023 悪役令嬢マリア、アメリーとグラントが婚約したことを知る
「なんですって! アメリーとグラントが婚約したの。学校を卒業したらグラントは、オット男爵が駐屯している辺境の地の伯爵になるって、本当なの」
「そうでございます。さてでございます。アメリー様がハインリヒ王子とお話しになっていたのは、そのう、グラント様とマリア様のご関係でございました」
「何それ」
「アメリー様は、グラント様とマリア様の関係を気にして、ハインリヒ王子に相談されていたそうです」
「グラントは女嫌いなので、マリアと仲が良いだけだ。マリアには女性としての資質がないので付き合える。そんなグラントとアメリーは良好な関係なのだから、ほぼ間違いなく、グラントはアメリーに惹かれているはずだ。安心するが良いとハインリヒ王子がおっしゃられたそうです。マリア様、私の首を絞めるのはおヤメください」
「グラントが女嫌いって知らなかったよ」
「グラント様は継母の方と上手くいっておられませんでしたから……」
「グラントのお母様って後妻だったの、知らなかった」
そうだ。私ってグラントのことをほとんど知らない。
「当初、ハインリヒ王子はグラント様を自分の右腕、左腕はハルトムート様にすると、おっしゃられて、辺境の地はアメリー様が伯爵になって治めるように、グラント様は王都に残って自分の補佐をするようにと。アメリー様には辺境の地にこれから建設するオット辺境伯爵領の館に住むようにと、述べられたそうなんですが……」
「相変わらずの、俺様ぶりね」
「グラント様が猛烈に抗議をされてですね。アメリー様が伯爵になった上で、自分はオット辺境領に住むとおっしゃられましてですね、すると、アメリー様は自分は伯爵になることを辞退するので、グラント様を伯爵にと強行に主張されて、かなり紛糾したみたいです」
「要するに遠距離は嫌だと二人して言ったわけね」
「はい、その通りです。結局アメリー様が伯爵に就任し、グラント様は国軍参謀本部参謀兼オット辺境伯爵に就任という格好に落ち着きました」
「なぜ、アメリーの父上が伯爵にならないのよ」
「それだけの実力がないからだそうです」
「それで、シャルロッテ様の動向は?
「はい、王宮内の役人、侍女に魅了を掛けて情報収集をされています」
「魅力って?」
「マリアが掛けられていた、シャルロッテとかいう奴の言うことに従う魔法だ。俺が解いておいた。シャルロッテには気を付けろ。そいつは逸材だ」
「ガンダルフ、ありがとう。私、いつの間に魔法を掛けられていたのだろう?」
「晩餐会に招待された時だな。そこからお前はシャルロッテの思うままに動くはずが、想定外のことばかりやらかして、シャルロッテの計画をめちゃくちゃにした。俺はお前をスキャンしながら腹を抱えて笑ってしまったよ」
「さすがは、異世界人だ」
ガンダルフのどこがお腹何だろう?
「くだらんことは考えるな」
「ガンダルフも私の心が読めるの?」
「マリアの思考パターンは理解しているので、わかる」
「それとですが、シャルロッテ様の取り巻きがお嬢様のお命を狙っております。ご注意下さい」
「ありがとう、気を付けるわ」
「シャルロッテの取り巻きが私の命を狙う意図がわからない、私はシャルロッテが王妃になるのが、王国にとって最善だと思っているのに」
「シャルロッテの取り巻きの立場で考えろ! 問題児のお前が相変わらず婚約者で王妃だ」
「お前さえいなければ、シャルロッテが妃から王妃にって考えるだろう」
◇
「グラント、あなた、アメリーと婚約したの?」
「さすがは、クレール家だね。僕とアメリーとハインリヒ王子とハルトムートしか知らないはずなのに……」
「あっ、ごめん私誰にも言ってないから。安心して」
「それでグラント、あなたはオット辺境伯爵になるのね」
「ということは、国軍参謀本部から情報が漏れたわけか」
「グラントは学校卒業後には、アメリーと一緒に辺境の地に行ってしまうわけよね。それでなんだけど同人誌はどうなるわけなの?」
「ハインリヒ王子の意向で、ちょくちょく王都に戻って来るから、マリアに原稿は渡せるし、辺境の地と王都の間に郵便制度を作るので心配ないけど」
「私としては、一年以内に第一号を発行したいわけで」
「僕の原稿は今、推敲段階だし、アメリーはほぼ完成して、校正している、ハインリヒ王子たちの武勇伝は現在鋭意執筆中だよ。はっきり言って一番遅れているのがマリアの原稿だけだ」
「ごめんなさい。私、雑用が多くて書けなくて、頭の中には完成しているから。それでハインリヒ王子たちの武勇伝というのは聞いてないのだけれど!」
「僕とアメリーとマリアで物語を書いて発行するって、僕が言ったらハインリヒ王子が乗り気になって、自分たちの武勇伝も載せるよう言い出して、仕方なくだね。でも、勇者ものとしてはそこそこ面白いと思うよマリアが営倉に入れられてすぐに決まった。経費もハインリヒ王子が出してくれる」
「で、巻頭を飾るのシャルロッテ様の原稿はどうなったの? 絵師は見つかったけど」
「シャルロッテ様の原稿かあ……。それが一番困っているの」




