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悪役令嬢の私との婚約を、王子が破棄しないと私は断頭台に直行なのよ  作者: 田中 まもる
第十章 悪役令嬢マリア、王子とデートしたけど大混乱
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050 悪役令嬢マリア、悪魔と対面する

「ハインリヒ王子、兵団長はすでに死んでいるそうですが、しかしその体には悪魔が憑依しているそうです」


「まさか、そんなことがあるものか!」


「彼らは、祖先の伝承に従って悪魔を捕獲したので、兵団長他三名の遺体は残っている。連れ帰れて帰りたいならそうすれば良いとのこと」


「もし、連れ帰れない場合は、ここで燃やすそうです」


「……」



 兵団長他三名は手足をゴムらしきもので縛られていた。兵団長の体には無数の矢が刺さっている。他三名の体にもやはり多数の矢が刺さっている。


 矢には毒薬が塗っているらしい。しかし毒矢が刺さっているのになぜ普通に動けるのか?


「マリア様」


「あまり、近くに寄ると悪魔のささやきが聞こえます。その話に承諾すると、悪魔が憑依するので注意してください」


 ハインリヒ王子が兵団長の前に立つと、「ハインリヒ王子、我々を助けに来てくれたのですね。助けて頂ければ、終生の誓いを捧げます」と普通に話した。


「兵団長、お前は生きているようには見えないのだが……」


「兵団長、なぜ私だとわかったのか?」


「私の目の前に立っておられるではありませんか? 私にははっきり見えます」


「そうか、お前には私の姿が見えるのか?」


「ええ、はっきりと見えます」


 兵団長の両の目には矢が突き刺さっていて、その両の目からは血ではない、何かの樹液のようなものが今も流れている。




「ハインリヒ王子、兵団長他三名どうします?」


「マリアはあれが兵団長に見えるのか?」


「どう見てもゾンビです」


「ゾンビって何だ?」


「死者です。死者がですね動いて人を襲うモンスターです」


「ハルトムート、あれらを王都に連れて帰るのをどう思う?」


「危険過ぎます。とくに憑依すると言われては。いつの間にか見張りの兵士に憑依して、次に大貴族に憑依されるとまた大規模な騒乱が起こるかもしれません。今は王家には近衛兵団がいません」


「ここで燃やすのが最良だと愚考します」


「私もハルトムートと同意見なのですが、王都及び王国内に爆弾を仕掛けた可能性が高いので尋問はしたいのですが」


「この場で尋問をすれば良いのではないか? グラント」


「ハインリヒ王子、王都でなければ話さないと言われるのがオチですよ」


「ハインリヒ王子、それよりも彼らがここに来た理由は何だと思います?」とグラントがハインリヒ王子に尋ねた。


「遊牧民にとっては危険地帯とされているので、誰も来ないと思ったからではないか?」


「遊牧民がここを危険地帯だと思っているのは、兵団長の、彼らの仲間がいるからではと、私は思います」


「ハルトムート、すまない。めまいがする。俺のテントまで肩を貸してくれ」



「グラント、本当にあれらの仲間がこの辺りにいるの?」


「ああ、あれらの仲間に僕たちはたぶん監視されている。僕たちがあれらを移送しようとすれば兵団長たちを奪還に来ると思っている」


「遊牧民もそれを知っているから、常に油、火、火薬を携行しているし、昼でも火を必ず燃やしている」


「グラント、剣の距離だと、憑依されるかしら」


「遊牧民は弓でしか攻撃していない。おそらく槍の長さでも誘惑とやらを掛けられるのを恐れているのではと思う」


 ガンダルフのゲヘナの炎を広範囲に撒き散らせないだろうか? 問題はどの程度までは近寄れるかだが……。


 十メートル離れていれば、ハインリヒ王子も無事? だったから、ガンダルフを横薙ぎにして十メートルの稽古をしておこう。ここんところ、ごちゃごちゃうるさいので、クレールの屋敷に放置しっぱなしだし。



「マリア様」


「ユリアさんの従者の方ですよね。よくここまで来れましたね」


「ここは私たちの庭ですから。近づこうと思えばそんなに難しくはありません」今日の見張りは気の毒なことになると思う。


「マリア様は、悪魔を連れて帰るおつもりですか?」


「ええ、そうしたいのですが、その手立てがわかりません」


「私たちは、マリア様にご恩がございます。協力してもよろしいのですが……、何分、王国と我々は長年に渡って戦ってきたので、我々の安全が保証されないと……」


 王国建国以来の敵が王都に来る訳なので、その気持ちはよくわかる。でも、一介の公爵家の娘には保証なんて出来ない。


 今日の見張りの兵士さんには悪いと思いつつ、その従者さんと一緒にハインリヒ王子のテントに向かった。


「ハインリヒ王子、少しご相談があって参りました」テントの前で警備をしている騎士の顔色が悪い。


「兵団長たちを連れ帰れるかもしれないので、そのご相談ですけど」


「はあ……、まあともかく入れ!」中に入るとハインリヒ王子の表情が険しくなった。


「なぜ、敵がいるのか?」


「敵ではなく協力者の方です」


「この方が兵団長たちを王都に連れて帰る協力をしてくれるそうです。ただ、身の安全が保証されないとさすがに協力は難しいと言われまして、私ではこの方の身の安全を保証出来ないので、ご相談でございます」


「マリア様、私だけでは四人もの悪魔の面倒は見れませんので、あと五人、合計で六人の身の安全の保証が必要でございます」


「王子、だそうです」


「……、ハルトムート」


「一度国王陛下にお伺いを立ててからの方が良いかと。兵団長たちは人ではありませんし、遊牧民たちが帰った後のこともございますから」


「グラントに行ってもらうか、ただ信じてもらえるかどうか……」ハインリヒ王子は深いため息をついた。


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