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悪役令嬢の私との婚約を、王子が破棄しないと私は断頭台に直行なのよ  作者: 田中 まもる
第一章 悪役令嬢マリア、文芸部を創部する
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005 悪役令嬢マリア、マラード家の晩餐会に出席する

 父上からマラード家は王弟派だから、注意するようにと何度も言われたて晩餐会に出席する。お目付役のジョーダンさんも一緒なので大丈夫だとは思う。


 そう言えばゲームのサイドストーリーでは、国王の座争いに敗れた王弟派は、今なお国王の座を諦めてはおらず、ハインリヒ王子を亡き者にして王権を簒奪さんだつしようと計画していた。


 ハインリヒ王子派、王弟派それぞれが、それぞれを切り崩そうとし、またクレール家のような中立派の貴族を自分たちの派閥に鞍替えさせようとしている。


 たしか私が、王弟派の有力貴族であるマラード家の晩餐会に呼ばれた理由は、ハインリヒ王子が、私を王弟派の一味にするためと、王弟派有力貴族であるマラード家を、ハインリヒ王子派に取り込むためだったはず。マラード家の令嬢シャルロッテを将来王妃にするとそそのかして私をマラード家の晩餐会に呼ばせたのだ。


 ゲームでは、王弟派を粛正しゅくせい後、シャルロッテも私同様に断頭台に上ることになる。


 ハインリヒ王子って腹黒いのだ。アメリーとの恋に一途とも言えるけど。


 ちなみにこのイベントはスキップできない。オートで出席になっていた。


 リアルでも、父上が言うには断れない。クレール家と同格の公爵家の晩餐会で、立場上、クレール家は中立の立場で、しかも指名までされているからだそうだ。それにハインリヒ王子派が、マラード家のシャルロッテをハインリヒ王子の婚約者にしようとする動きもあるので、マラード家がハインリヒ王子の派閥になる可能性も高い。そうした情報を収集する役目を私は担わされた。


 シャルロッテもハインリヒ王子の婚約者になると、分家のオリティアが王妃ではなく妃に落ちる可能性が出てくる。シャルロッテはマラード家の本家の令嬢なので、クレール家の分家の娘はワンランクダウンの妃になってしまう。私にはどうでも良いことなのだけど、クレール家の分家としては納得できないらしい。


 私としては早くハインリヒ王子が、私との婚約を破棄してほしいだけ。ゲームでは、私が晩餐会に出席するシーンで、ハインリヒ王子とアメリーはラブレターの交換を始めたはずなのだ。刻一刻と私が断頭台に上る時間が近づいて来ている。





 執事長兼私のお目付役のジョーダンさんとマラード家の晩餐会の会場、マラード家の大広間の中に入ると、お付きの方は別室へと言われてお目付役のジョーダンさんは別室に通されてしまった。


 これは困った。私は晩餐会に幾つか出席したけれどもハインリヒ王子の派閥の貴族主催の晩餐会だったようで、この晩餐会には誰一人として知り合いがいない。て言うか未成年で出席しているのは私だけではないか!


 クレール家令嬢、マリア・フォン・クレール様って紹介された途端、敵意に満ちた視線に晒されている。居心地が凄く悪い。


「あれがクレール家の問題児なのよ」


「男性と二人きりで何やら学校でしているそうよ」


 貴族らしく私に聞こえるようにはっきりと言ってくれる。私はそれに笑顔で応えなければいけない。これって何の修行なんだろう。


「よくお越しくださいました。来てくださらないかと思っておりましたのよ」


「シャルロッテ様、直々に来てほしいと言われれば断る理由がございませんわ」


 そうなのだ、一学年上のシャルロッテ・フォン・マラードが直々に私を今日の晩餐会への出席をするようにと言ってきたのだ。


 シャルロッテは文武両道に長けた才媛。クラスは当然文句なしのAクラス。私のように底上げでBクラスに入った者とはまったく違う。私は、ハインリヒ王子にはシャルロッテが似合うと思うのだけど……。ハインリヒにはアメリーがいるから、シャルロッテが私の代わりに断頭台に上がることになってしまうことになる。


 誰も犠牲者にならずにこの物語を終わらせるのはどうすれば良いのだろうか!


「婚約者のハインリヒ王子と、最近とくに親密のご様子ですね」


 ああ、私ではなくアメリーね。


「ハインリヒ王子と私とが親密ですか、まったく上手くいっていませんわ。実は私は、私よりもシャルロッテ様の方がハインリヒ王子の婚約者に相応しいと思っておりますの」周囲が一瞬で凍りついた。


「そう言う風に動いていらっしゃる方がいるのは困りますわね。ハインリヒ王子とマリア様との婚約は、先代国王陛下が願われた婚約なのに。先代国王陛下の遺言を無視するなんて、不敬だと思いません?」


「いえ、ハインリヒ王子から私では王妃は務まらないとはっきり言われましたし、私としてはシャルロッテ様にお願いしたいかと」


 晩餐会をぶち壊しにしているけど、まあ良いか。


「マリア様、よろしければ、私のお部屋でお話しませんこと」





 シャルロッテの部屋に入った途端、私の目はその書棚に釘付けになってしまった。様々なジャンルの書物がきちんと分類されて並べられている。お友だちになりたい。でも、シャルロッテとお友だちになったら、やはり私は断頭台に行くはめになってしまう。


「マリア様は学校に文芸部をお作りになったと聞きました」


「文芸部では物語を書いておられるそうですね」


「はい、書いてはいるのですが、グラントやハインリヒ王子からは定番の物語で読まなくても先の展開が読めると散々な感想をもらって、ハインリヒ王子からお前は、文才がないのだからやめてしまえとまで言われることも度々です」


「実は私も物語を書いているのですよ。今日お呼びしたのはそれを読んでほしくて……」


「喜んで読ませていただきます」


 読むんじゃなかった。物語の展開が、読者の興味を引くように書かれてある。登場人物の心の動きがすっと理解できる。主人公の動きが目に浮かぶように書いてある。私が地べたならシャルロッテは月だ。面白くて久しぶりに続きが早く読みたい病が再発してしまった。


「面白い」私は一言だけ感想を言った。どこがと尋ねられたなら軽く二時間は話してしまいそうだ。同人誌を発行するなら巻頭はシャルロッテの作品だ。イラスト入りでだ。絵師を探さないといけない。心のメモ帳にメモをした。


「主人公が生き生きとして、それが目に浮かびます。素晴らしいです」


 シャルロッテは少し照れた表情をした。

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