chapterⅩⅤ identity -正体- Ⅳ
正也の正体が明らかになる お話です。
「洗濯物、こっちで良いかな……それと帰る前に……良かったら――
木間君の親御さんの連絡先、教えてもらっていい?
家帰って息子がこんな状態だって知ったら すごく驚くと思うし
今の状況 先に連絡しておいて、木間君の声も聞いた方が
安心すると思うから……親御さんは携帯持ってる?
……持ってても電話出てくれるかな」
「色々と本当にありがとう……母さんは携帯持ってるし、出ると
思うよ……すまないな、そこまで気に掛けてくれて――連絡先は……」
「じゃあ、かけるね」
それから、雷音は正也から伝えられた番号に電話をかける――
「……もしもし、夜分に いきなりお電話して失礼します、
私、正也君と同じ学校の空原という者で――
え? あっ……はい、そうです、その頃からお世話になって
ます……! それで正也君の事で お伝えしたい事があって……」
それから、雷音は正也の今の状況を正也の母に伝える――
「本人に代わりますね、はい、木間君。
話終わったら切って大丈夫だから。その間に洗濯物干すね」
「……ありがとう……うん、母さん? ごめん、俺――
ううん、母さんが責任感じる必要ないよ、
うん……母さんが帰る頃には眠ってると思うけど――
空原さんのおかげで かなり楽になったから、
そんな心配しないで……え? ……ああうん、ちゃんと、
あの時の事――って!? 違うって! 空原さんは……
今日たまたま帰り道で……! とっ……とにかく……!
心配しすぎないで! 普通に帰ってきて……!」
そして正也は母との電話を終える――
「ありがとう、電話貸してくれて……洗濯物も」
「ううん、木間君のお母さん、すごく良いお母さんだね、
木間君の事すごく心配してたし、それに……
びっくりした、木間君のお母さん、私の事覚えてるみたいで」
「……母さんも、気に掛けてくれてたから……卒園前の事……」
「あっ……木間君のお母さんにも迷惑かけちゃってたもんね……」
「ううん、迷惑なんてかけてないよ……
ただ心配してくれてたんだ、あの時あのまま卒園して
それっきりになってた事……あっ母さんから よくお礼言って
おくようにって……本当にありがとう、空原さんのおかげで
本当に良くなったし、母さんも安心してくれたよ」
「私も すごくお礼言ってもらえたし、木間君からも、木間君の
お母さんからも感謝の気持ち、ばっちり伝わってるから大丈夫だよ。
後、帰る前に伝える事は……水分補給も すごく大事なんだけど……
スポーツドリンク系は結構 糖質系も入ってて、あまりこれだけだと
糖分取り過ぎて心配だから、そればっかりにならないように
この塩タブレットと水も使ってね。計算したら、これ1個に
水はこれ位がいいみたい……あっその事は これにも書いてるから
安心して」
「えっ……これって……」
そして雷音は数枚の紙を正也に見せる。
「今日の木間君の様子とか病気の事、木間君 直接色々伝えるの大変だと
思ったし……木間君のお母さんにも、色々書いておいた事は伝えて
おいたから」
「診察の時の事とか、体温に呼吸数に脈拍……発作の時の事も……
俺が寝込んでる間も……色々診て記録してくれてたんだ……
本当に今日は……俺の事で時間取らせちゃったな」
「そんな、気にしないで……! ……実はね 最近私、色々あって
……何に関しても、あまり身が入らないっていうか……
そんな、感じだったから……家に帰って 勉強とか、好きな事とか
しようとしても、上手く集中できないっていうか……それで……
そういう状態だし、家にいても大した事できなかったなぁって
思うから、なんていうか…こうして木間君と一緒にいた時間、
木間君の役に立ったなら、家でぼーっとしてるより有意義だった
と思うし! 将来的にも役に立ったと思うし……!
だから本当に気にしないで……ね?」
「そっか……ありがとう、そう言ってくれて……空原さんも
色々大変だろうし、多分 言いにくい事も多いだろうから……
変に詮索はしないけど、もし俺で良かったら……俺じゃ全然
役には立たないと思うけど、話聞くくらいはできると思うから
……力になれそうな事があったら、いつでも言って」
「うん……ありがとう」
そう言って雷音は微笑んだ。
それから――雷音は玄関で靴を履く。
「今日は――本当にありがとう……
いくら言っても――言い足りないよ」
「気にしないで……じゃあちゃんと栄養取って休むように!
