表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/65

chapter Ⅷ allowance ―斟酌― Ⅴ

強制イベントが終わって再会した竜と椿が色々話すお話。ロッサや昂等も登場します。


「おーい!眼鏡っ子!」

「あっ……竜さん!」

そして最初のステージに向かっている所、椿は竜と合流する。


「お疲れ様! 色々サンキューな!」

「お疲れ様です! ご無事で――何よりです。

 それにしても――今回のイベントの事、ですが……」

「ああ、運営の手の上で踊らされた感じ――だった、な」

「……です、ね」

二人は強制イベントに優勝は――した。しかし――それはシーフや綾が

本気を出していなかった事もあり、実力で勝てた訳ではない……

複雑な気持ちだった。


「まぁでも、優勝報酬もらえる事自体は嬉しいし

 眼鏡っ子は――蓮に渡すんだよな?」

「はいっ! そうです、けど……」

「どうした? やっぱり実力でもらった報酬じゃあねぇから

 純粋に喜べねーって感じか?」

「それも、あるのですけど――……」

「……眼鏡っ子は今日、蓮の為に必死に頑張ってたじゃん?」

竜は複雑な表情の椿に問う――


「……蓮さんの、為――」

椿は竜の言葉を繰り返す……そして、考える。最初自分は――蓮がレベル

MAXになる事で、蓮が願いを叶える事、解放される事を望んでいた。

だから、蓮を解放する為に、優勝報酬を手に入れたいと思った。

……その気持ちに間違いはない。でも――シーフの言葉を聞いて、

迷いが生まれてしまった。蓮がレベルMAXになったら、現実世界の蓮が

蓮としてこの世界に存在する理由がなくなる。そして椿と一緒にいる

必要もなくなり、自分と蓮との別れの時が来る――蓮を救いたい、でも

蓮と別れたくはない。蓮に報酬を渡すと決めていても、蓮との別れが

早まる事に――椿は我慢しようとしていても、淋しいという感情は

抑えきれなかった。


「眼鏡っ子はさ……本気で蓮の事が好きなのか?」

ふと竜は――椿に切り出す。

「えっ!?“本気”――というのは……?」

「……そもそも眼鏡っ子と蓮はリアルで会った事とかあるのか?」

「私は――現実世界の蓮さんの事は――会った事もなくて、

 何も分からない、です……」

「――だったら、現実世界の蓮と付き合ってみたいとも思ってるか?」

「……それは……知ってみたいと思っていますし、実現するような事が

 あれば――私なんかと付き合って頂けるのなら、とても幸せな事だと

 思います……でも、竜さんどうして――いきなりそんな質問を?」

椿は不思議そうに竜の顔を見る。


「……正直、どっちの考えが“普通”なのか分からなくなってきたから

 ……俺と眼鏡っ子は同じ考えでもさ、他の奴は――この世界で誰かを

 好きになっても、この世界は1日1時間で終わる世界で、現実世界

 じゃあねぇから……そんなのは考えられないって、そういう考えの

 奴もいる……。むしろそっちが“普通”なのかなってさ……だから

 俺が――現実世界の相手の事も知らないのに、すっげー好きなのとか

 現実世界でも会ってみたい、知りたいとか思ってるのって……

 おかしいのかもしれないとも思ってる」

「……おかしくなんかないです!! 竜さんは今ここで存在して

 ますし、桃ちゃんだって……現実世界に戻っても……竜さんの事、

 気にしていましたから」

「そう、なのか?」

「……あの、言って良い事か分からないのですが……竜さんが

 桃ちゃんに初めて魔力を譲渡した時、すごかったそうで……

 桃ちゃん結構混乱してましたし」

「あっ……ああ~あれ、な……まぁ今日はその件に関しても

 話はできたんだけど……」

桃との譲渡の話になり――竜は言葉を詰まらせる。


「そういえば――桃ちゃんの姿はなかったですが……大丈夫、でしたか?」

「えっと……まぁ一応、あの時の事は謝れたんだけど、

 その後……シーフが組んでた綾っていう奴が来て――」

「アヤ……さん……?」

「眼鏡っ子、アイツと顔見知りなんだよな?

