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chapterⅡ lovers -恋人- Ⅱ

久しぶりの投稿です。色んな子達と再会したり、新しい出会いがあったり。またこちらでの投稿も少しずつ進めていけたらなぁと思います。

「ここは……“月の泉”――この辺は店になってるけど、

 向こうには泉があって――色んなモンスターもいるんだよ。

 少し歩いたら、ショップに着くからねっ☆」

このフィールドはクエストにも使うフィールドだが、

広場のような場所でもあった。そして、2人は進んでゆく――


「そういえば、桃ちゃん? ……この世界の僧侶系って――

 他にも特徴みたいなのある? ほら、さっき――

 攻撃系の技、少ないって言ってたけど――」

椿はまだ、この世界に関してよく分からなかった――


「……そーだね、確か他人用の回復魔法に消費する魔力が――

 他のRPGキャラより圧倒的に少ない事、かな??」

「へぇ……あっ僧侶系以外でも――回復魔法使えるんだ」

「うんっ! でも僧侶系以外のRPGキャラの場合は――

 僧侶系に比べて回復量も少ないし……特に他人に対しては――

 少し回復させるのにも、すごく魔力いるの」

「そうなんだ……あっそうだ!

 ――桃ちゃんの知り合いに僧侶系の人っている?」

話の途中、椿は1人の少年の事を思い出した――

「え? あっうんっ! いるよっ!! 男の子で名前は――」


「お~い! そこのメガネっ子ぉ~!! お札今なら2割引だぜっ☆」

桃の言葉の途中、大声が聞こえる――

そこには、見覚えのある少年の姿――

「あっ……! 貴方は……!」

それは――昨日桃が戦っていたアラビア風の姿の少年。

地面に布を敷き、座ってアイテムを売っていた。

そして――なんとなく嫌な予感もした……


「なっ……なんでアンタがここにいるのよっ!?

 スケベ変態アラビア男ぉっ!

 今日こそ白黒はっきりつけるわよ! さっさと準備しなさいよ!!」

「お前も一緒かよ……やり直すにしても 今日は無理だぜ?

 この通りバイトで忙しいからな。だから客以外は帰った帰った。

 それに俺が今用あるのは――メガネっ子の方だし」 

そう言って、竜は椿を見つめる……  


「え……??」

「昨日は――大丈夫だったか? 時間切れじゃなかったら

 俺も助太刀しようと思ってたんだけど……すごい爆発あっただろ?」

「え……? だっ……大丈夫でした! わざわざ心配してくださって

 ありがとうございますっ……! 知り合いでもないのに

 心配してくださるなんて――お優しいんですね」

竜の予想外の発言に驚きつつも

心配してくれた事が嬉しく、椿に笑みが零れる。


「そんなに感謝しなくても良いぜ? ここじゃ見ない顔だし、

 初心者っぽかったし。それに……とにかく無事で何よりだ……

 まぁコイツは放ってても平気だろうけど」

そう言って竜は――ちらりと桃の方を見る。

「……殺される準備はできてますって?」

「……どんな聞き間違いだよ……ったく……

 それより、昨日はバタバタしてちゃんと挨拶できなかったな。

 俺の名は竜。職業は魔導師! よろしくなっ☆」

そう言って、竜は椿に微笑みかけた。


「あっ……こちらこそ改めまして、こんにちは。巫女の椿です。

 えっと――竜さん? バイトって――私にもできるんですか?」 

戦わずして収入が得られるチャンスがある様子に、椿は興味を持った――

「え? ――ああ、これはランダムイベントってやつだな。

 運が良けりゃ、ショップに来た時頼まれるってやつ。

 まぁ俺も実際やるのは初めてだけどよ」

「へぇ……そうなんですか~……

 教えてくださり、ありがとうございました」

そうして椿は軽く、一礼する――

「……やっぱり、礼儀正しいんだな、メガネっ子は――」


「……っていうか、アンタはいつまで椿ちゃんの事

 『メガネっ子』って呼ぶのよ?」

ふと桃は、その事に突っ込みを入れる……

「え? その方が呼び易いから」 

「どこが!?」 

「……そんなもんなんだ……」

竜の「メガネっ子」の方が呼び易いという発言には、

2人共イマイチ納得いかなかった……。

そんな2人の様子を見て――竜は桃に一言加える。

「それに……お前、名前呼んだ時――怒ったじゃねぇか。

 あれから女子ってそんなもんかなって思ってるし」 

「……! それは……」

「……?? そういえばどうして――」

竜と桃は一度も互いの事を名前で呼び合っていない……

ふと、椿はその事に気が付いた……

 

