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025 悪役令嬢マリア、無人島生活を送るその1

 私たちは泉の近くにキャンプを張った。私もグラントも実戦経験者なので、段取りは早い。アメリーは私たちが見落としていることを、片付けてくれたので、たぶん、参加者の中で最速で無人島生活の用意が出来たと思う。


 グラントは毒物の検査薬を用意していた。アメリーは腰に短剣をさしている。野営慣れしているのがわかる。


「アメリー、手際が良いわね」


「跡取り娘ですから、小さい頃から訓練されているので、こういうのには慣れてます」


 泉の近くという提案をしたのはアメリーだ。ウォーターの魔法が禁止されているので、水の確保が一番だというのが理由だ。


 食糧については二日分の携行が認められていたが、それはあくまで非常食という認識を三人で共有している。グラントもアメリーも、無人島でのサバイバル経験者からのレクチャーを受けていた。


 島にはウサギ、鴨などの小動物や鳥が多いので、基本的にそれを狩って、塩をまぶして保存食にしておく。魔獣はそうした小動物の近くにいるので、全周囲警戒要員は必ず一名は置くことだそうだ。


 魔獣については、それほど強くもないが決して弱くもないので、戦うのはどうしても避けられない時のみにして、体力を温存しておくこと。稀にドラゴン、またはワイバーンが飛んで来ることもあるが、勝ち目はないので、見つけ次第逃げることなどというアドバイスをもらった。


 経験者とは、グラントの兄二人からの情報だ。この二人もやはり水の確保が一番難しい。川の水が少ない時は水争いが起こるので、川の近くの水場は危険だと言う。


 たいていの生徒は川の近くにキャンプを張っている。今年は小川程度の水が流れているので、水争いについては今回は大丈夫そうに見える。


 私は、シャルロッテの取り巻きに襲われる可能性が大なので、私たちのキャンプの周辺には戦場さながら、トラップを張っている。トラップを巡らしたのはアメリーだ。


 アメリーに言わせると、騎士階級の常識だそうだ。貴族はやはりこういう場合、本当に役に立たないと思う。


 私たちのキャンプの周辺にトラップを張り終えると、さっそく私たちは狩りに出掛けた。狩りについてはグラントの独壇場だった。足跡を見つける。小動物のフンを見つけて、巣穴を探してあっさり仕留めて、アメリーが慣れた手つきで、内臓を取り出し、血抜きをする。


 私は見ているだけ。一応全集位警戒要員なので、薄く魔力を広げて魔獣の接近があれば、グラントたちに知らせる役目をしている。


 後で聞いた話ではテントを張るだけで、手こずって、狩りまで出来たグループはいなかったようだ。幾人かは単独で、無人島の奥に拠点を構えたらしい。


 アメリーは、植物に詳しく、食べられる植物、キノコについては、絶対に大丈夫なキノコ以外採取しないように、私とグラントに厳命した。キノコは極めて似ているものが多い。別種のキノコで毒が薄いので食べられるキノコはあるそうだ。しかしキノコについては、絶対に大丈夫というキノコ以外採取してはいけないとまで言われた。私とグラントはキノコ狩りは諦めた。


 問題は塩なのだけれど、海辺に行くのはトラブルの原因になるのと、海水から塩を取り出すのは手間の割に、量が取れない。この島のどこかに岩塩があるらしい、これもグラントの兄たちからの情報。場所については、そこまでアドバンテージを取ってしまうと不公平ということで教えてもらえなかった。


 私は、ジョーダンさんから失せ物探しの魔法を教えてもらったので、近日中に探し当てるつもりでいる。


 トラップに誰か掛かったようで見に行った。


 ハインリヒ王子が糸に絡まっていた。お付きのハルトムートが、むすっとしている。


「お前たち、どうして皆と仲良くしないのか? 協力し合えばお互いに楽だろう」


「それと、お前たち、ここは戦場ではないのに、幾重にも張ったトラップはなんのためだ」


「ハインリヒ王子、ここにはハインリヒ王子とハルトムートしかいないのですよね。盗聴器とか服に縫い込まれていたりしませんか?」


「ハルトムート、どうだ?」


「この島は微量の魔力があちこちから出ているので、絶対とは言えませんが、おそらく大丈夫ではないでしょうか?」


「ハインリヒ王子、私は狙われています」


「そのことは知っている。シャルロッテが、俺、ハルトムート、アメリー、グラント、マリアの周辺にいる連中に魅了を掛けた」


「情報収集と隙あらば暗殺するつもりだ」


「この島における暗殺のターゲットはマリア、次に俺だ」


「俺は、クラス全体を守らなければいかんので、川辺に陣取った。言っておくが俺が守るのはAクラスだけで、後は知らん」


「貴族である以上、自分のことは自分で守れだ。自信がなければ早目にリタイアすることだ」


「シャルロッテのことだ、危険な魔獣をこの島に送り込んでいると思う。今年は死人が出るかもしれんな」


 シャルロッテ様、どうしてそこまでするのか? 私には理解出来ない。

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