 うさぎの耳付けた派手な魔女の奴。

 アイツ、蓮狙ってた事あるって話だし――」

「あっ……! あの方――はい、一度だけですが――」

「アイツ、色々めちゃくちゃだっただろ?」

「……なんというか、その……

 それより、竜さんのお知り合いだったんですね?」

正直綾は、椿にとって良い印象のない相手――椿は言葉を濁す。


「アイツ、俺の元カノなんだよ」

「えっ……!? そうだったんですか!?」

椿は初めて聞く事実に戸惑う――

「まーな、そんでまぁ挑発?っていうか、色々言われて……」

「……それで桃ちゃんは――」

「リアルに帰ったみてぇだった。それでさ……その時にも

 言われた事なんだけど――今日の事、本当にごめん!」

「えっ……どうしたんですか?いきなり――」

いきなり頭を下げる竜に――椿は驚く。


「魔力回復アイテム、全部は盗られてなくて……

 でも、どうしても勝ちたくて、自分用に魔力温存してたんだ」

「――そのお話、本当、だったんですね……」

「眼鏡っ子、気付いてたのか?」

「えっと……シーフの方がお話してくれたんです」

「ああ、それで知って――」

「竜さんのご行動に……私が口出しして良い事かは――分からない

 ですが、いくら勝ち残りたくても、あっ、もちろん私は今回の事は

 気にしないでおきますが、桃ちゃんの事、本当にお好きでしたら

 ああいった事は――桃ちゃんにだけ、して欲しいです。

 そうじゃないと桃ちゃんが――」

「そう、だよな……桃も――良い気はしないよな」

竜は反省した様子を見せる……


「良い気がしないというより――やっぱり、好きな方が他の方にそう

 いった事をしているのを見ると――嫉妬してしまうと思いますし」

「……好き……か、そういえば、眼鏡っ子から見て――

 桃は俺の事、好き……だと思っているように見えるか?」

「えっ……? 私は――勝手にそうだと思ってますけど……」

「ん~……アイツが正直、俺の事少しでも好き……でいてくれたら、

 めちゃ嬉しいし、今日ももしかして――って思った事もあったけど、

 それって客観的に見ても――そう感じるか?」

竜は自信なさげに――椿に確認する。


「……あの、余計な事を言ったら――桃ちゃんに怒られてしまいそうです

 が、竜さんとの譲渡の事を思い出して真っ赤になって動揺していた事も

 ありましたし、一緒にクエストする時も――あの後、竜さんとどう

 接して良いか分からないみたいで、しばらくそわそわしていた感じで、

 その……入れたり、長かったり、大人の方がするような譲渡だった

 ようで――桃ちゃん自身もあの日はどういう意味で、そういう風にした

 か色々調べたそうでしたし、遊び人かもしれないからみたいな事は

 言っていましたが、私は竜さんがそういう方だとはそう思いたくない

 です……少なくとも――セーブを使っていない竜さんがあれだけ

 桃ちゃんを心配して助けたり、ああいった形で譲渡する時点で、

 竜さんは桃ちゃんがすごく好きから――ですよね?」

「まぁ……あれは本気で好きだから、ああなったというか……」

「そうですか、でしたら安心しました」

「ん~でも今日のは完全に色々誤解されたよな……もちろん、俺が悪い

 のも分かってるんだけど、あー……次会えた時には、誤解解きてぇな」

「あのっ……!私、自分に何ができるかは分からないですが、竜さんや

 桃ちゃんの為に――何かできる事があるならしたいです……!」

竜の本気の気持ちを確認した椿は――心から、二人を応援していた。


「ありがとな、眼鏡っ子。でも――これは俺が自分で解決すべき問題でも

 あるから――とりあえず、自分で頑張ってみるな!でも……もしかし

 たら、今後頼りにしちまうかもしれねぇ……その時は、ごめんな」

「そんなの気にしないで下さい! 私からはその――できる限り余計な

 事はしないでおこうとは思いますが、何かありましたら、教えて下さい

 ね。私は――竜さんの事も、桃ちゃんの事も、応援してますから」

そう言って、椿は微笑む。

「やっぱり――優しいな 妃宮さん」

「……え……?? 竜さん今――」

椿は一瞬、竜が自分の名字を呼んだように感じて聞き返す。

