024 悪役令嬢マリア、シャルロッテの原稿で頭を悩ます
シャルロッテは今は妃として王宮の離宮で生活している。簡単には会えない。とくに私はシャルロッテの取り巻きに命を狙われているので、ハインリヒ王子も国王陛下も、シャルロッテと私との接触を暗に禁じている。学校内でも、ハインリヒ王子の手の者が私とシャルロッテとが接触しないように、邪魔をしている。
「ガンダルフ、私、シャルロッテに会って話がしたいの」
「シャルロッテの取り巻きがお前の近くにいるから、そいつらに依頼すれば会える段取りを向こうがつけてくれる」
「お前の元取り巻きAからEは、シャルロッテに取り入っている。あれらに、マリアを殺す度胸はない。ただし、シャルロッテに会わせると言って、実際には暗殺者のところに連れて行く可能性はあるけどな」
「このBクラスの何人かはすでにシャルロッテの魅了で操り人形状態だ。実習では気を付けろ。後ろから殺られる」
「ガンダルフ、それってシャルロッテの命令なの?」
「さあな。マリアの行動がまったく読めないので、いない方が良いという願いが伝わっただけかもな」
「マリアのように単純なのは、頭の良い連中からすればあり得ないのだろうよ。とてもわかりやすいのにな」
「毎度、ありがとうガンダルフ」
このインテリジェンスソードって本当にインテリジェンス包丁にしたくなることを毎度言ってくれる。慣れたつもりでも、ムカッとくる。
「マリア、そろそろ子熊のお前の餌の時間だが」
「ありがとうガンダルフ」なぜかガンダルフは子熊には優しいのだ。モフモフ好きなのだろう。
子熊のお前は誰にも預けられないので、体を小さくして私のポケットに入れて持ち歩いている。この体を小さくする魔法はガンダルフのオリジナル魔法で使えるのは、私しかいない。
小さくする魔法を解いた。そこそこ大きくなったので、山に帰した方が良いのだけれど、完璧に私に懐いてしまって、私としても別れ難くて。まあ、お前が戯れて私を殴っても、私はケガもしないので問題ないのだけれど。普通の人だと絶命するかもしれない。
ガンダルフは別にこのままでも良いのではと言う。でも、最近お前に掛かる餌代がけっこう多額になっているので、そこを考えると、それとお前のグルメ化が進んでいるので、このままだと山にあるものが食べられなくなるかもなので、困るわけで……。
◇
「マリアの場合、シールドの多重重ねがまだ不十分だ。それが完璧に出来るようになってから、シャルロッテと接触する方が良い。毒に関しては、俺が魔改造したので、どんな毒を盛られても問題ない」
「俺に感謝をしろ」
「ありがとう、相棒」
「感謝には及ばない」
ガンダルフが感謝をしろって言うからお礼の言葉を言ったのに、こう言うところがムカつくインテリジェンスソードなわけで……。
「マリア、俺の性格だ。諦めろ」
私って俺様気質の人に好かれるのだろうか? 私はDV要素のある人は嫌なんだけど。本当に。
◇
「皆さんも後一年で卒業です。来月、無人島でのサバイバル生活をすることになっていることは、当然皆さんも知っているはず。その概要をプリントした用紙を配布しますので、今から己れを鍛えておいてください」と先生が無人島での暮らしについて書かれたプリントを配布した。
要項及び留意点
一、単独行動で二週間サバイバル生活をしても良いし、グループを組んで生活をしても良い。グループメンバーはクラスメイトでなくても良い。
二、使用出来る魔法は、生活魔法であれば、着火の魔法フランマ、衣服、身体を清潔に保つウォッシュのみに限定する。それ以外の生活魔法を使用した時点でリタイアとする。リタイアした生徒は、魔法実技及び魔法理論及び魔法使いとしての倫理を三十時間再学習する。
三、無人島には魔獣が生息しているので、魔力に自信のない者はグループに加入することを推奨する。魔獣を狩ることは問題ない。逆に狩らなければ死ぬこともある。その責任については、学校は負わないものとする。自信がなければリタイアを宣言すること。
四、急病その他の理由で、リタイアする場合は職員詰め所にて所定の手続きを行ない、リタイアとする。リタイアした場合の措置は、二で述べたことを学習するものとする。
◇
私は無人島で間違いなく、襲われる。単独行動をするしかないよね。
「マリア、僕とアメリーがマリアのグループに入るから、よろしくね」
「グラント、私、狙われているから、危ないと思うけど」
「わかっているけど、アメリーと相談して決めたことなんだ。よろしくね」
「マリア」と大声で叫ぶ声がした。ハインリヒ王子がBクラスにやって来て「俺はマリアのグループに……」と言った途端にハルトムート他数人に押さえられ、「王子はAクラスのまとめ役ですから、アメリーと違ってBクラスには入れません」と言われて、そのまま連行されて行った。
アメリーが、「マリアよろしくね。私、Aクラスから省かれたの……」と言う。
「私、かなりまずい立場だけど、良いの……」
「マリア、私も騎士の娘なの」とアメリーが微笑んだ。




