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chapterⅩⅢ conflict -葛藤- Ⅰ

現実世界の蓮が 初めて蓮の姿に変身した時のお話です。

「……やっぱり……憎いのか!? ……憎いんだろ俺が……!!」

「――ううん、君の事を憎むつもりはないよ……目の事に関しては――

 まぁ、僕が勝手に飛び出したんだし? 自業自得だもん」

それは、数年前の“2人”――……

彼が片目を失明してから、しばらく後――


「嘘つけ……憎いから許さないんだろ!? あの時……飛び出して

 きたのに気付いて……止める事ができなかった俺が悪いんだ……!!

 俺はこれからは……責任取って……っ……新城家との事にも

 口出ししねぇ……それでも……それでも許してくれねぇのか!?」

「――っ――」

彼は、言葉に詰まる――それは、ずっと願ってきた事だった……

でも、こんな形ではない……何かが違う――間違っている……

許される為に認めてもらっても……彼は――


「俺は……自分の道理に従って……今ここで誓うから……

 許してくれ!! あ……」

「もう……もう……これ以上……謝るな!!」

片目を失った“彼”は声を上げる――

そして……一呼吸置いた後、こう言った――


「――僕に、考えがある……

 “準備”が整ったら、ちゃんと――

 “制裁”と、“許す条件”を与えるよ……

 だから、今此処で約束して……君はもう僕に……

 その件に関して、謝る事はやめて……

 謝っても、僕の気持ちは変わらない……

 ううん、逆に――謝り続けるなら、一生許さないから」

「……なん……だと……??」

「もう、君の気持ちは十分に分かったから――いいね?」




「……っ……はぁっ……はぁっ……」

過去を思い出しながら、戦い続ける1人の剣士――

“この”世界の中で、難易度の高いエリアを攻略した後、呟く――

「今更――別の方法なんて……分かるはずもねぇのに……

 何を迷ってるんだ……俺は……」

終わりが近付くだろう物語の中で……彼は、予期せぬ

エンディングを迎えてしまいそうな自分に苛立ちを隠せない……

美しい銀髪を振り乱しながら――

行き場のない想いを、ゲームの中のモンスターにぶつける……


1日1時間しか“存在”できない世界の中でも、時を重ね、“蓮”として

“存在”する中で――どれ程の戦いを繰り返してきたか――定かではない。

――体には、大量の返り血……自らの血も混ざる――

“この世界”でどれ程返り血を浴びたか――

そして自らも血を流したか――分かるはずも、ない――


「……分かってる……はずなのに……!!」

それは、この姿で戦う意味――……

彼は知っていた、気付いていた――どんな、結果が待っているか――

でも、こんな形でも、無様な姿でも――気持ちの強さを、証明したかった……

証明して、叶えたい思いがあった――だから、彼は戦っていた……

この世界でも、そして――現実世界でも……

弱い自分の心と戦い続けていた――


「――」

一方、この世界の創造者は――無言で“彼”を見つめていた……




「僕さぁ……最近、人の心読めちゃうようになったんだよねぇ……」

それは昔話――

先刻“蓮”が戦いながら、思い出していた現実世界の物語の続き――

1人の青年は、“彼”に突然切り出した……

「は……? んな事ある訳――」

「まぁ、信じないよね……ある意味君のおかげかもしれないけど」

「なんだと……?」

「――願ってしまったから……僕はあの時――

 君があんな事しちゃうまで気付けなくて……

 もっと早く気付いていたらって――心が読めてたらって、ね……

 そうしたらさ、神様が僕に力をくれちゃった訳。……すごいでしょ?

 しかも、それだけじゃなかったし……なんと☆

 僕が考えた世界まで実現しちゃったんだ♪」

「……いきなり何寝ぼけた事を……性質の悪い冗談か!?」

「――まぁ、仕方ないか……百文は一見に如かずだし――

 試しに発動してあげるよ☆」

「……!?」


それから、2人は光に包まれ――その姿も、場所も、変化していた……

「――ほ~らねっ♪」

「なっ……何がどうなってやがる!?

 なんだそのガキみてぇな声……って……!? なんだ!?

 俺の声も……!? ……ここは……どうして……!?

 つーかなんだ!? その姿は!?」

変わってしまった――その状況に彼はひどく困惑していた……

そして“彼”の目の前には、見た事のない小さな少年がいた――

「ああ、これは――僕のデザイン♪ この世界の、僕の使用キャラ!

 子供みたいなキャラになってみたくてね☆ ちなみに職業は槍使い♪

 あっ君の方は――」

そう言いながら、小さな少年は鏡を召喚する――


「!!?」

その中に、“彼”の姿が映る――……

「なっ……なんだこの格好は!? 銀髪!? しかも長すぎだろ!?」

「あはは☆ 想像以上にマッチしてる♪

 やっぱこのRPGキャラは君に良く合ってるよ!!」

「RPG……?? まさか……!?」

「そう☆ ――君と僕は今……ロープレのキャラになっちゃった訳!」

「なっ……!?」

「――これが、“僕”の魔法だよ……詳しいルールは後で説明すると

 して、先に――このゲームのクリア報酬を説明しておくよ」

小さな少年は、落ち着いた口調で続ける――


「1つ目は、君を許す事……

 2つ目は、僕が新城家と今後一切関係を持たない事」

「なっ……!? ちょっと待て!?

 1つ目はともかくっ……2つ目は……!?」

「だって、君の心からの望みでしょ? 僕が新城家との絆を断つ事は――」

「だとしても……おかしいだろ!?

 そんな……そっちには何の得にもならねぇのに!?」

「ん~……損とか得とかねぇ……このゲームを進めていってたら

 今の君が分かってない事も、分かってきてくれるだろうし――

 今はとりあえず、保留にしとくよ☆ まぁ、これは――手段の1つ

 ――とだけは言っておく……嫌になったら、別の方法考えてくれたら

 良いんだから、気楽に楽しめば良いと思うよ?

 ――所詮は、“ゲーム”の世界、なんだから――」


「……楽しめる訳ねぇだろ……新手の嫌がらせか?

 俺がRPGの類が大っ嫌いな事知ってて――」

「確かにね……君は音ゲーとか格ゲーとかの方が得意だから――

 そう思われても仕方ないよね……でも、この世界はむしろ――

 RPGっていうより、実際に体動かすから――

 あんまりRPGっぽくないよ? それに――元剣道部の君に

 有利なように、その剣士のRPGキャラにしたのは

 僕なりの優しさだって思うけど? 後、人と関わるのが煩わしいって

 君の為に、パーティーとかそーゆーの抜きでも遊べるから!

 それより――君に、早速プレゼントをあげるよ♪」

「……何……?」

「このゲームを考えた時から、ずっと考えてたんだ――

 君の、その姿の時の名前」

そうして、槍使いの少年は一呼吸置く――


「……『レン』って名前を、君にあげる」

そう言って、昂は微笑んだ――

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