから」


「マリア、修行疲れもあると思うのだが、ユリアたちを遊牧民のところに送って行ってほしいのだ」


「はい、承知しました。ところで国王陛下、ドラゴンの姫君から飛龍を三頭を頂きましたので、それを国王陛下に献上致したいと思います」


 国王陛下とその隣に立っているハインリヒ王子の顔が輝いた。オットさんグッドジョブです。グラントもさすがだわ。私にはそのあたりの発想がなかったよ。

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