「ん~……メガネっ子は名前呼び捨ての方が良いか?」

竜は椿の方へと顔の向きを変える。

「え? あっ……竜さんのお好きな方で……」

「だったら呼びやすい方でっ!

 これからもよろしくな、メガネっ子!」

「えっ……はい! よろしくお願いします!!」


「椿ちゃん! これ以上こんな奴相手にしなくていいから!

 どーせ椿ちゃん騙して押し売り販売する気でしょ?」 

そんな中、会話する2人の間に桃が割って入る。

「てめぇは黙ってろ……俺はそーゆーアンフェアな事はしねぇよ。

 ところでさ、メガネっ子!

 持ち歩いてる札あったら、見せてくれねぇか?」

「あっ……はい、これ――」

椿は懐から、先程ゾンビに貼り付けたお札を取り出した。

どうやら――数枚残っているようだった。


「やっぱビンゴ♪ 今セール中の東洋魔術の札だな。

 これ使い捨てだから元々安いけど、今ならもっとお買い得だぜ☆」

「う~んと……少し買おっかな……」 

「毎度ぉ~☆」

そんな風に椿と竜が話していると――


「あんた……いつならバトルできるのよ!?」 

またも桃が割り込む――

「ああ、そーだなー……3日後なら

 この時間クエスト行ってっけど――」

「じゃあ3日後、この時間、この場所で勝負しなさいっ!!」

桃は宣戦布告した――

「……ったく、しゃーねーな……わかったよ……」

竜は面倒臭そうに答えた。と、そこに――1人の少年が近付いた。


「こんにちは~竜君、桃さん、そして昨日お会いした、巫女の方――」

それは昨日椿が出会った僧侶の少年だった。

「よっ、碧♪」 

「碧君っ!」 

「あっ……あの時の……!」

椿は思いがけない再会に驚いた。


「あれ? 椿ちゃん碧君の事知って――……?」

「ごめん、言い忘れてた……!

 そういえば――お名前“アオイ”さん……?」

昨日は、槍使いの少年の衝撃が大きく、桃にはすっかり話し忘れて

いたが――この少年の名前は、どうやら「アオイ」というらしい。


「ああ、すみません~昨日は名乗り忘れてましたね……

 僕の名は“碧”……“碧眼”の“碧”で“あおい”です~」

「あっ……私は椿、と申します――

 昨日は本当にありがとうございました!!」

椿は深々とお辞儀した。

「いえいえ、お気になさらないで下さい~

 では今日も、皆様に神のご加護がありますように――」

そう言って、その場の3人の最大体力のレベルを上げてくれた――


「いつもサンキューな♪ これお礼!」 

竜は碧に魔力回復アイテムを渡す――

「あのっ……私も何かっ……」

椿もそうは言ったものの――持ち合わせがなかった。

「いいですよ、お気持ちだけで僕は十分幸せですから」

そう言って、碧は椿に優しく微笑みかける――その笑顔は、まるで天使

……少年なのに、とても可愛らしい笑顔に、椿は思わず見とれてしまった。


「じゃあ私からはコレ☆」 

桃も竜と全く同じアイテムを渡した。

「ありがとうございます~」 

「俺の真似かよ?」 

そこで竜が口を挟む。

「うるさいわねっ! アンタの真似した訳じゃないに決まってる

 でしょ!? これが1番碧君には良いんだからぁっ!!」

「お2人共、相変わらず仲がよろしいんですね~」

「そーか?」

「どこが!?」

あまり気にする素振りがない竜に対し、桃は否定するような口振りだった。 

「ふふっ……では僕は、これで失礼しますね。

 今日もお話してくださってありがとうございました~」

そして碧は、昨日のように、あっという間に去って行った――


「お礼……し損ねちゃったな……」 

椿の心に、その事実が引っかかる……

やはり、こちらが一方的に助けてもらうのは、少し悪い気がした――

「気にすんなよ。碧はこの時間は大体毎日、色々なフィールド

 回ってっから時間合えば、会えるんじゃねぇかな?

