029 悪役令嬢マリア、 ガンダルフの活躍を見せられる
Bクラスの子たちを見つけた。まったく精気が感じられない。
「ありゃあ、飯を食ってないなあ」
「グラント、あちこちにトラップが張ってあるが、アイツら寝かせられるか? 無理ぽいようなら、マリアを使うけれど」
「ガンダルフさん、僕を甘く見てますね」
「いや、実力はちゃんとわかって言っている。アメリーの嬢ちゃん、そいつにキスしてやるとさらにパワーアップするけど」
「それは、そのう……」って言いながらグラントの頬にアメリーがキスをした。
「グラント、その程度で、呼吸を乱すようなら、マリアと差し替えだぜ」
ガンダルフって性格が歪んでいる。
「アメリー、ありがとう」とグラントが笑顔でアメリーを見てから私、正確にはインテリジェンスソードを睨んだ。
◇
グラントが三人をまとめて眠らせた。トラップに三人の精気というか生命力を吸われていたのか、トラップを解除されるたびに、一人ずつ勝手に寝てしまった。すべてのトラップを解除すると、そのまま永眠しそうで怖かった。
ガンダルフが三人まとめて、その体内にガンダルフは魔力を、元は私の魔力を彼らに注いだ。
「つまらなん。終わった」
「全員、死んでたわ」
「ガンダルフ、魅了を解いただけで死ぬわけないじゃない!」
「魅了じゃない。マリオネットだ」
「マリオネットにされた時点で、コイツら死んでいる」
「一体誰がそんなひどいことを!」
「ドラゴンと睨み合っている奴だな。間違いない」
「残りの二人もすでに死んでいる。ちゃんと葬ってやらないとだが……」
ちょっと無理ぽいかも。三人の遺体がむくりと起き上がって、私たちに襲いかかってきた。アメリーになぜか集中している。それをグラントが斬りまくるのだが、ヒュードラみたいに再生する。
「コイツらも魔改造済みか」
「ゲヘナの炎を燃やすしかないな!」
「グラント、マリア下がって!」
私はガンダルフで三人を斬った。斬り口からゲヘナの炎が上がった。
「マリア、さらに二人が来る!」
Aクラスでハインリヒ王子に反抗しまくっていた大貴族の男の子二人がぼろぼろの姿で、目にはまったく精気がない。なのに裂ぱくの気合いで剣を振るう。
「二人とも王国内で指折りの剣士だった……」
「マリア、俺に超、超、強化魔法をお願いします」
「あんな、剣速を受けたら、俺、折れます。絶対にポキってなるから」
ガンダルフに超、超強化魔法を掛けた。でもヤバいわ。私が斬られる。腕が違いすぎる。
「マリア、私にガンダルフさんを渡してください。マリアさんでは無理です」
「マリア、アメリーの言う通りにして、早く、僕たちが斬られる前に!」
私は思い切り躊躇った。
「マリア、アメリーを信じろ!」
私はガンダルフをアメリーに放り投げた。
アメリーは、ガンダルフを握ると、やはり裂ぱくの気合いで、一人の元剣士の胴を斬った。斬り口からゲヘナの炎が上がった。
「アメリー、後ろ」
早い、横にガンダルフをないで、元剣士の剣筋を受け流すと、裂ぱくの気合いで相手の腕を斬り落とした。斬り口からゲヘナの炎が上がる。それでも片手剣でアメリーに斬りかかる。
アメリーはさらに剣士の胴を斬る。斬り口からゲヘナの炎が上がって、剣士は動けなくなった。
「アメリーさえ、斬れば、奴らの勝ちだったんだよ」
「よく見てますね、傀儡師ルーメン!」
「ドラゴンと睨み合い中に話し掛けても答えはないか……」
「ガンダルフ、傀儡師ルーメンって?」
「俺の友人、ヤバい系の友だな。自分より強い魔術師がいなくなった、まあ、奴が殺して回って、引退してどこかで、のんびりスローライフをしてたはずなんだがなあ。急にどうしたんだろうね」
「あのう、ガンダルフ、ルーメンさんて数千年前の人間ですよね」
「アイツは、人間をやめた。たとえて言うなら幽霊になった」
「ドラゴンがこの島に来たのもルーメンを追いかけてだろうよ」
「ルーメンはドラゴン、とくに幼いドラゴンを狩るのが趣味だったからな。ドラゴンから相当な恨みをかっている」
◇
アメリーがガンダルフを私に返してくれた。
「アメリーって剣士だったの?」
「アメリーには、ハインリヒ王子も勝てない」
「たまたまです。祖父の方が私より何倍も強いです」
「さて、皆の衆、覚悟は良いかな。とんでもない化け物のところに行くが」
「ドラゴンが加勢してくれれば勝算はあるが、ドラゴンさんがルーメンとの一騎打ちをお望みだと、まったく勝算がない。ルーメンには実体がないから、魔法も剣も受け付けない。ただ、ドラゴンのブレスとゲヘナの炎にのみ、奴を地獄に送れる。
「見えている奴を斬ってもそれは残像だから意味はないと言っておくぞ」
「それって人間には倒せないと言っているように聞こえるのですけど」
「奴は最高の魔術師だ。俺を除いてだがな」




