021 悪役令嬢マリア、インテリジェンスソードを探す
イケメンアラサー長老の後について、倉庫に行く。倉庫には鍵は掛かっておらず、引き戸なのが珍しいだけだ。
「どこかにあると思う。もしかしたら、もうないかもしれない」
この倉庫って捨てられないものを放り込んでおく倉庫みたい。インテリジェンスソードって言うから宝物庫にあるのかと思ったのが大きな間違いだった。
子熊の「お前」はよく寝ている。
「はあー」とため息をついた私を見て長老は「探すついでに片付けてくれると嬉しい」と言うと長老の館に戻って行った。
気持ち悪い彫り物とか、鳥の羽飾りとか、お面とか、日本だと民族博物館にありそうな物があちこちに置いてあった。楽しい。
日本的に、これはポリネシア、これは南米、これは東洋って感じに分類してみた。私は何をしているのだろう。私は学芸員の資格持ちなのでつい熱中してしまった。
「ふう、何とか片付いた。でもねインテリジェンスソードが見当たらない。どうしよう。誰かがすでに持ち出したのだろうか? お前、そこの壊れかけた棚に登っては危ないよ……、ほら、崩れちゃったよ」
片付けないと、インテリジェンスソードには見えないけど、鉄剣が落ちていた、コヨリで封印してある。コヨリで封印される剣って何なの! 魔力もほとんど感じない。まあ、ものは試しでコヨリの封印を私の魔力を一気に流すことで封印を解除。
ドン、やってしまった。コヨリごときに爆烈魔法って、我ながらあり得ない。
「お前、馬鹿なの間抜けなの、出来もしない封印の解除を力任せにするなんて!」と鉄剣が喋りだした。
「すみません。コヨリ程度なら簡単に切れるかなと思ったら意外に魔力が必要でした……」
「もし、俺が爆烈魔法で折れたらどうするつもりだったのか尋ねたい?」
「ただの鉄剣だと思っていたので、鍛冶屋に持って行って包丁にでも……」
「俺をインテリジェンス包丁にするつもりか!」
「エルフとドワーフの合作がただの鉄剣だとは思わなかったので、ミスリルとオリハルコンが合わさった剣だと思っていたので……」
「ただの鉄剣で悪かったなあ。アン」
「お前はインテリジェンスソードである俺を探していたのは、間違いないと思うのだが?」
「はい、探していました」
「その理由を聞こうか?」
「魔法使いの始祖様が……」
「誰だ魔法使いの始祖って?
「爆烈魔法しか使えなくて、それでエルフに精霊術の使い方を学ぼうとしてエルフの村に来られた方です。お名前はアインザック様らしいです」
「アインザックね。俺の弟子だ」
「あのう、アインザック様は魔法使いの始祖様ですけど?」
「アインザックより優秀な魔法使いは何人もいたけど、そいつらの系統は一子相伝とか言って、途中で途切れた」
「アインザックは誰にでも気前良くホイホイ教えたから、アインザックの系統が残っただけの話だ」
「それでは俺の柄をしっかり握ってくれ。お前をスキャンする」
「スキャンですか……」
「そう、全身スキャンだ」
「痛くないですか?」
「知らん。俺はスキャンをしても、されたことはない」
はあ、とため息をついてインテリジェンスソードのスキャンを受けた。かなり痛い。
「お前、異世界人か? アインザックと同じだなあ。魔術回路が歪だ」
なんか、私の中で大工仕事をしている。トンカラ、トンカラってかなり頭が痛いのですが……
「インテリジェンスソードさん、かなり痛いですけど!」
「俺はインテリジェンスソードさんではない、ガンダルフと言う超一級の魔術師だ。お前の歪な魔法回路を修正しているから我慢しやがれ」
「生活魔法が使えるようになる程度で良いのですが……」
「そうか、諦めろ。魔改造中だ」
魔改造って私は何になるのだろうか? 改造人間になってしまうのか? それとも魔法少女かなぁ。
でも、マッサージと整体を受けて血の巡りが良くなったような。なんか体が軽くなった。
「まあ、今日のところはこれくらいにしておいたるわ」
何だろうこの違和感というか、この関西系のノリわ。
「俺はガンダルフと名乗った。さて、お前とその熊の名前は何だ?」
「申し遅れました。私はマリア・フォン・クレールと申します。この子熊は一応お前と呼んでいます」
「それじゃあ、マリア、今日からお前の相棒、子熊の相棒やないで。ガンダルフだ。よろしくな」
正直言って面白くないのだけど。
「よろしくお願いします。ガンダルフさん」
「相棒は呼び捨てにしろや」
「よろしくお願いします。ガンダルフ」
「それじゃあ、長老のとこに行くか。アイツには世話になった。数千年喋られなかったし、このぞんざいな扱いに、感謝しないといけないから」
私たちは、長老の館に戻って五分で追い出された。魔法陣を警戒していたエルフの兵士が呼び出されて、強制送還された。ガンダルフのマシンガントークが炸裂してイケメン長老が、激怒したのだ。悪いのはガンダルフ。イケメン長老は絶対に悪くない。