布団の中で勉強しないでよ? 木間君ならやりかねないし……
治るものも治らないからね? 分かった??」
「はは……そこまで言われちゃ敵わないな……」
正也は苦笑いした――
「じゃあお大事に」
「ありがとう」
そうして、正也は玄関で雷音を見送る――雷音が出て行き、
家の鍵を閉めた後、正也は寝室に戻り 横になろうとする……
だが、気掛かりな事が1つ――
「……もうこんな時間……いくら家が近いからって――
大丈夫かな、空原さん……」
家が近いとはいえ、人通りの少ない道――それ故、
正也が倒れかけた時、近くにいたのは雷音1人だったのだ……。
「病人の俺が心配しても……仕方ない、か」
正也の体は、高熱もあり――立っているのも、やっとだった。
「いや……待てよ――」
そんな時……ある1つの考えが、彼の頭をよぎる――
「あの……姿なら……!」
そう思い立った正也は、鞄の中から1枚のコインを取り出した――
B.C.と刻まれた、1枚のコイン……正也はそれを思いきり投げる――
その瞬間、正也は光に包まれる――そして、現れたのは
雷音も何度も接した事のある、1人のRPGキャラだった……
「これなら――体も軽いしなっ」
それは、ただの自己満足だった……正也が“やろうとした事”も
客観的に見ると、犯罪行為の一歩手前である――
この魔法のゲームをプレイする為の変身用のコインは
ゲームの世界と繋がっている現実世界に出てきても遊べるように
創造者が設定してはいたが、犯罪に悪用されない為、そのような
感情が感知されたら、自動的に変身が解除される仕組みがある……
しかし、この時の正也は――雷音の帰りを見届ける事以外は
頭になく……犯罪と認識されるような気持ちも全くなかった……
その為、変身する事ができたのだった……
「久しぶり……だな……この姿――それにしても、すっげー
楽じゃん♪ 家で1時間この姿で居ても――って
それはダメだよな……いくら楽だからって こんな事で
魔法に頼るのは……確か犯罪利用的な感情がなきゃ
現実世界でも、この姿でいられるんだよな……あまり
良くねぇとは思うけど……ま……無事に帰れるか
見届けるってだけだし! 別に良いよな♪」
“彼”は上機嫌で急いで雷音を追い掛ける――
「この姿なら……一般人にも見えねぇし――それに!
俺の“この目”使ったら遠くても……ん? あれ……??」
そして変身した正也は、「その体」での普段通り、遠くから
額の目を使って雷音を見守ろうとする……しかし……
「……これ、RPGキャラ以外が対象だとダメっぽいな……
当たり前っちゃー当たり前か……仕方ねー……
少し近付くか……」
そう思いながら――距離を取りつつ、雷音の背後に近付く……
「……? 何だろう……? 誰もいないはず、なのに……
誰かいる……ような……私霊感は……そこまでないと
思うのになぁ……気のせいかな……なんとなく、胸騒ぎも
する…………怖いけど……なんか今、振り向かないと
後悔しそうな……うん、何かあったら……ダッシュ!
ダッシュしたら大丈夫!」
何かの気配を感じた雷音は おそるおそる振り返る――
「……!?」
そして2人は――目が合った……
雷音はその瞬間、体の全ての動きが止まる……
そこに自分が知る、RPGキャラがいたのだから――
驚き、その姿を――ただ見つめていた……
そんな雷音の様子を見て、“彼”は焦っていた――
「……俺が見えてる……!?
まさか……空原さんもバトキャラの――?」
そう考えた、瞬間――
「待って!! ……もしかして本当に……!?」
雷音は息を飲む――
「……竜……なの……!?」
「!? ……彼女は、まさか――!?」
それは……何度も考えた可能性――雰囲気が似ていた、
もしかしたら、現実でも会っているのかもしれないと……
でも、正也はその可能性を否定していた――
それだけ、確信があった……
「……何故だ……? 俺が……最初から勘違い……??
