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悪役令嬢の私との婚約を、王子が破棄しないと私は断頭台に直行なのよ  作者: 田中 まもる
第十章 悪役令嬢マリア、王子とデートしたけど大混乱
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054 悪役令嬢マリア、ローマ国王に会う

「あなたのことは、ミキさんと呼んだ方が良いのでしょうか? それともマリアさんでしょうか?」


 日本語で話しをしている。とても懐かしい気持ちになった。だって二十二年間生きてきた国だから、こちらに来てから一年ほど経ったけれども。


「ミキは自動車事故で亡くなりましたから、マリアでお願いします」


「ミキさんはまだ亡くなっていませんけど……」


「はあーー」


「いえ、私のスキルなんですけどね。あちらの世界とまだ魂が繋がっているみたいなので、いわゆる意識不明状態が続いているような……」


「本当ですか!」


「まあね、ミキさんがマリアさんの体から出てミキさんの身体に戻ったとしたら、マリアさんは間違いなく亡くなりますけど」


「そんな、元々のマリアの魂はどこへ行ったのですか?」


「あなたが、入って来たので融合してしまったわけで」


「マリア、このオッサンかなり胡散臭いぞ」


「インテリジェンスソード君、君はナマクラ剣の割には鋭いね、私の言っていることに何の根拠はないものね」


「嘘なんですか?」


「確かめようがないのですよ。あなたが死ねば長い夢から醒めてミキとして生きるかもしれないし、そうはならないかもしれない。ともかくあなたが、一度死んでみないと確かめようがないわけです」


「私は死にませんよ! 今まで頑張ってこちらで生きてきたのですから。死ぬつもりはありません!」


「ところで、あなたはどなたなのですか?」


「私はアウグスト。この建物で国王をやっています」


 アウグストと言われると国王より皇帝を思い浮かべてしまう。


「地球ではローマは帝国になるのですね。羨ましい」


「国王陛下、また私の脳内をスキャンしたのですか?」


「ずっとしているので、会話をする必要性はあなたにはありません」


「そうは言っても、形式美として会話は必要だと思います」


「形式美ですか?」


「ええ、ずっと私だけがしゃべっているのはなんか変でしょう」


「私のスキルって役に立つようで役に立たないです。何もかもわかれば、ローマから追い出されなくて済んだのですから。今は国を持たない気の毒な国王ですよ」


「ローマには帰れないし、この建物から出ればスライムになってしまうし、私たちが通ったところはすべて砂になってしまう。本当にもうウンザリなんですよ。神の呪いを感じますね。私は死ねないのです。宇宙が終わるその日までね」


「ローマみたいにあちこちの世界に道を作って、私たちがスライムにならない世界を探せば良いのでしょうけど。下手に開けたら、何度か実験員があっちの生物に食べられてしまった。千人ほどでこの世界に来たのですけど、この建物の外でも姿を保てる世界を探している内に半分の五百人なってしまいました」


「ローマ王国の方がが私たちの騎士になったりしたのはなぜですか?」


「暇潰しです。ゲームに飽きたからでしょうか? ゲーム開発にさける人員も減りましたので、新作がなかなか出せないので。他の生物に憑依のスキルを持った臣下が外に刺激を求めて出て行ったのですよ」


「こちらの人間を鍛えて、ローマと一戦するとかおっしゃっていましたけど……」


「そうですね。後二千年後には攻め込めるとは思います。でも、今ではレールガンとか陽電子砲とかを実用化したのでしょう? 勝ち目はゼロですね」


「彼らも薄々わかっていてやっているのでしょうね。生きがいがないと生きている意味がありませんから」


「生きがいですか……」



「では、私が彼らを引き取りに行くので、マリアさん体を貸してください」


「はい!」私は驚いて一オクターブ上の音を出してしまった。


「私がこのままこの建物の世界から出るとですね、臣下が起こした被害どころではない被害を起こしてしまいます。あなたに憑依して、引き取りに行きます」


 悪魔のささやき、承諾すると体を奪われる。


「心配ありません。私がその気なら、あなたたちがこの建物に入った時点でマリアさんに憑依しますから。別にインテリジェンスソードさんに憑依しても良いのですが、ドラゴンの姫君がここに攻めて来るので面倒くさい」


「ガンダルフ、本当なの?」


「俺をこの剣から追い出せば間違いなくネルーがここに来る。俺の仇討ちに」


「それってガンダルフが死ぬってことよね。つまり、私が承諾すれば私は死ぬわけ。で、ミキに戻れる?」


「罠?」


「ガンダルフさんの場合は二つの魂が同時に共存するのは無理なので、追い出すことになりますけど、マリアさんの場合は共存出来る余地があるので、マリアさんは死にません」


「これも信じるか? 信じないかはマリアさん次第です。無理強いはしません」


「ガンダルフ、どうしたら良いのかしら?」


「わからん!」


 初対面の人を信じて体を貸すって無理なんだけど。


「私の臣下には二度とこの世界に干渉はさせません。約束します」


「うーーん。承知しました。仕方ない。憑依してくださいませ」


「マリアさん、身体すべてが私の支配下に入りましたので、違和感があると思いますけど。我慢してくださいね」


 私の頭の中でアウグストの声が聞こえる。本当に体は私の自由にはならない。これは怖い。起きているのに金縛り状態だよ。


「マリア、国王には悪意はないので安心しても良いぜ」


 大丈夫だろうか?




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