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悪役令嬢の私との婚約を、王子が破棄しないと私は断頭台に直行なのよ  作者: 田中 まもる
第十章 悪役令嬢マリア、王子とデートしたけど大混乱
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044 悪役令嬢マリア、訓練されたハインリヒ王子とデートをする

「はあ、気分が重い。母上、体調不調ということで、今日のハインリヒ王子との昼食会をキャンセル……」


「不可能です。王妃様、直々の申し入れ、正確に言うと君命です。死んでも出席しないといけません」


「ハインリヒ王子もかなり努力されたのですよ」


「マリアもしっかり、その努力の結果を見定めてくださいね」


「ハア……」


「マリア、返事は!」


「はい、お母様」


 気分が重い。今日という日がなくなれば良いのに。ハインリヒ王子がちゃんと女性をエスコート出来るかどうかのチェックを私がするって意味がわからない。


 ハインリヒ王子は、王妃様そっくりのシャルロッテを王妃にすべきで、私は解放されるべきだと思うの。


 エスコートが出来るかどうかも、すでに妃であるシャルロッテがするべきだと、私は母上に言ったら、二時間、前回と同様に前国王陛下と前のクレール家当主の盟約を聞くはめになった。私って学習しない女だったよ。



 ハインリヒ王子が完璧な作り笑いで私を出迎えてくれた。王妃様、シャルロッテ、母上がじっと見ている。これって私も採点されているのだろうか?


 食事中の話題も私の好きな本のことが主で話していてとても楽しかった。でも、ハインリヒ王子がこんなに上手く、作品の感想を言えるはずもなく、チラッとシャルロッテを見たら、視線を外された。ハインリヒ王子は台本を読まされているわけか。


 私はその台本を知らないのに、こんなにスムーズに会話しているわけで、私の対応をシャルロッテは完全に把握している。これって凄いことではないだろうか? 私とシャルロッテとが過ごした時間ってそんなにないのに、私の心の動き、どう答えるのかを書けるなんて。


 シャルロッテの人間を観察する能力が、百分の一でも私にあれば、物事の登場人物の性格をもっと掘り下げて、魅力的なキャラクターに出来るのに。


「はあ……」


「どうされました? マリア嬢」


 気持ち悪い。いつも通りのハインリヒ王子の方がずっと良いよ。試験中だから言わないけれど。学校でハインリヒ王子が文芸部に来たら感想を言ってあげようと思う。


 私以外の令嬢だったら最高の対応だったとね。もの凄く頑張ったのは伝わってきてる。でも、私の目の前にいる人は、ハインリヒ王子じゃない誰かさんなんだよ。


 私はそんな誰かさんを好きになったりはしないんだ。


 お食事会が無事終了して、ハインリヒ王子が我が家まで送ってくれて無事試験が終了した。お疲れ様です。ハインリヒ王子、会話はとっても楽しかったです。ありがとう。



「マリア、どう感想は?」


「驚きました。ハインリヒ王子が本についてあそこまで深く語れる方だとは思いませんでした」


「会話ね、一番心配していたのだけど、合格だわ。良かった」母上は安堵の表情をしていた。でもね、あれってシャルロッテが書いた台本をきっちりハインリヒ王子が演じただけだから、本の感想を言う際に、毎回シャルロッテに台本を依頼しないといけなくなると思うよ、お母様。


 疲れたけど、まあ楽しかったし、私は満足した。



 伯爵家の隠し部屋に誰かが侵入した。おそらく、グラントはすぐに伯爵に向かっているはず。


「ジョーダンさん、いますか? 少し来てくださらないかしら」


「マリアお嬢様、どうされましたか?」


「封鎖している。伯爵の隠し部屋に誰かが侵入しました。ジョーダンさんには私の護衛をお願いしたいの」


「国王陛下にお任せされた方が良いかと思いますが」


「私が張った結界ですし、おそらくグラントが参謀本部経由で国王陛下に報告が上がっていると思います」


「仕方ございませな。母上様に気付かれた場合のお覚悟はおありでしょうか?」


「仕方ないことですわね」


 私は笑顔を作った。



 伯爵家の近くに行くと、グラントに呼び止められた。アメリーも一緒にいる。アメリーはすでに剣を抜いていた。


「マリア、中には貴族が数人と傭兵が十人程度いる。国王陛下には報告済みで、ハインリヒ王子が来る予定だ」


 ハインリヒ王子もお疲れだろうに。


「伯爵家に侵入した貴族の目的は?」


「薬」


「伯爵家にはまだ隠し部屋があって、そこに薬が保管されているのかも」


「近衛の再捜査でも薬はまったく見つからなかった。伯爵家の別荘等を捜索したけれど、どこにもなかった」


「侵入した貴族はその薬のありかを知っているわけね?」


「さあね、薬がなくて禁断症状が出て、伯爵の家に飛び込んで行ったのかもしれないよ」


「今日はどういう訳か、監視役の近衛の兵士がいない日になっていた。近衛の上の方の人間にも中毒患者がいるみたいだね」


 ハインリヒ王子が疲れた表情で、ハルトムートだけを伴ってやって来た。


「マリア、何でお前までいるんだ!」


「ハインリヒ王子、その方がハインリヒ王子らしくて、私は安心できます」


「マリア、嫌味は後にしてくれ。グラントどうなっている」


「侵入してから一時間が経過しましたが、まったく動きがありません。気持ち悪いくらいです」

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