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悪役令嬢の私との婚約を、王子が破棄しないと私は断頭台に直行なのよ  作者: 田中 まもる
第十章 悪役令嬢マリア、王子とデートしたけど大混乱
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051 悪役令嬢マリア、悪魔たちを護送する

 グラントが戻って来た。


「兵団長たちを護送せよとの王命が下りました。遊牧民の協力者の身の安全は保証する、ただし、兵団長らが本当に悪魔になっていた場合、その対応について、引き継ぐことが条件です」


「マリア、聞いた通りだ。遊牧民のところに行ってそのように伝えよ」ハインリヒ王子の表情が暗い。たぶん、兵団長たちをここで燃やしたかったのだろう。


「承知しました。ハインリヒ王子」


 私はマリオに乗って遊牧の民の皆さんの陣地に入った。



「マリア様、ユリアお嬢様も同行されるそうなので、合計七人の保証をお願いいたします」


「ユリアさん、あなたは族長の娘だから、王国にとっては願ってもない人質になってしまうから、一緒に来るのはやめた方が良いです。他の方々なら何の問題もありませんけど、あなたは違います!」


「わかっている。でも、あなたに借りは作りたくないのよ」


「バレなければ良いのでしょう!」


「ユリアさん、あなたってとっても美人だし、あなただけ残れってなるかもしれないし……」


「ねえ、古今東西、美人を巡っての争いは多いわけで」


「でも、あなたは私を逃してくれるよね?」


「まあ、出来るだけのことはするけど……」


「じゃあ、安心じゃない」とユリアさんは微笑んだ。


 何とかするとしても、私も一緒に逃げ出すしかないと思う。たぶん王命が出る。私は逆らえない。王命に逆らえば、問答無用で反逆罪だから。私は逃げるしかない。で、遊牧の民の真の勇者とやらの妻になる。選択の余地がない結婚式が待っている。今と状況は変わらない。




 木製の檻と言うより車輪付きの木製のカゴに兵団長らを乗せた。乗せる際にはユリアが歌ってくれる。ユリアが歌うとなぜか兵団長さんたちがボーッとなる。


 ユリアさんって遊牧の民の巫女さんだった。族長の娘で巫女って属性が良すぎるよ。王国が放さない。私の嫁入りの代わりに、ユリアさんがハインリヒ王子の妃にって話になりそうだ。


 木製のカゴに入れられてからずっと兵団長らは何かを祈っている。王国が近づくにつれて、監視者の目が多くなっているような気がする。


 平原を抜けると、常に雨対策をしながら、雨が降りそうなら早めにテントを張って、その周りにかがり火を焚く。兵団長らを奪還しようと襲ってきた時点で兵団長らを燃やす。


 カゴの中の誰かが暴れ出したら、ユリアさんが歌う。すると暴れていた騎士は眠る。


 グラントが一度ファイルボルトを暴れた騎士に放ったら、当たる直前で炎は消えて、魔力だけがその騎士に吸い込まれた。


 彼らのエネルギー源は魔力。平原にはほとんど大気中に魔力がないので、王国内に入って来てから、兵団長たちはなんとなく元気になってきているようで、極めてマズい状況になっている。



 王都に到着した。王城の中庭に広場に鉄製の本当の檻を用意した。ユリアさんに歌ってもらって、木製の車輪付きカゴから兵団長らを移した。鉄製の檻には仕掛けがあって何かあれば油が檻の中に降り注ぐ。いざとなれば檻の覆っているテントを落として火をつける。


 今、わかっている知識でやれることはやってみた。最終的には私がガンダルフで彼らをゲヘナの炎で焼き殺すことになった。


 国王陛下が、檻に入れられ、無数の矢が刺さっている兵団長に尋問をする。



「お前は誰だ」


「俺は兵団長と呼ばれていた。名前は忘れた」


「お前の目的は何だ?」


「ローマ王国の復興だ。野蛮な平民を駆逐してローマを元の王政に戻すこと」


「お前たちを我々の下僕にすることだ」


「薬物でお前たちの理性を奪い、我々が憑依して兵団を作り、ローマにいる平民を討つ。残念なことにあまりにもお前たちの文明が低すぎて、攻め込むまではいかなかった……」


「なぜ、お前たちは平原に逃げたのか?」


「我々がローマで賊徒に追われて逃げた先が平原だった。それだけのことだ」



「我々を燃やしても、我々は時間が経てば復活する。無駄なことだ。お前たちは我々の下僕として働くなら、命だけは保証してやろう。我々がローマの賊徒を滅ぼせば、お前たちを名誉ローマ市民にしてやろう」


「お前たちに力をやろう」


「王都には我々の仲間が集まって来ている。降伏するなら今のうちだ。国王」



「ハインリヒ王子、兵団長たちをおとりにして、奴らの仲間とやらを一網打尽にして、マリア様に燃やしてもらいましょう」


「ハルトムート、上手く行くだろうでしょうか?」


「失敗すれば、王都はゾンビとかいうモンスターの国になるだけですよね。マリア様」


「ハルトムート、私を買い被り過ぎだわ。私、知恵もなければ技もないわよ」


「このままでは、マリア様がいなくなった来年の春には王国は滅びます。ここで決めます」


「ハルトムート、国王陛下に進言してくる。決定はその後だ」そう言うとハインリヒ王子は疲れた表情で参謀本部をハルトムートと出て行った。


「グラント、アメリー上手く行くと思う?」


「マリアの気力と体力次第かな」


「私も火矢でマリアを援護するわね」


「ありがとう。アメリー」


 アメリーとグラントはなぜか幸せそうだ。私はとっても気分が重い。


 ふうー、やれるかな。私はクレール家に戻ってガンダルフを手に取った。

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