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chapterⅩ falsehood -偽言- Ⅵ

蓮と昂が色々話すお話です。

「……」

そして――蓮は昂の部屋に入る。だが、そこに主の姿はない……

「嘘つき蓮、いらっしゃ~い☆」

そう言って――背後から、昂は笑顔で蓮に抱き付いた。


「……っ……!? てめぇ……!」

「嬉しいなぁ、まさか――

 蓮があんな事言い出すなんて♪ で、用件はぁ~?」

部屋の主・昂は意地悪そうな笑みを浮かべる……


「……てめぇには聞きてぇ事が色々ある」

「……返答するかしないか、

 本当の事を言うか言わないかは――僕の気分次第で☆」

「……あの侍はてめぇの差し金か?」

(いさむ)君? ……ああ、時間が合ったのは運の部分もあったけど

 どのエリアにいそうだとか、多少の情報は前からあげては

 おいたよ。いつか1対1で会って欲しいとは思ってたしね」

「何故そう思った?」

「……君達はよく似てるからさ、この世界を償いの場の一つとして

 選んだ事、そして、本当は――分かってるくせにね……今日の

 あの言葉は、君にも かなり思う事があったんじゃあないかな?」

「……っ……!!」

昂に指摘され、蓮は黙る――そして、諷に言われた言葉を思い返す。


「それはそうとして……諷君が ひかる君……

 まさか、ほたるちゃんの兄だとは思わなかったな」

「……てめぇも知らなったのか」

「――僕はなんでも知っている……訳ではない事、君も分かってる

 でしょ? 僕はあの時、ほたるちゃんと椿ちゃんの会話を聞いて

 椿ちゃんの心を勝手に覗いただけだからね。まぁあのエリアには

 多めにコインをばらまいておいたから、彼も巻き込まれる可能性は

 もちろんあったけど。あの子は現実組じゃないから、ゲームやる子

 だったみたいだけど……彼も大変そうだねぇ、基本的に“諷”君の

 時は明るく真面目に侍やってたけど“ひかる”君の時は色々抱えてる

 感じで。正直、何考えてるかまでは完全には分からなかったけど、

 事故って足に後遺症残っちゃってるらしくて、現実世界でも相当

 苦労してそうな子だなぁ……ああ、彼に関しては安心して?

 あの子、現実世界の椿ちゃんに危害加える気はない感じだったから」

「……別に俺は……!」

「――リアルタイムなら この力は有効だから誤魔化しきかないよ?

 諷君の本心も、現実世界の椿ちゃんの心配してた君の本心も

 丸聞こえだったんだから♪ それと君はひかる君……

 ひかる君が事故に遭った事にも、感謝すべきだと思うんだよね」

「……なんだと……!?」


「椿ちゃんが ほたるちゃんに優しくしていたのを見たのが

 椿ちゃんを選んだ、僕にとっての決定打だったからだよ。

 ……その優しさは、椿ちゃんがあの時慰めた ほたるちゃんの存在

 なくしては知り得なかった。そして ほたるちゃんが泣いていたのは

 ひかる君が事故に遭っていたからだよ」

「……!」


「もちろん、ひかる君の事故がなくても、候補の1人にはしていた

 とは思うけど。椿ちゃん1人の時の心の声だけじゃあ、椿ちゃんが

 優しい子だとまでは分からなかったからね。……そして

 君は椿ちゃんの不幸も喜ぶべきだと思うんだ。椿ちゃんが言い

 辛そうにしてた過去、ほたるちゃんに会う前に椿ちゃんは泣いて

 いて、あの時椿ちゃんが泣いてたのは――同級生の男子が

 ×ゲームか何かで椿ちゃんに嘘の告白して、それ真に受けた

 椿ちゃんが嘘だって言われた上に、酷くけなされたからさ……

 だから、あの時君が大嫌いな“お姫様”にも嫉妬した。

 ……そりゃあ兄が死に掛けてた ほたるちゃんの前だと

 自分の嫌だった事なんて……って思う気持ちもあるとしても

 辛いと思って当然だし、さっき椿ちゃんは君に軽蔑される

 かもって不安になってたけど、そんな事ないのにね。

 ……そして椿ちゃんが言ってた通りさ、その事があったから、

 椿ちゃんは蓮にも出会う事ができた」

「それが毒林檎のくだりかよ……」

蓮は思い出す……椿と出会った翌日の、昂の言葉を。


「そういう事だよ。それともう一つ……覚えてるよね?

 まぁひかる君は大丈夫だとしても、さっき君、

 ひかる君に……先越されそうって内心焦ったでしょ?」

「……! 先越も何も……っ第一俺はそんな事……!!」

「でも、あの時少しは思ったでしょ? 椿ちゃんの名前が本名だって

 知って、自分が本名で呼んでたって自覚して。自分も、自分の

 本当の名前の方も……ってね。ああ、あの時椿ちゃんの

 心の声聞かせちゃったのは 君が椿ちゃんの本名気になってから

 ついつい余計な事しちゃったね~本人には謝っておいたし

 椿ちゃんもああ言ってたから今後無粋な真似はしないようにとは

 思うけど。……それにしてもさ、さっきの事。僕がいつ君に

 椿ちゃんが見たい物を聞いてくるように言った?

 ……あれ、もしも椿ちゃんがさ、

 蓮の現実の世界の姿が見たいって言い出してたら、どうしてたの?」

「……!!」

そう昂に言われ、蓮は咄嗟に自分が言った事、

その可能性を自覚する……


「……まぁ椿ちゃんの性格上、そういう事は自分から求めて来ないとは

 思うけど~♪ でもでもっ!思いつきで物を言っちゃうと怖い怖い☆ 

 しかも僕の命令だなんて大嘘つくなんてね……ああ安心して。

 椿ちゃんの望みはちゃんと叶えてあげるから☆……でも本当に良いの?

 蓮、雪は……“あの日”と“あの女”、思い出すから嫌でしょ?」

「……その日だけは仕方ねぇ」

「ふぅん……やっぱ椿ちゃんはすごいすごいっ♪ 君にそんな我慢

 させられるなんてさ~まぁ僕らにとっては珍しくともなんともない

 訳だけど、椿ちゃんが喜ぶなら……僕も恩はあるし簡単な事だし!

 今度君達が会う時にシークレットエリアに雪降らせて――って

 いうより、積もらせてあげるよっ!

 ……きっと、それが椿ちゃんの望みだし……特別に――ね。

 それだけでもまぁ椿ちゃんは喜ぶと思うけど……僕の命令で聞いたん

 じゃないって言った方が椿ちゃんは喜ぶんじゃない?……君が椿ちゃんを

 喜ばせたくて聞いたって、ちゃんと言った方が椿ちゃんだって確実に

 喜ぶと思うな~このままだとさぁ、君の嘘信じちゃってるままだよ?」

「……そんなの恩着せがましいだろうし、言う必要はねぇ……

 それに……どうせ俺が願いを叶えたら、リセットされる関係だし

 ――借りを作らない為、先にアイツの願いを叶えておく事は

 当然の道理だ……じゃあ俺は帰るぜ」

「ああうん、じゃあまたあっちでね」

それから昂は蓮を見送る……


「道理、なんてただの後付けにすぎないのに……あれだけ女の子に

 興味持たない君が、そういう事言う事自体、すごい事なのに……

 本当に素直じゃないんだから……でも……

 それを最後の、プレゼントにするつもりなんだね」

そう呟く昂は……蓮の変化に嬉しさを滲ませる……

だが、それと同時に、複雑な表情も浮かばせていた――

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