 会ったら、絶対ぇ今日と同じ事してくれるぜ」

「碧君も、よくやるわよね……どんな人でも体力あげてくれるもの……」

「メガネっ子は感謝してるだけでも十分だ……碧に体力もらっても――

 感謝しやがらねぇ奴らは、山程いる……それでも、碧は――」

こんなに他人の為に頑張るのは、何か訳でもあるのだろう……

そう思った椿は――お札と共に、魔力回復アイテムも余分に買っておいた。

それはもちろん、次に碧に会った時に、渡そうと思ったから――

そうしているうちに、3人に近付く新たな1つの影……


「あれ? もしかして、桃ちゃん……?」

綺麗で高い、女性の声――振り向くと

そこには、栗色の髪の魔法使いが立っていた。

「お久しぶりですっ! リアさんっ……!!」

「えっ……? 桃ちゃんの知り合い……?

 じゃあ、もしかしてこの方が……?」

椿は以前、雷音がこの世界を知ったのは

「先輩」のおかげだと、聞いていた――


「うんっ! 紹介するねっ☆ 私の中学時代の部活の先輩の――リアさん。

 職業は魔法使いで、炎系の魔法が得意なの♪ あっ……リアさんっ!

 高校の友達の椿ちゃん。職業は巫女ですっ!」

「椿ちゃん、ね☆ よろしく♪」

「あっ……こちらこそ、よろしくお願いします!」 

椿は軽く一礼した。


「今日はお買い物ですか?」

「ううん、今お金なくて――

 実は今日はここで、彼氏と待ち合わせなのっ!」

「……なるほど、あっ……今少し時間ありますか?」

桃はふと――リアの顔色を伺う。

「うんっ! 少し早く来たから、大丈夫よ☆」

「じゃあ良かったら、椿ちゃんに――

 彼氏さんとの事、教えてあげてくれませんか?」

「えっ……?」 

椿は一瞬戸惑った――

初対面の相手に、いきなりそのような事を聞いても良いのか、と。


「もっちろん♪ むしろ聞いて聞いて☆

 じゃあもしかして……椿ちゃんも――ゲーム内恋愛、してるの?」

「えっ……あのその……えっと――」

その言葉を聞いて、蓮の事を思い出す……

そして椿の頬が赤らんだ――

「ふふっ☆ そーなんだ♪ じゃあ参考までに――

 私の話、聞いてくれるかな?」

「えっ……良いんですか?」

「うんっ! じゃあ、ゆっくり話せるトコ行こっか☆

 あっ……でも、良かったかな? 3人で話してたみたいだけど……」

リアは竜の方に目をやる――


「そいつはただの変態です」 

桃はもう竜は眼中にはないといった様子だった。

「ちょっ……お前っ!! そうやって他のプレーヤーに

 俺の事説明するのやめろよ! あらぬ誤解を生むだろうが!! あれは

 事故って何度言ったら……メガネっ子は俺の事信じてくれるよな!?」

「え? えっと……はっ……はいっ……」

「事故」の事を詳しく知らない椿は――しどろもどろに答える。


「椿ちゃん! そいつの言う事なんか信じなくていいからね!」

「……相変わらず目の敵にしてんなぁ……仕方ねぇけどさ。

 じゃあまたな、メガネっ子♪ それと――3日後にな、被害妄想女」

「最後までムカつく言い方する奴ね」

「……名前はダメなんだろ? だったら、じゃあな~アホ毛女」

「なっ……アホ……!? ……っ……3日後見てなさいよ!?」

「へいへい」 

それから3人は――竜と別れ、すぐ近くの噴水の所に移動した。


「それにしても、桃ちゃんが……

 あんなに男の子と話してるの見るの初だったなぁ」

「……!! そんな事ないですっ! 他の男プレーヤーとも……」

「たとえば~?」 

リアは意地悪そうに桃の様子を伺う。


「え? あっ……え~っと……その……あっ……! 碧君っ!

