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016 悪役令嬢マリア、アメリーの家に泊まる

 現在、私は不機嫌だ。身内に裏切られた気分になっている。実際、身内に嵌められたわけだけど。


 アメリーの家は、騎士から男爵に上がったばかりで質素だった。でもとても清潔だ。でもって、突然公爵令嬢が泊まることになったので、現在、大迷惑を掛けている。後日、お詫びの品を贈らないといけない。


「オット様、申し訳ありません。私の不注意で秘密協定が露見しました。もっともクレール家がすでにその情報を掴んでいて、裏どりのために私を引っ掛けたようです」


「さすがはクレール家ですな。遊牧民の中枢部に間諜かんちょうを潜り込ませるとは」


「ですので、明日は確認と謝罪をすることになります。嘘を言っても無意味ですので、すべてを話して、後は国王陛下の沙汰を待つしかございません」


「ご両親の部屋のベッドを取り替えるとかは良いですから。私はアメリーの部屋で一緒に寝ますから」


「あのう、御前での報告をオット様と打ち合わせをしないといけないだけで、本当にアメリーと一緒のお部屋で寝られれば全然問題ないので……」


「私のお部屋は狭いですよ」


「私はこれでも実戦経験者です。テントに敷物を敷いただけのところで寝ていたのですから」


「アメリーがベッドで私が床でも問題ないのですよ」


「クレール家のご令嬢、それはさすがに、私どもが勘弁してほしいです」と豪快にオットさんが笑った。周囲の人は相変わらず悲壮な表情だったけど。



「アメリー、ごめんなさいね、急に押し掛けて」


「いえ、祖父のことを考えて、我が家に泊まられるわけですから」


「アメリーのお父上にも言っておいたけど、絶対に祖父様おじいさまから目を離さないでね。出来れば私がずっと見張っていたいくらいなの」


「マリア、祖父は武人ですから、約束は守ります」


「それが、怖いのです。秘密協定を結んだあの日、オット様が何を誓われたかがです」


「マリア、それが祖父の生き様ですので、許してあげてください」


「祖父は、戦友と同じ場所で戦えることを、心から喜んでいました。出来ることなら、戦友が亡くなった地で死にたいと言って出陣しました」


 ダメだよ。それってフラグが立っているじゃないか。


「アメリー、私、オット様に今すぐ会います」


「祖父はすでに王宮に向かいました。命令の変更を私が伝えました」


 私は飛び起きて、「アメリー、私も王宮に参ります」


「ジョーダンさん、私に馬を」


「マリアお嬢様に対する命令の変更はございません」


「王宮には明日の朝八時でございます」


「ジョーダンさん、母上のご意向ですか?」


「そうでございます」


「ごめん、アメリー、あなたの祖父様おじいさまを守れませんでした。許してください」


 私は、堪えたのだけど、涙が止まらない。


 アメリーは、微笑んでいる。





 私は王宮、謁見の間で跪いている。国王陛下とハインリヒ王子が出座するのをじっと待っている。


 国王陛下が玉座に座った。ハインリヒ王子はその横に立っている。


「昨夜、オット男爵より報告を受けた」


「マリア・フォン・クレール、お前は遊牧民の族長になることを、国王陛下の承認なく受けたのは誠か!」


「その通りでございます」


「申し開きはあるか?」


「ございません」


「国王陛下の御心のままに」


「昨夜のオットといいお前といい、どちらも殊勝な心がけである」


「オット男爵には、終身辺境で国境線を警備する任務を与えた。先ほど、騎馬隊千騎を率いさせて出陣させた」


 良かった。オットさんは殺されずにすんだ。


「マリア・フォン・クレール、その方は……」


 私は死罪だろうか?


「先のクーデター騒ぎの功を勘案して、営倉での生活三十日、食事はパン、水およびお湯そして塩のみ。またハインリヒ王子との婚約破棄を画策する行為を禁ずる。以上」


 私に精神的に死ねって言ってるわけね。何だよ! 婚約破棄を画策する行為を禁ずるって、私に物語を書くなって言っているのと同じだよ。これからも、私は頑張って婚約破棄を画策するからね!



 国軍の営倉に私は入れられた。筆記用具がほしいとハインリヒ王子にお願いしたら、思い切り頭をはたかれた。女に手をあげるDV男の妻には絶対ならない。なるくらいなら断頭台に上がる方がマシだよ。


 最悪だ。三十日間もペンが持てないなんて。マジで私を精神的に殺害する気だよ。どうにかしないとダメだ。

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