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悪役令嬢の私との婚約を、王子が破棄しないと私は断頭台に直行なのよ  作者: 田中 まもる
第十一章 悪役令嬢マリア、結婚式に出席する
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057 悪役令嬢マリア、ガンダルフの結婚式に出席するその二

「ネルー、少し力が入り過ぎている。苦しいから」


「私の待つ苦しさはこんなものではなかったのよ!」


 素晴らしい愛情表現だけど、ガンダルフの顔色がかなり悪い。


「ネルーさん、ガンダルフの体調が悪いみたいです」


 ネルーさんがガンダルフの顔を見つめると、即座にガンダルフを小脇に抱えて猛ダッシュで洞窟を出て行った。ガンダルフ、頑張ってと私は小さな声で応援をした。


 私はマリオに騎乗してゆっくりと洞窟を出た。



 ドラゴンの病院でドラゴンの医師にガンダルフは診察してもらい、栄養失調という診断を受けていた。


 数千年、岩の中にいたのだから、当然と言えば当然なんだけど、魂は鉄剣の中に閉じ込められて、体は岩の中で化石ってなぜそうなったのかが、まったくわからない。


 ネルーさんは熱心にガンダルフの看病をしている。体力の回復が今の課題になっていた。食事を食べる、リハビリをして体を動かす。そして寝るのがガンダルフの日課になっていた。


 私とネルーさんは結婚式当日の衣装合わせを行っている。ネルーさんは超豪華で金の糸がふんだんに使われているので、光が当たると黄金色に輝くウェディングドレスになっている。後ろの裾はドラゴンの少女が三人がかりで持ち上げる超ロングトレーン、凄く長い裾になっている。百メートルほどあるのでは?


 黄金とプラチナのティアラを付けて、本当に豪華というしかない衣装だった。


 私の方はブルーを基調とした落ち着いたドレスが用意された。アメリーはたぶん、嫌がると思うけれど、派手めの真っ赤なドレスが用意されていた。グラントはあっさりとした白の軍服が用意されて、婚礼用に勲章が幾つか授与されていた。


 ガンダルフの当日の衣装については極秘扱いで一切教えてもらえなかった。ガンダルフも魔術師であるとともに、過去には某国の海軍の将校だったらしいので、そういう感じの衣装が用意されているのではと、私は思っている。


 ルーメンさんだけれども、無限牢獄で二十四時間監視されている。監視カメラ? で見たところまったく動きようがないように見えた。しかしドラゴンの精鋭部隊が万一の脱獄に備えて常時待機している。



 病院に入院後、めっきりガンダルフは話さなくなった。ネルーさんの介護以外は受け付けないし、まあネルーさんはそれが嬉しいようで機嫌がとっても良い。


 リハビリも順調だ。まだ体が完全に固まっていたせいで、体の動きがまだギコチナイところもあるけれど、それも徐々に良くなっている。来月末には退院することになった。


 退院すれば、その翌日には結婚式が行われることになっている。


 ということで、ネルーさんが選抜した大丈夫なドラゴンさん、3頭と王都に向かっている。あっ、何が大丈夫かというと、うっかり人を食べてしまわないという意味での大丈夫。その他のことは不明だったりする。


 ドラゴンの国には一人の人間には一頭のドラゴンと一緒に入るという掟というかルールがある。それで三頭のドラゴンで、ガンダルフの結婚式に招待されているアメリーとグラントを迎えに王都に私は向かっている。


 また、大騒ぎになるだろうけれど、仕方がないと私は諦めている。悟ったのだと思う。


 王都上空、王城内は前回以上にパニックになっている。貴族の人は必死に祈っている。前回は悪魔のボスが来て、今回はドラゴンが三頭だから、祈りたくもなるよね。


 私は元々悪役令嬢だし、もう結婚とかないみたいだし、たぶん遊牧の民の人とも結婚しないと思う。だって私は悪魔憑きだもの……。ヤサグレている私。


 王城の中庭にドラゴン三頭と私とマリオが降り立った。クレール家の騎士の皆さんがどうしたものかと剣の柄に手を掛けたままたたずんでいる。


 ハインリヒ王子が出て来た。「お前、今度はドラゴンを連れて来て私たちをどうするつもりだ!」


「ガンダルフの結婚式がもう間もなくなので、アメリーとグラントを式場まで迎えに来ました。用事はそれだけですので、ハインリヒ王子安心してくださいませ」


 ハインリヒ王子がじっと私を見つめている。「威厳ゼロ。お前、マリアか?」


「はい、体を返してもらいましたので、マリアです。まだ少し違和感があるので、本当に百パーセント返してもらったかどうかは、自信はありませんけど……」


 威厳ゼロで判断するなよ。


 ハインリヒ王子が腕組みをして考え込んでいる。ハルトムートが王子に耳打ちした。


「グラントとアメリーをここに……」


 しばらくすると二人が中庭にやって来た。二人は私をじっと見つめた。


「マリアだ、まったく恐ろしくない。ふわふわしているいつものマリアだ」


 そのう、ふわふわしているという修飾語は必要なんでしょうか!


「アメリー、グラント、ガンダルフの結婚式が間もなくなの。ネルーさんに言われて迎えに来たの。悪いのだけど、一人乗りドラゴンだから、各自好きなドラゴンを選んで乗ってね」


「マリア、私たちもドラゴンの結婚式とやらに出席したいのだが……」


 まあ、そうなるよね。ハインリヒ王子たちも見たいよね。ドラゴンの姫君の結婚式を。


「ハインリヒ王子、それは全然まったく構わないのですが、お祝いの品が黄金ですから、どれだけ必要になるのかがまったくわかりません。


「ふむ、グラントの従者として行くのは……」


 グラントが青い顔になった。ハインリヒ王子も諦めないね。


「ドラゴンに乗れるのは一頭に付き一人なので、三人です」


「グラント、私と代われ!」


 うわー、権力の濫用だ。

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