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chapterⅦ jealousy -嫉妬- Ⅲ

強制イベントで戦う椿&竜コンビと桃&蓮コンビ。謎のプレーヤーのせいで 魔力が尽きた椿に竜は…!?

「――高みの見物、って感じなのは気が引けるけど――

 様子見も作戦の1つだよな」

強制イベントが始まる――開始直後、竜と椿はひとまず、

竜の魔法の絨毯で上空へと移動していた。


「ありがとうございます、竜さん」

「それなりに魔力は消費するし、俺の意識飛んだら一緒に

 落ちちまうのは……正直危険だし、二人乗りまでしか

 できねーけど、こういう時便利なんだよな~……

 全部は見えねーけど、結構派手にやり合ってる感じもするぜ……」

「飛べるのもですが、額の瞳も使いこなされてるの、さすがですね」

「――ある程度は、な。結構、万遍なく散ってる感じもする」

竜は上空から見渡せる範囲はもちろん、額の瞳も使い、

ある程度の状況、少し離れた場所で起こっている事を把握し――

ベストな行動を考える。


「――んじゃ、いくか!」

「はいっ……!」

「北東6人から――吹き荒れろ!」

そして――竜は攻撃を仕掛ける……黒い横笛を吹き鳴らす。

その瞬間……突風が発生し、プレーヤーに襲いかかる。

「うわぁぁぁ!!」

「――悪ぃな、残りは――形状変化! 出て来い!」

「……毒蛇!? くそっ……動きが――」

「失礼します!」


それから風の魔法だけで倒せなかった敵に対しては――

瞬時に横笛を縦笛に変え、召喚した毒蛇で動きを止め、

その瞬間、椿が攻撃魔法を使う。……椿の攻撃魔法は威力は

そこまで強くはないが、竜の攻撃魔法のダメージと合わせると

20%以下までは体力を削る事はできたのだった。


「ナイスアシスト! 次いくぜ! その間ガード任せるな!」

「はいっ!」

そして二人は別のエリアに移動し、闘いを続ける――


「サンキュ♪ 眼鏡っ子のサポートのおかげでいい感じに

 敵倒せてるし、こまめに魔力回復もちゃんとできてる」

「……こちらこそありがとうございます、

 竜さん、やっぱり強いです……! 心強いです!」

「へへっ♪ それなりに先輩プレーヤーだからな!」

竜は嬉しそうに微笑む――




「ううっ……!」

「ぎゃあぁぁぁ!!」

「にっ……逃げ……あっ……」

一方蓮は……剣に魔力を流し込み、次々に振り翳す――

圧倒的な強さ、容赦のない攻撃で、周りのプレーヤーは

即死し、すぐに姿が消えていく……


そして――

「なんだあの化け物……!?」

「うわぁぁぁ……!!」

「さすがね……私のドラゴン」

一方桃は――巨大なドラゴンを召喚し、周りの敵を一掃していた。

ドラゴンは容赦なく暴れ、プレーヤーを踏みつけたり、

炎を吐く……他プレーヤーは次々と消えていった。


「召喚師を叩けー!!」

「……やっぱり、私にも来たわね……H2SO4!!」

「ぎゃああぁぁぁぁ!! 溶けっ……目が……!!」


もちろん、ドラゴンだけでは間に合わず、

プレーヤーは桃にも襲い掛かってくる……そんなプレーヤーを

相手に、桃は冷静に硫酸をかけ、動きを鈍らせる。


「うぁぁぁぁ……!!」

そして――ドラゴンが、そのプレーヤー達も燃やしていく……


「……ごめんなさい……やっぱり、良い物じゃあないわね……

 ゲームの中、とはいえプレーヤー傷付けたり殺しちゃうの……

 でも――私は……勝ちたいの……勝って、手に入れたいの……!!」

蓮とは違い――桃は完全に割り切れてはいない。

だから、プレーヤーに罪悪感も抱きつつ、プレーヤーを倒していった。




「――大分脱落したな、今見える範囲に……敵はいないぜ!」

「はいっ! お疲れ様です、竜さん」

「アイテムもまだ余裕あるな、これなら勝てるかもな眼鏡っ子!」

