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悪役令嬢の私との婚約を、王子が破棄しないと私は断頭台に直行なのよ  作者: 田中 まもる
第三章 悪役令嬢マリア、シャルロッテと対決する
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012 悪役令嬢マリア、アメリーとグラントの様子が気なる

 グラントが辺境から戻って来た。シャルロッテがお見舞いに来て、新作の物語を読みたかったのに、グラントが余計なことを言うから、持って来てくれなかったと、文句を言ったら、アメリーに怒られた。


「グラントはマリアの体のことを気遣ってそのように言ったのに、マリアが文句をおっしゃるのが、私には理解できません。それに文句の前にグラントを褒めるべきかと思います。祖父様おじいさまはグラントの進言する作戦は素晴らしいと、毎日のようにおっしゃています」


「アメリー、アメリー良いって、アメリーが怒ってしまうと僕の言うことがなくなるし……」


「あっ、グラントごめんなさい。私つい……」


 何だろうこのとっても甘酸っぱい雰囲気は。




「さすがは、砲台のマリアだ。西門、北門、南門の王弟派貴族を一撃で撃破だ」


 こっちは俺様全開で絶好調だよ。ハインリヒ王子、ウザイ。


「ハインリヒ王子、今は馬上の舞姫がマリアの二つ名です」とハルトムートが口を挟んだ。


「マリア、お前は遊牧の民に生まれた方が自由で良かったのではないか?」


「約束ですから、遊牧の民が集う街? に行ってその生活をよく観察したいと思います。シャルロッテ様からも、私は観察力が足りないと言っておられました」


「シャルロッテか、次はどんな手を打ってくるのか……」


「シャルロッテ様はハインリヒ王子のことをライバルだとおっしゃっていました」


「ふん、過分な褒め言葉だよ。天才に褒められたのだから」


「それと、ハインリヒ王子が、シャルロッテ様を化け物と呼んでいることもご存知でした」


「首筋が寒くなる」


「ハルトムート、この部屋にいる人間以外の魔力を探れ」


「承知しました」


「あそこの棚に 微弱ですが異質な魔力が出ております」


「マリア、その棚に何かないか探せ」


 私は王子の従者ではないのだけどねえ。


「はーい」


「マリア、返事は短くはいだ」


 私は小学生か。私はハルトムートが指さした棚を探る。とくに変わったものがあった! 小さな魔石が壁に付けられていた。この魔石はクレール家でも使用している盗聴器だ。いつ付けられたのか? この棚に書籍、参考資料を並べた時には絶対になかった。


「盗聴器がありました。ハインリヒ王子」


「私がシャルロッテを化け物と呼んだのはここだけだ。ここにいる者全員、信頼できる者しかおらぬ。シャルロッテ、お前、私たちを甘く見過ぎだぞ」


「マリア、その盗聴器を叩き壊せ!」


「はい」


「けっこう」


 何がけっこうだよ。私は自分の神聖な部室を汚されて怒っているのだ。私は盗聴器を握りつぶした。グチャ。ハルトムートが、「握力はいくつなんだよ」ってつぶやいた。


「シャルロッテ様に抗議して来ます。ここは部員以外立ち入り禁止ですから」


「そうか、私たちも部員と言うことだな」


「ううう……」


「部長の承認が下りたようだ。今日は愉快だ。だが、マリア、その盗聴器をシャルロッテがこの部屋に仕掛けた証拠はないぞ」


「うぐぐぐう……」


「お前の屋敷にシャルロッテが訪問したらしいが、屋敷の方は大丈夫なのか?」


「屋敷に戻り次第調べます。クレール家の名誉にかけて!」


「我々は文芸部員だ。良いか辺境の地で戦った武勇伝を皆で書こうではないか? 盛っても良いぞ」


 機嫌良くハインリヒ王子たちは部室を出て行ったけど、私の腹の虫は収まらない。こんなことをしなくても、シャルロッテになら隠し事なく話をしたのに。心から尊敬していたのに……。


「マリア、涙が」アメリーが自分のハンカチで私の涙を拭ってくれた。


「アメリー、ありがとう」


「マリア、うちにもシャルロッテ様から贈り物が届いた。凱旋がいせん祝いだと言ってね」


「マリア、私の家にもです!」


「その贈り物が陶器だったら割って調べた方が良い。クレール家では陶器の中に盗聴器を仕込みます」


 私は口の中にいっぱいの苦味を感じながら、部室を出た。クレール家の秘術を使って、出入り口、部屋の中にも誰かが入ればすぐにわかるようにした。




「ジョーダンさん、うちに盗聴器が仕掛けられた可能性があります。調べてください」


「四つほど回収して、一つはわざと仕掛けられたままにしてあります」


「いつですか? それに気付いたのは」


「シャルロッテ様がお見舞いに来られた日に見つけました」


「なぜ、私に言わなかったのですか?」


「シャルロッテ様はマリアお嬢様のご友人ですから、知らせない方が良いとのイライザ様のご判断でございます」


 私が知れば、証拠もなくシャルロッテの屋敷に突撃するのを恐れたのだろう。


「そう、手数をかけさせてごめんなさい」


「それにしても、諜報の分野でもそれなりの実績を積んできた、クレール家も甘く見られたようです」


 ジョーダンさんが本気で怒っている。母上はさらに怒っているだろう。シャルロッテ様、何を考えていらっしゃるの?


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