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悪役令嬢の私との婚約を、王子が破棄しないと私は断頭台に直行なのよ  作者: 田中 まもる
第一章 悪役令嬢マリア、文芸部を創部する
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002 悪役令嬢マリア、取り巻きを追い払う

 一月間の自宅軟禁の後、私は学校に通学した。監視役同伴で、学校側も私の問題行動に頭を痛めていたこともあって、あっさりと認められた。


 執事長のジョーダンさんが私にくっいている。このジョーダンさんは過去に虎と狼を素手で倒した上に、大熊を蹴り殺したという、恐ろしい爺さんだ。普通の人だと、目が合っただけで、体が硬直する。


 マリアが生まれた時からずっと一緒にいる人なので、両親よりも信頼している。物語好きになったのはこのジョーダンさんが好んで話す英雄譚えいゆうたんの影響が大きい。


 ジョーダンさんは、マリアにとってはクレール家でただ一人の理解者だったりもする。ジョーダンさんは、周囲からはマリアを毎度叱る役目をしているので、マリアから嫌われていると思われているけれど。


 私が通学すると、私の取り巻きAからEまでが私に「お辛かったですね」とまったく心にもないお愛想言ってくれた。私はいなくても、この学校であったことはわかるようになっている。私はこの学校に数人の間諜かんちょうを雇っているから。本音は小説を書くためのネタ探し。表向きは軍事に特化した我が家の情報収集技術を習得するため。


 私が自宅軟禁されている間、私の取り巻きのAからEたちは、私の悪口を、お馬鹿な公爵令嬢、間もなくハインリヒ王子に愛想を尽かされて婚約者の座から落っこちるとか、私の後任はマラード家の令嬢が有力候補だと言っていたらしい。徐々に私との距離を取ろうとも言っていたという報告が入っている。


「ねえ、あなたたち、私ね、来月マラード公爵様から晩餐会に呼ばれているのよ、あなたたちがお近づきになりたいシャルロッテ様を紹介してあげるわよ」


 取り巻きAからEから表情が抜け落ちた。この中に裏切り者がいるって顔になっている。


「マリア様、お疲れのところ申し訳ありませんでした」と言いつつ取り巻きたちは私から離れていった。貴族なんだから、シャルロッテに紹介してもらえるチャンスはものにしないとって思うのだけどね。逃げちゃダメだよ。私としてはシャルロッテに連中を押し付けたかったのだけど。


 取り巻きたちは排除出来た。私はアメリーのクラスに行く。クラス分けは建前上だが、王族も例外ではなく、成績順になっている。もっとも私は、公爵家の威光でかなり成績を改竄かいざんしてもらってBクラスだったりするけど。


 アメリーは成績優秀なので、ハインリヒ王子と同じAクラス。身分の壁があってアメリーは常にAクラスではボッチになっている。それに気付いたハインリヒ王子はアメリーに関心を持ち、恋に落ちるわけ。


 私はAクラスに入って、ひっそり隠れているアメリーの前に仁王立ち。アメリーは怯えた表情で私を見ている。ハインリヒ王子も私たちを見ている。


「アメリー様、私、お願いがあってここに来たのです。私はグラントと文芸部を立ち上げましたの。まだ学校の承認が下りておりませんので、部ではなく同好会なんですの。で、私の見たところあなたは読書が大好きなんですよね」


「ということで、あなたを文芸部(仮)のメンバーにすることにしたので、今週の木曜日の放課後迎えに行きますので、予定を空けておいてくださいませ」


 アメリーに断られると、私は断頭台に直行なので、ここはほぼ命令で押し通す。


「マリア様、文芸部ですか?」


「はい、将来文芸部にします」


 アメリーの目に涙が溢れている。やり過ぎたか! これってイジメだよね。ハインリヒ王子が寄って来たよ。


「マリア、権力を使って、嫌がるアメリーを文芸部という得体のしれないもに無理矢理入れるとは、お前、何を考えているのだ!」


「ハインリヒ王子、お言葉ですが、アメリーは身分をとっても気にする)なので、こう言う無理矢理なやり方でないと、入ってもらえないんですよ」


「マリア、お前、クラスが違うのに、なぜアメリーの性格を知っているのか?」


「ふふふふ、本好きの匂いがアメリーからするのです」


「全然答えになっていないのだが……」


 ゲームの設定を知っているからなんて言えないよ。ハインリヒ王子様。


「マリア様、私で良いのですか?」


「アメリーが良いのです」


「マリア、私も入部する」


「お断りします。ハインリヒ王子は実用書しか読まないではありませんか!」


「文芸部は物語を書く部活です」


「第一、ハインリヒ王子は、乗馬クラブに剣術クラブに政策研究会に、生徒会の役員もなさっている。それにたしか公務では国軍参謀本部本部長で、私の父上の上司のはず、文芸部に割く時間はゼロだと思います。それにですよ、王子を文芸部に入れたのが両親にバレたら、私は間違いなく寄宿舎のある学校に転校させられるます。絶対にお断りです」


「お前ぐらいだ、私の申し出を即座に却下するのは……」頭を抱えてハインリヒが私から離れた。


「婚約者だからって良い気になって」とか周囲が色々言っている。私が言ってる連中の方を見ると黙るのだけれど。


「あのう、マリア様、ハインリヒ王子様の入部を断って良かったのですか? 部になるには生徒会役員の推薦が必要だったと思いますけど……」


 マズいしくじった。まあ、同好会でも良いから問題なしとしよう。


「私のことはマリアって呼んで。私もアメリーって呼ぶけど良いかしら?」


「私は光栄です!」


「ハインリヒ王子、アメリーは私の友人ですからちゃんと守ってくださいましね。アメリーがイジメられていたら、私は承知しませんから」


「マリア、お前、額を強打してから、元々変人だったのがさらに変人になっている。父上にお願いして医者を行かせる。それとアメリーをイジメから守る騎士の役は任された安心しろ」


 医者を寄越しても私は変わらないよ。


「それじゃあ、アメリー、木曜日の午後迎えに来るからね。よろしくね」

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