 さっき会ったんですけど――リアさんも会えました?」

桃は慌てて、碧の名前を出す……

「ううん、入れ違ったみたいね~残念……相変わらずだった?」

「はい」

「碧君って可愛くて弟みたいだし、話しやすい子だよね。

 そういえば――碧君って、恋人とかいるのかな?

 いたら――すっごく優しくしてくれそうだよねっ」

「碧君、優しいですからね……でも、彼女となるとどうなんでしょうね?

 少なくとも特定の女の子と長くいる姿は見た事ない気がしますけど……」

3人は考える――碧は基本的に1人で行動している。

回復魔法を使う時に、誰かと少し話しているのを見かける程度だった。


「……そうね、それより! 椿ちゃん、此処に好きな人――いるんだよね?」

「あっ……はっ……はいっ……それであの……」 

「じゃあ話すね♪」

「はいっ……!! よろしくお願いします!!」 

それからリアは、昔を懐かしむように、語り出した……

「私が彼氏に会ったのは――クエスト中に死ぬ間際――だった。

 あの頃の私はまだゲームでも死んじゃうのが怖くて――殺られるっ!って

 思った瞬間にね、『誰か助けて~!!』……って大声で叫んじゃったの。

 そんな事言っても誰も助けてくれない……そう思ってたけど、つい、ね

 ……もうダメだ――そう思ってたらね、彼氏が――助けてくれたの☆」

「へぇ……それは素敵ですね……!!」

椿は、リアの話に真剣に聞き入っていた――


「しかも私を助けた後に――『経験値泥棒かもしれないが、お前が助けろ

 と言ったから、助けたまでだ――悪く思うなよ……立てるか?』って

 尻もちついてた私に――手を差し伸べて、くれたわ……ゲームとは

 思えない位ドキドキしちゃった☆ ……もう、運命だって思ったもの♪

 それで『またお会いできますか?』……って聞いちゃったの」

「それで――お付き合いが、始まったんですか?」

「……ううん、違うわ」 

興奮する椿に対し、リアは――落ち着いた口調で返した。


「……いきなりだったし、断られた……でも――諦めたくなかったの……

 この世界は――ただのゲームの世界だとは思えないし、後悔もしたく

 なかった。会う度に何度もアタックした……それで、彼もちゃんと

 本気だって分かってくれて――今では晴れて、彼氏彼女に☆」

「わぁっ……それは良かったですね!」

リアの楽しそうな声を聞き、ゲーム内恋愛を

楽しんでいる様子に――椿も嬉しそうだった。


「……この世界だから、一度会えた人にまた明日、会えるなんて――

 保証もないし、その人の“現実世界の顔”もあるからこそ、

 会うだけでも難しいかもしれない。でも今は……諦めないで

 良かったって思えるから――椿ちゃんも、頑張ってね!」

「はっ……はいっ!!」

自分と同じように、この世界で恋をしている人がいる事を知り、

心強く感じた。


「……ところで、椿ちゃんのお相手は、どんな人なの?」

「それっ……実は先輩も知ってる人なんですよっ!!」

今まで、聞き役に徹していた桃が、ふと楽しそうに口を開く――

「えっ!? 私も知ってる人なの~!? 誰誰? ねっねっ教えて~!!」

リアは興味津々の様子――


「『蓮』……さん……です……」 

椿は照れながら――想い人の名を口にした。

「れっ……蓮ってあの……最強のっ……!? 直接会った事あるのっ!?」

「椿ちゃん、蓮から魔力譲渡してもらった事もあるんです!

 初対面でっ!!」

「ちょっ……桃ちゃんっ!!」

「ええっ!? あの蓮がっ……!? すごいわ! 椿ちゃんっ!!

 あの人が魔力の譲渡なんて――絶対に考えられない! これは絶対イケ

 るわ! ガンガンアタックしちゃえ~☆ そして蓮をオトすのよ~!!」

やはり恋愛の話が絡むと、リアのテンションはヤバいくらいに高かった……。


「ああ、と・こ・ろ・で~……桃ちゃんは――実際どうなのぉ?