そう言って竜と椿は笑い合う――


「そうですね、では今のうちに――……!?」

「……なっ……!?」

安心する二人の前に――……飛行アイテムを使ったのか、

一瞬、勢い良く飛んできた1人のRPGキャラが二人の間をよぎる。

「……♪」

そして、そのプレーヤーはすぐに二人の前から姿を消してしまった。


「今……!?」

「一瞬誰か……!?」

「くそっ……俺の目で感知できなかった……でもアイツ今、俺達に

 何をした……? 触れた気はしたけど、ダメージは受けてない……

 時差ある毒系……? 苦しいとかないか? 大丈夫か眼鏡っ子!?」

「あっはい、私は大丈夫です! 苦しいとかは……あれ?」

「どうした眼鏡っ子!?」

「……魔力回復アイテムがなくなってる……!?」

椿は青ざめる――先程まで温存していた

魔力回復アイテムが全てなくなってしまっていた。


「えっ……?? ……!! くそっ! 俺のも盗られてる――!!」

「……まさか……」

「やられた……おそらくさっきの奴は、シーフだ……それで俺の目でも

 感知もできなくて、アイテム盗るのもおそらく長けてる……!!

 ――でも――どうして、こんな真似を……? 俺達に一切攻撃せず

 魔力回復薬奪ったのは何故だ……? 俺達を倒すのなら、今でも

 できたはず……! それをしなかったのは何故だ……? 戦闘能力

 自体は低いのか……? それか、すげー魔力使う必殺技持ちで

 アイテム先に集めてる……? そもそも今どこにいる……?

 隠れている……? いないとしたら、組んでる奴の所に

 魔力回復薬持っていったのか……?」

「ごめんなさい、私……」

考えを巡らせる竜の前で――椿は泣きそうな表情を見せる。


「――眼鏡っ子のせいじゃねぇ、アイツはきっと

 反則級の能力者だったから防げなかったんだ……」

「でも私、今もう魔力が……! 今回復しようと思ったらあの方に

 ……これでは防御魔法も使えない……もう戦えないです……!

 もう少し早く回復薬を使ってたら――」

「――自分を責めるなよ、方法も――あるっちゃあるんだし」

「えっ……?」

「いつ襲撃されるか分からない……今も機会をうかがってるかも

 しれない……すぐにまた戦わないといけねぇかもしれない――

 時間がない……! 眼鏡っ子――どんな手段を使っても、優勝報酬を

 手に入れたいと思うか? それなら、どんな方法を使っても――

 俺を恨まないか?」

そして困惑する椿を、竜は真剣な眼で――見つめる。

「はいっ……! もちろんです!」

「なら――……悪い! すぐ終わらせる!!

 後で思いっきり殴ってくれてもいいから――!」



「……こっちの方向残ってるのは――椿ちゃんと……竜……!?」

一方、桃は――ドラゴンや他の召喚モンスターを駆使し、周りの敵を

倒しつつ――偵察用の蝙蝠を使い、他のエリアの敵の探索をしていた。

そのうちの1匹の蝙蝠が――椿と竜の姿を捉える。

「……アイツ、近くにいるんだ……

 大分暴れさせたし、巻き込まない為にも一旦――……!?」



「え……? んっ……!?」

その瞬間、竜の唇が椿の唇に触れる……

竜は口移しで椿に魔力を譲渡した――



「……竜、さん……?」

突然の譲渡に、椿は茫然としてしまう……

「ごめんな、こんな方法取って……

 でもこれでおそらく、しばらく戦えると思うから」

「……あのっ……! 気にしないで下さい! これは戦略!

 戦略ですから! むしろ貴重な魔力をありがとうございました!」

申し訳なさそうに謝る竜を――椿は気遣い、笑顔を作る……。


「今、竜、椿ちゃんに……? キスした……?? どうして……??」

信じられない光景を目にしてしまった桃は――ひどく動揺していた。

「アイツにとってのキスは――魔力を譲渡する――手段でしか、

 なかったの…? 誰が相手でも、簡単にできる事なの……??