だって……アイツは……」
「――それなりに裕福な家に生まれた、
たった1人の子供――……跡取り娘なの……」
確かに、その事実を聞いていた……
矛盾している……桃には存在しないはずなのに……
雷音には、確実に存在していたものがある……
そう思い込んでいたから、正也は可能性を打ち消していた――
一方、雷音は――即座にコインを取り出し
竜の目の前で、RPG化した――
その姿は――告白を拒まれて以来、会う事のなかった
召喚師の少女・“桃”……
「消えないで……消えないで……!!
今は……今だけで良いから……!!」
「……桃っ……」
驚く竜に、桃は抱き付く――
「分かんないよ……どうすれば良いか分かんないっ……決めたのに……
もう……この力は使わないって決めたのに……!! 竜の事
大好きだから……忘れなきゃいけないって思ってたのに……!!」
「――桃……っ……!!」
竜は、桃の体を強く抱き締め返す――……
初めは触れても良いかどうかすら、分からなかった……
でも、会いたかった……触れたかった……再会する事を祈っていた……
だから、止める事はできなかった……
「……夢じゃない……よね……? 本物の竜だよね……?」
「ああ――それ以外に……何があるんだよ?」
「……創造者に……幻覚見せられたのかな、とか……
私未練たらたらだったし……」
「――信じるかどうかは桃の自由だけどよ、俺は俺だから……
だから――再会できて本当に嬉しいんだ」
「そう、だよね……竜なんだよ、ね――って……あれ?
だったら なんで――ここにいるの……? ……戦闘中で ここに
たまたま出てきたって感じでも――なかった、よね??」
「……えっ? それは……そのっ……えっと――」
それは、桃の頭に ふと浮かんだ疑問――
それを指摘された竜は、かなり微妙な表情を浮かべる……
だが彼は意を決し、一呼吸置く……
「……それは……その――
空原さんが――心配だった……から……」
そうして竜は――頬を真っ赤に染める。
「……え? ……あれ?? なんでっ……本名知って……??
心配……?? ……って!? まっ……まさか……!?」
「ちょっと来てくれっ!!」
「……嘘……!? ――本当にっ!?」
そして竜は……桃の手を引いて、来た道を引き返す――
竜は、正也の家の中に桃を連れて行き――
玄関で一気に、RPG化を解いたのだった……
「こっ……木間君っ……!? うっ……嘘っ……!?」
桃の目の前にいる、1人の少年――
それは、つい先程まで――“雷音”としての自分が、看病していた
少年・“木間正也”……そんな、驚きを隠せない桃の前で――
「……!? ――きゃああぁぁっっ!!?」
――いきなり、正也は……桃の上に覆い被さるように――倒れ込んだ。
そして、正也は――桃を押し倒すような体勢に……
体位を変える事なく、そのままの状態で――
真剣な、表情で桃を見つめる……
「……これが……俺の――正体……なんだっ……!!
『竜』は、もう一人の俺――
『優等生』でいる必要のない時の俺、なんだ……!!」
自由の効かない現実世界の姿――
それでも、真実を伝えようと必死だった――
「……っ……!? ごっ……ごめんっ!!」
必死だった所為で 自分の体勢に気を払う事ができなかった
正也は……我に返ると、急いで桃を解放した――
「……えっと……その……ごめん……なさい……
木間君、その私……びっくりして……
上手く……言葉が……なんて言って良いか、分からなくて……
とっ……とととととととにかく!! 私は大丈夫だから!!
走って帰るから、心配しないで!! 木間君はすぐ布団に
戻って寝て!? とにかくまずは体! 体治して、ね!?
じゃ、じゃあ……お大事に……!」
そう言って、桃は駆け出した――
「あっ……!! ……っ……!!」
立ち上がろうとすると、強力な眩暈が――正也を襲う……
衰弱しきっていた正也の体は、生憎 言う事を聞いてくれなかった――
「……何やってるんだ、俺……っ……」
どうにか布団に入った後、“彼女”の事をただ、想う――
もう一度、出会えた……
忘れられなかった、1人の少女と――再会できた……
現実世界で出会っていた……
「……桃……――空原……さん――」
正也は、薄れゆく意識の中で……
『桃』を――『雷音』を……ただ、想い続けていた――
何らかの ご縁でBATTLE CHARACTERSの世界やキャラクターに触れてくださった方、誠に ありがとうございました! 今回のお話でブログ更新分に追いついてしまったので、また続きがたまった頃、おそらく2026年秋頃に投稿再開予定です。 続きが気になってくださった方は また来年お会いできたら幸いです。




