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悪役令嬢の私との婚約を、王子が破棄しないと私は断頭台に直行なのよ  作者: 田中 まもる
第七章 悪役令嬢マリア、大魔術師ルーメンを罠に嵌める
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035 悪役令嬢マリア、踊るルーメンに驚く

 王族以外立ち入り禁止地区を、私たちはガンダルフの案内で王城の地下深くの安置してある石棺の間を進んでいる。幾つかの石棺に刻まれた名前が削り取られていた。


 そこまでしないと気が済まなかったのかと私は暗澹あんたんたる気分になった。権力闘争は人間の理性を狂わせる。


 王城の墓場の最奥で、楽しそうに躍っている国王陛下の姿になっているルーメンが見えた。


「お前たち、短い時間でよくここまで来れたな。石室にスライムを満たしていたはずなのだが」


「ルーメン様、スライムなんて一匹もいませんでしたけど……」


 ルーメンがチラッとネルーさんを見た。


「ドラゴンは些事に関与しないのではなかったのか!」


「ガンダルフとワタクシとの婚礼の儀式の日程が決まったのよ。あなたに掛ける時間が惜しいのよ!」


「ネルー、私もお前たちの婚儀に出席するからな。お互い儀式中はお互い手出しはしないはずだよな」とルーメンさんが笑顔になってネルーさんに尋ねていた。


「ふざけるな!」とネルーさんが叫んだ。


「そうか、私は、現在逃亡中の身なので、招待状が出せないのか。しかしだ、私は必ず日時を調べて出席する。ガンダルフよろしくな」


「ああ、俺の友人はお前しかおらんからな。新郎の友人代表で祝辞もお願いするよ」


 この二人の関係が理解出来ない。魔術師として突き抜けると常識が通用しないのだろうか?


「本当にふざけないで、ルーメン! お前は裁判まで無限牢獄で監禁だ」


「ガンダルフ、私に脱獄出来ない牢獄ってあったのか?」


「知らん。ルーメン、お前さん、これまで捕まったことってあったのか?」


「ガンダルフさん、あのうですね。ルーメンさんなんですけど、どうして踊っているのでしょうか?」


「地上が忙しいようだな。操るのが大変そうだ」



 母上がスッと神剣を抜いた。


「冥府の剣か」踊ってるルーメンさんがすぐに気付いた。


「女剣士殿、私はここにいるが、ここにはいない。人間に私がどこにいるのかわかるのかな?」


 母上は答えない。


「マリア、短剣を出して」


「これは、ドラゴンの爪製の短剣とは、これはこれで楽しめそうだ」


 あれ、私、三百六十度見える。ルーメンさんの核が見える。目の前に見える国王陛下は幻影なのかしら? 核は一ヶ所にはとどまっていない。不規則に飛び回っている。



「マリア、行くわよ!」母上が部屋の大気を操って止めた。ルーメンさんの核も一瞬だけ止まった。母上のネァイリングの剣がルーメンさんの核を貫いたように見えた。母上はそのまま倒れた。


「ふう、人間風情に核が刺されるとは思わなかったぞ」


 倒れた母上が握っていたネァイリングの剣を、拾い、私は右手に握りしめた。左手にはトドメ用に短剣を用意した。


「ルーメン様、降伏しなさい。母上はその命と引き換えにあなたの核に印を刻みました。次、私が外すことはありません」


「ハッタリだ」


「では、試しますか? ガンダルフさんの結婚式に出席出来なくなりますけど……」


「それは困る。私は一度口から出した言葉は引っ込められない。ガンダルフからも正式に招待されたし……、友人代表として祝辞を読まないといけない」


「では、大人しくネルーさんに捕まえられてくださいませ」


「仕方ない。ドラゴンの姫君。無限牢獄とやらに案内してくれ」


 ネルーさんが、ルーメンさんの核にかせをはめた。で、二人とも消えた。



 母上、大丈夫ですか!


「気持ち悪い。三百六十度見えるって頭がクラクラする。ドラゴンって凄い」


 私たちは、ネルーさんにアシストをしてもらっていた。ネルーさんの視覚を共有し、ついでに魔力も供給してもらっていた。お陰で母上は死なずにすんだのだ。


「私は二度とドラゴンと戦おうって思わない。力が違い過ぎる」母上が床に座ったまま言う。私も気持ちが悪くて立っているのがやっとだったりする。


「はあ、良かった。ルーメンさんが私のハッタリに乗ってくれて、私では絶対に母上のように核を貫けなかった。母上は凄いです」


「私もギリギリだったのよ。船酔い状態で決闘なんてするものではないわ、ルーメンには攻撃の意思がまったくなかったから、決闘は言い過ぎよね……」


 ルーメンさんには私たちと戦う意思はゼロだった。面白い余興を見せてほしいって感じ。私たちだけが命を賭けた茶番劇を演じただけに過ぎない。


「なあ、マリア、俺と逃げてくれないかあ」


「はあ?」


「ガンダルフさん、何を突然言い出すの……」


「俺、結婚したくない」


「マリア、その剣はおかしいのよ。何も聞く必要はありません。万一にもこの剣がなくなると、世界が破滅します。良いですね、マリア」


「お母様のおっしゃる通りです」


「俺は結婚したくない!」と王家の墓中にインテリジェンスソードの叫びが響いていた。


 




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