 えっ……?? なっ……!!? ……うそっ!!?」

荒れる桃の心に呼応するように――

敵がいないにも拘わらず、桃のドラゴンが大量の火を噴き出す……

辺り一面が……一瞬にして火の海と化した。

「……ダメ……!! 止まって……!!

 これ以上はっ……!! もし……もしもアイツが……!!」


「アンタずるいわよ!飛べるなんて反則じゃない!!」

「まぁでもこれ、結構魔力使うから――

 温存する時は温存しねぇといけないし」


脳裏によぎる竜との会話――何度も戦ってきたから知っている。

レベルが上がっていても、竜の飛行魔法は完全ではない。

魔力が少なくなったら使う事ができなくなる……

「止まって……! もうやめて……!! アイツが近くにいる……!

 もし……もしもアイツが巻き込まれたら……!! 死んでほしく

 ない……! アイツだけは殺したくないの――!!」

そして――桃の思い通り、ドラゴンは姿を消した……




「――ではこれからどうしましょうか……このまま飛行魔法を

 使い続けると、竜さんの魔力も――えっ……?」

「どうした眼鏡っ子?」

椿は――竜の後ろにいる、1匹のモンスターの存在に気付く。

「……今気付いたのですが、蝙蝠が――

 竜さんの真後ろにいて、まっすぐ飛んで――」

「……蝙蝠!?」

竜は慌てて後ろを振り向く――もう既に飛び立った後では

あるが、蝙蝠であろう黒い点が見えた――


「まさか今の蝙蝠――桃……!? 悪い眼鏡っ子、ちょっと

 あっちの方行かせてくれ! もう少し近付いたら、俺の目で――」

「はっ……はいっ……!」

そして竜は蝙蝠が去った方向に進み、額の目で同時に追う――


「蝙蝠――桃ちゃんの召喚モンスターでしょうか?」

「ああ、俺アイツと戦った時に、何回も使われてたから

 間違いねぇ……それにしても――すげぇ火事だな……」

「すごい炎……熱気がここまで――」

「おそらく誰かが派手な炎系の魔法を――」

「もしかして、さっきのシーフの方……?」

「……かもしれねぇな……って桃……!?」


そして桃がいるであろう方向に近付き、竜が額の目で見た先――

桃が炎の中、必死に氷のシールドで防御しているようだったが、

体は今にも炎に飲み込まれそうだった。


「……多分、桃の奴、あの炎から出られなくなってる……!!」

「……! 桃ちゃんが……!?」

「……何やってるんだよアイツ――!」

椿は――瞬時に察する。

間違いなく竜は――今すぐ桃を助けに行きたいと思っている。

そして、それを躊躇う理由が自分の存在である事に……


「……竜さん、私を――下ろして下さい。」

「え……?」

「この絨毯、2人乗りっておっしゃってましたよね?」

「でも……!」

椿を絨毯から下ろす事は――椿を危険にさらす事。

椿を裏切ってしまう事――だから竜はすぐに決断はできなかった。


「――私が下りたせいで、私が誰かに負けてしまって、

 私達が負けになってしまったら――申し訳ありません……

 でも……! 今桃ちゃんの所に行かないと、竜さん、

 きっと後悔してしまいます……だから……!!」

「……ごめんな、眼鏡っ子――

 結局俺が――裏切る事になっちまったな」

「気にしないで下さい……それにまだ裏切ってなんかいないです。

 とにかく――竜さんと私が体力20%を切らなければ私達は

 勝てます。でも竜さんがもし――体力がゼロになってしまう

 ような事があれば、桃ちゃんが哀しんでしまうので……

 竜さん自身もお気を付けて」

「ありがとな、ひとまず安全な場所に運んでから下ろすぜ!」


そして――炎からなるべく遠く、かつ桃の救出に間に合う

ぎりぎりの距離まで竜は椿を運び――下ろす。

「ここまで送ってくださってありがとうございます、

 いってらっしゃい竜さん、桃ちゃんをお願いします……!」

「おぅ!」

椿は竜を送り出した――

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