「あっ……しまっ……! ……なんでもねぇよ、ただ――

 この世界がさ“ゲーム”だって――忘れそうになっちまうな」

「……え……?」

「この世界って……何の為にあるんだろうな……」

「……分かりません――そういえば、なんでなんでしょうね……?」

「……俺みたいな奴の為に、あるのかなって……」

「……え?」

「あっ……悪りぃ悪りぃ、何でもねぇ……って!?」

「先程ぶりですわ椿様、そして――ごきげんよう、竜様♪」

そんな二人の前に……ナビゲーターデータのロッサが現れた。


「お疲れ様ですわ~☆ 優勝おめでとうございますわ♪」

「ロッサさん……!」

「ナビゲーター悪魔っ……!!」

「ふふっ♪ お久しぶりですわ☆」

ロッサは意味あり気に微笑む――


「あっそういえば、竜さん、ロッサさんとは――お知り合いですか?」

「……それはこっちのセリフだぜ!

 ――コイツから最初に説明受けてねぇのかよ?」

「あっはい、でもそういえば――……」

椿は思い出す。最初雷音とこのゲームの話をした時に

普通は最初に悪魔から一通りの説明をもらえるはずだと言っていた……。


「椿様は特例中の特例でしたから、今日が初めましてでしたが、

 普通のプレーヤー様は私が初めて接するRPGキャラになりますの。

 竜様は相変わらず――お盛んなようですわね☆」

「お盛んってお前な……その言い方人聞き悪ぃーからやめろ」

そう言って、竜はロッサを睨む――


「あらあら、ごめんなさいまし♪ これも“昂様のプログラム”に

 従っただけですので、私自身に悪意はありませんのよ?」

「……まぁ創造者のデータで心もねぇんだし、やっぱ諦めるしか

 ねーか……初RPG化した時に笑顔で俺殴った事と比べりゃ

 マシな方だし」

「えっ……ロッサさん……」

「あら、椿様の前で意地悪を――でもあの行為も昂様のプログラムの

 一環で、竜様に痛みを感じて頂く事で、夢ではなく現実だと

 認識して頂く為にした正当な行為でしたもの☆もちろん椿様には

 そんな失礼な事はしませんので、椿様はご安心下さいまし♪

 竜様は――もう一発殴ってさしあげましょうか?」

「今俺を殴るのには、どこに正当性が!?」

「……とかなんとか言っているうちに、着きましたわよ~♪

 昂様から、優勝報酬の譲渡がありますから、お2人共、

 ステージに上がって下さいまし~☆ ではさよならですわ~」

会話をしているうちに――いつの間にか、椿達はロッサに誘導されていた。

そして役目を終えたロッサは姿を消す――


「やっほ~♪ 椿ちゃん、竜君っ!! 2人共、おめでと~☆」

ステージの上には、いつも通りの笑顔の昂の姿――

「昂さんっ!!」

「えっ……メガネっ娘、知り合い……? つーかなんで俺の名前――」

竜は昂とは初対面だった――

「この世界の、“創造者”さんですよ」

「!? ……マジかよ……

 俺……悪の帝王みたいな奴想像してたのに……」

「……中身は、そんな感じ……かも……」

椿は小声で、そう返したのだった……。


「はいっ!これが優勝報酬のデータ、どうぞ!

 好きな時に発動できるから、好きな時に使ってね♪」

「ありがとうございます」

「ありがとな!」

そして二人は昂からデータを受け取る。

「竜君、今は――使わないんだね」

「……色々、考えてからでいっかなーって思ったからな。

 じゃあ、俺はそろそろ――」

「竜さん、今日はありがとうございました。お疲れ様でした」

「おう! 色々ありがとな、眼鏡っ子、またな!」

「ばいば~い!」

竜は姿を消す――


「……昂さん、今日は――」

それから椿は、複雑な表情で昂を見つめる。

「……今日は、シーフと話してくれてありがとう」

「……! あの方は――」

「――僕の、大切な人」

「昂さんの、大切な人……?」

「蓮と椿ちゃんの事、心配してくれててね……話してみたいって

 聞かなくて――僕も二人には話して欲しかったから。それと――」

「……蓮さん……!」

――そして、二人の前に蓮が現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