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015 悪役令嬢マリア、王子に詰問される

「さて、沈黙で応えたマリア、お前、シャルロッテに脅されているようだな」


「ハインリヒ王子様、急に何でしょうか?」


 皆んな、私を注目しないでちょうだい。


「俺は、あの化け物からライバルと言われた男だぞ。お前、遊牧民との間で秘密協定を結んだだろう」


 私はアメリーの顔を思わず見てしまった。アメリーは盛んに首を横に振っている。


「ええっと、それはそのですね。和平交渉ですから、細かい取り決めがあるかもですが、それが王国に害をなすことはないわけで……」


「マリア、お前、本当に貴族の娘か?」


「はっ、えっ」


「私は、ちょっと鎌をかけただけなのだが……、そうか秘密協定があるのか。それをシャルロッテは知っているのか。納得できた」


「マリア・フォン・クレール、国軍参謀本部本部長として命令する、明日の朝八時に王宮に来るように。またアメリー、お前の祖父のオット男爵も王宮に来るように伝えろ。これは命令だ」


「はい、ハインリヒ王子、そのご命令オットに伝えます」


「マリア、お前は……」


「承知しました……」


 ハインリヒ王子たちは部室を出て行った。



 ハインリヒ王子に引っ掛けられた。やられた! アメリーを見ると真っ青な顔になっている。


「アメリー、何があっても、私はあなたの祖父様おじいさまは守るから心配しないで」


「マリア、逆ですわ。祖父が絶対にマリアを守ります。安心してくださいませ」アメリーの目から大粒の涙が幾つも溢れている。


「アメリー、心配ないって、ハインリヒ王子は英明な方だから」


「そうよね、グラント……」



 もしかしてこれって三角関係になっているのかな。ハインリヒ王子とグラントの間で揺れ動くヒロイン、アメリーと脇役の悪役令嬢の私って感じがするよ。


 あの時かな、拉致されて恐怖に襲われていたアメリーを颯爽と助けたグラント、吊り橋効果ってやつかもしれないなあ。ハインリヒ王子も好きだし、グラントもどちらも好きなアメリーなのだろうか? それに苛立っているハインリヒ王子なのかもしれない。物語としては面白くなってきたあ。


 でもだ。でもでもだ。シャルロッテは人質だから、処刑は出来ないよね。第一、具体的には何も知らなかったで通せるよね。私は当事者だから無理だ。明日、遊牧の民の族長になったことが発覚して、私は断頭台に上ることになる。


 私が、アメリーの祖父様おじいさまがいないところで決まったと言えば、絶対アメリーの祖父様は私がいないところで、自分の責任で決めたって言い張るに違いない。


 陰腹を切るかもしれない。止めないとダメだ。


「アメリー、私、今日はあなたの家で泊まるからね」


「マリア、突然何を言い出すの?」


「アメリーの祖父様に亡くなれたら嫌だから。お互い嘘は絶対に言わないって誓ってもらわないとダメだから。一人で責任を取ろうと言うのは私は絶対に許しません。私たちで決めたことだから」


「マリア、国王陛下の前で二人とも正直に話すと言う誓いをするために、アメリーの家に泊まるわけだね」


「当然です。このマリア・フォン・クレールの名に掛けて嘘、偽りなく話します。一人で良い格好をしようとするオットさんにも誓ってもらいます」


 申し訳ない。私の迂闊うかつさゆえオットさんを巻き込んでしまって。本当に申し訳ない……。



「ハインリヒ王子、マリアが今日、アメリーの家に泊まるそうです」


「はっ、えっ、何、言っているのグラント!」


 グラントが盗聴器をポケットから取り出した。



「ひどい、私にも黙っているなんて」アメリーが真っ赤な顔になって怒っている。


「ごめん、アメリーも当事者扱いだったので、話せなかったんだ。本当にごめん」


「もう、知らないから、グラントのことなんて!」


 二人でじゃれあってくれ。とりあえず、私はオットさんに私の迂闊うかつさを謝らないといけない。


 グラントが頭をかいていた。アメリーは可愛く膨れっつらをしていた。


 私の後ろで密かに「クックック」って忍び笑いが聞こえた。ジョーダンさんも知っていたのか? あるいはハインリヒ王子にこの情報を流したのはクレール家!


 やはりお母様を敵に回してはいけないと思う。




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