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悪役令嬢の私との婚約を、王子が破棄しないと私は断頭台に直行なのよ  作者: 田中 まもる
第七章 悪役令嬢マリア、大魔術師ルーメンを罠に嵌める
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034 悪役令嬢マリア、ドラゴンの姫君ネルーをガンダルフが必死になだめているのを聞く

「どうして、アリん子が、ワタクシたちを上から見るわけ! 不快だわ」


「ネルーちゃん、私の婚約者よ、郷にいれば郷に従えって言葉を知ってるよね」


「ガンダルフがそう言うのなら、今回だけは見逃してあげるけど、二度目はないわよ!」


 ネルーさんとガンダルフさんには、出来るだけ早くドラゴンの国に帰ってもらおう。そうしようと私は決めた。



「ドラゴンの姫で、私はネルーと言う。この国の国王に告げる。我らは魔術師ルーメンを追っている。ルーメンを亜空間に追い込んだところ、空間に亀裂が入り、ルーメンがそこからこの世界に逃げ出した。私もその亀裂からこの世界にやって来た」


「ルーメンを捕らえてワタクシに渡すか、ワタクシ自らがルーメンを永遠に消し去るかなのだが、私が自らルーメンに鉄槌を下すと、おそらくこの世界は一度滅びるかもしれない。それは承知してほしい。以上だ」


 これって王国への最後通告だよね。母上、王妃様、国王陛下、なぜ、私のような非力な悪役令嬢を見つめるのかしら。笑って誤魔化せる雰囲気もない。絶対、ゲームにはこんな無理ゲー設定はなかった!


 このゲームは異世界恋愛ゲームのはずで、異世界バトルものではなかった。


「ガンダルフさん、ルーメンって捕まえることができるのですか?」


「ネルーが亜空間に追い詰めたので可能だ。まあ、ドラゴンと人間とでは力がまったく違う。しかしだこの大魔術師にしてドラゴンの姫君の婚約者である俺なら可能だ。ただ、死人はけっこう出るけどな」


 やはり犠牲者ゼロには出来ないのか。


「ネルーちゃん、ルーメンがどこにいるのかわからないか?」


「ノイズを撒き散らせているから、はっきりとは言えないけど、王城の周辺で上ではなく地下だと思う。おそらく地下墳墓辺りで、魔獣やら屍人を操っているみたい」


「ルーメンが、ここで遊んでいるのが、俺には解せない。ノイズに紛れて別の空間に逃亡するのが奴だと思うのだが……」


「ルーメンはもうどこに逃げても私たちからは逃げられないの。千年掛けてやっとルーメンの核に絶対に消せないマークを撃ち込んだの」


「ルーメンとしては、ここで大暴れをして、追跡しているドラゴンを出来る限り集めてから、逃走するつもりか……」


 国民陛下も王妃様も真っ青な顔になっている。母上だけが微笑んでいる。


「ガンダルフさん、ルーメンを別の世界に飛ばすことは出来ませんか?」


「マリア、別の世界にも人間がいるのだがな……。そいつらがどうなっても良いのなら、ルーメンを飛ばしてやる。ただし、王宮で無駄な会議をやっている魔法使い全員の命をもらう」


 ルーメンを追跡しているドラゴンが王都に集結。ルーメンが最後の抵抗をして、王国を壊滅させてしまうのか?


 王宮の魔法使い全員を犠牲にして、異性界の人間も犠牲にして王国を守ることを選択するのか? どうする私。


「ガンダルフ殿」国王陛下がガンダルフに直々に尋ねた。


「王宮魔法使い全員は余の命令ならば全員命を捨てる。ルーメンと言う怪物を異世界に送れるのか?」


「王宮魔法使いのレベルが高ければだ。レベルが低ければ、異世界どころか隣町にも飛ばせないぜ」


「そうだなぁ、ネルーを見て倒れなければ、合格だ。なあネルー、そいつらが死なない程度で見つめてやってくれ。まあ、誰もネルーと目を合わせられないだろうけどな……」


 王宮魔法使い全員が謁見の間に集められて、一人ずつネルーさんの前にも立たされた。魔法使いは秒も持たずに倒れていった。ただ一人十秒弱頑張った魔法使いがいた。この国第一と言われた魔法使いだった。


「国王、ご覧の通りだ。王都の外にも飛ばせられん」


「と言うことは、地上は、ドラゴンのブレスで壊滅する。どこまで逃げれば安全なのかは俺にもわからん」



「ネルー様、この剣はご存知でしょうか?」と母上がクレール家の家宝ネァイリングの剣をネルーさんに見せた。


「ネァイリングの剣ですね。神剣です。間違いありません。この剣は使い手の命を燃やして使うので、使い手は必ず死にます。冥府の剣と呼ばれている剣です」


「あなた、その剣を使えば間違いなく死にますよ」


「構いません。ネァイリングの剣でルーメンを捕縛します」


「しかし、ルーメンはドラゴンでもおおよその場所、居所しかわからないのよ」


「ネルー様には、ルーメンのおおよその居所はわかる。万一私がルーメンを捕縛すれば、王国は助けてもらえますね」


「母上」


「マリア、悪いのだけど、あなたの命もちょうだい」


 ああ、同人誌第一号の発行を私は見ることが出来ないのか……。


「仕方ないですね。私、母上とご一緒します」


「あなたもやはり私の娘ね。これまでは本当に散々だったけど。私はあなたを誇りに思いますよ。それと砲台のマリアとか馬上の舞姫と言う二つ名は捨てなさい。ダサいから」


 母上、褒めるだけにしてくれたら嬉しかったのだけど。


「イライザ、その方たちどうするつもりだ?」


「国王陛下、ネズミを捕縛してネルー様に差し上げます」



「ルーメンの奴、何を慌てているんだろうなあ。居場所がダダ漏れだぜ」と急にガンダルフさんが言い出した。


「疾風のイライザとその娘、俺について来な。墓場にな」


 ガンダルフさん、全然面白くないです。でもネルーさんには大受けしている。お似合いの夫婦だね。

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