 さっきの子の事、はぐらかそうとしても、そうはいかないんだから♪」

「……! しつこいですよ、あの男は倒したいって思ってるだけですから」

「ふふっ……今はそーゆー風に思ってても、

 いつかは恋しちゃう、かもよ?」

「絶対にありえません!」 

悪意を込めた言い方ではあるが……少し照れたような

ムキになって否定する桃の姿を見て――椿はふと、碧の言葉を思い出す。

 

『竜君は桃さんと戦っている時が、1番楽しそうですから』

「……竜さんは――どう思ってるんだろ……??

 って言っても私まだ、竜さんの事全然知らないしなぁ……」

……と、椿が考えていると――


「待ったか? ……リア」 

低い男性の声が聞こえる――そこに現れたのは2m強の巨体、

スキンヘッド、上半身は裸……割れた腹筋、ものすご~い筋肉に、

細いたれ目の格闘家の男。正直ルックスはイマイチだ……。

「ジャックぅ~☆」

椿と桃、2人の目を気にせず、リアは彼――ジャックと呼ばれた男に

飛びついた。そのラブラブっぷりには、椿も桃も思わず赤面してしまう……


「こらっ……人前だろっ!!」 

ジャックは照れながらも――リアを突き放そうとはしなかった。

「じゃあ、2人共――クエストア~ンド恋愛、頑張ってね☆」

「はっ……はいっ……!!」 

そうして椿と桃はリア達と別れた――


「じゃあ……今日はそろそろ帰ろっか」 

椿は切り出す――

「あっ……ちょっと待って! 椿ちゃん経験値上がったから――

 セーブしないと」

「……セーブ……?」

この世界で初めて聞く単語に、椿は首を傾げる……


「もし体力が尽きて――死んじゃった時……セーブしてないと、

 レベルも0になっちゃうの。だから、そうならないように

 今のうちにセーブしないと」

「……どうやるの?」 

「手を前に出して……手の平を上にして――」

「……こう……? わっ……!」

桃の言われた通りにやると、小さな六角形のプレートが現れる――

「セーブしたいって、思って」

「うんっ……」 

そして、椿は意識を集中する――


「セーブ、カンリョウ……」

すると、そのプレートから

コンピューターのような電子音が聞こえた。

「うん、それでOK。セーブは常に忘れないで。

 あっ……戦闘中にはできないから注意してねっ!」

「うんっ! 分かったけど……あれ? 確か普通のゲームって……

 セーブはゲーム終了時に、いつもやる事じゃなかったっけ……?

 でないとデータ消えちゃう、みたいな感じだったはず……

 今までセーブの存在すら知らなかったけど……って事は私、

 あの魔女の子倒した時の経験値……無駄にしちゃってたの!?」

ゲームに関する知識は少ない椿だが、ふと疑問に思う――


「ん~とね、それは平気☆ バトキャラの場合は……

 RPG化を解く事はゲームの電源を切る事じゃないから……って

 言えば良いかな? RPG化を解く事=一時的にゲームを中断

 されてる状態っていうか……ほらゲーム中に電話に出なきゃ

 いけない時とか、一時停止でポーズかけれるでしょ? ゲームから

 離れても、ゲームの時間は止まってる……“ゲームの中の自分”の

 時間は止まってる……そう考えたら一番良いかもね☆」

「……なんとなく、分かったかも……じゃあとにかく

 セーブ忘れてても、死ななかったら問題ないって事?」

「そういう事だけど……いつ自分が“この世界”で死んじゃうか

 分かんないから……保険の為にも忘れちゃダメだからね?

 ――セーブ使わないと、やってきた事0になるんだからっ!

 ……なのに……あのバカは……」

「……? どうしたの?」 

「ん? なんでもないよ~☆」

そうして、その日は――幕を閉じた。


次の日、また次の日も、椿達は色々なフィールドを回って、

少しずつ経験値を増やしていった――

だが、お礼をしようと思っている碧には会う事のできないまま――

竜と桃、2人が決着をつける日を迎える事となったのだった……

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