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chapterⅦ jealousy -嫉妬- Ⅱ

強制イベントでの桃&蓮、椿&竜の作戦会議?やナビゲーターデータと椿の会話、竜の過去等のお話です。

「もう……一応協力プレイ?必要っぽいのに私の事完全無視してるし!

 ……確かに蓮のレベルじゃあ、敵なしではあるだろうし、

 ある意味蓮が組む相手なのはラッキーかもしれないけど……」

一方、桃は――強制イベントで組む事になった最強プレーヤー“蓮”を

横目で見ながら、心の中で愚痴をこぼす。そして桃は思い出す――

蓮と組む事が確定する前の事。


「あの蓮がいるんじゃー優勝無理じゃね?」

「怖ぇよな~……瞬殺オチだからパスパス!」

……蓮を恐れ、イベント参加をやめていくプレーヤーの姿も目にしていた。


「確かに、私も蓮と敵になっていたら……でも、そのリスクがあっても、

 私は――って、それにしても……蓮はさっきからなんか画面見て

 話してるっぽいわね……ナビゲーターが言ってたオンライン

 ストア的なのでアイテム買ってるのかしら……? でも誰かと画面上で

 話してるみたい? ――タッチパネルじゃなくて音声操作的なの?」


「……何を考えてる? 創造者……?」

一方、蓮は――画面上に現れた“創造者”・昂と会話していた。

「今頃他のプレーヤー達はペアの子達と話して戦略練ってるけど、

 まぁ君の場合、極力女子と話したくない事考慮して――特別に!

 組む相手の桃ちゃんのデータ見せておいてあげる!

 じゃ! 頑張ってね~☆」

「……必要ねぇし!」

蓮が断ったにも拘わらず、その瞬間――蓮が見ている画面が

昂の顔から桃のデータに切り替わる。


「……って私のデータ!? 個人情報もらさないでよ!?」

気になった桃は――蓮が見ている画面を覗き込んだ。

「てめぇいつの間に……勝手に覗き込むんじゃねぇよ!

 ……ってか創造者の前に個人情報もクソもねぇし!!

 ……って、てめぇ何気に……意外と超強力スキル持ち、か……」

「意外って失礼ね!?」

蓮が見ていたのは桃の戦闘能力データ……2人は勢い良く言い合う。


「……てめぇも、このイベントで優勝したいと――

 本気で、そう思ってるか?」

「そりゃあ、できるものなら――したいけど……」

「……勝機は――ある……」

「……そりゃあ、最強の名を持つアンタがいれば――

 不可能ではないでしょうね。私がいなくても――えっ……??」

蓮は桃の言葉の途中、大量の魔力回復アイテムを出した。


「あの”最強召喚魔法”……使いたいだけ使え。

 その為の魔力回復アイテムの一部はてめぇに貸す。」

「……!? そう……私のデータ見て知ったのね……私が――

 ”あの召喚魔法”使ったら――アンタも無事じゃすまないかも

 しれないわよ? 私あの魔法で昔、味方の先輩殺してるし。

 “あの子”、魔力はそこまで使わないけど、私以外は敵味方

 見境なく殺すから――スキルMAXになったら敵以外は

 攻撃しないようになるみたいだけど、そうじゃない今、

 それでアンタが死んでも責任は取れないから」

「一定距離離れてれば問題ねぇだろ、それに俺の事も

 殺すつもりでやればいい……優勝する為なら――」

「……お互い、手段は選んでいられないって事ね。分かった……

 まぁ一応、偵察用の子も一緒に召喚しておくから、できる限り

 蓮の事は巻き込まないようにはできると思うけど

 ――命の保証はできないから、始まったら離れてて」

そして二人は――会話を終える。


「……神経削るから、あまり使いたくはないけれど、

 魔力回復薬こんなにあるなら――出し続けてても問題は

 なさそうね……でも……“あいつ”は……今日ここに来てる……?

 このイベントに参加してる……?? もし来てたら――“あいつ”

 だけは巻き込まないようにしなきゃ……“あいつ”にだけは

 使えない……! その為にも偵察蝙蝠は必須……」

そして考える――自分の手で絶対に殺したくない、

1人の少年の事を。

「椿ちゃん、もし殺しちゃったら――その時は、ごめんね」

――心の中で、先程まで一緒に遊んでいた

友人の事を思った……




「――じゃあ、こんな感じで本番よろしくな、眼鏡っ子!」

「はいっ竜さん、作戦――色々と考えてくださって

 ありがとうございました!」

「どーいたしまして♪」

一方、竜と椿はお互いの技や持っているアイテムについて一通り

話し終える――礼を言う椿に、竜は笑顔を見せた――そんな竜を見て

椿は――たどたどしく切り出す。


「あのっ……えっと……竜、さん?」

「――ん? どうした?」

「……私、どうしても確かめたい事があるんです……

 だから、今からロッサさんの所に聞きに行こうと思ってて――」

「ああ、まぁ多分、俺でも分からねーだろう事だし、聞かれたとして

 俺の答えが間違ってる可能性だってあるんだし、作戦会議も

 もう終わったようなもんだし――行って来いよ、ナビゲーターの所」

「はいっ……! ありがとうございます! いってきます!」

そして竜は椿を見送る――


「……それにしても、やっぱり――こうやって話してみると……

 姿も雰囲気も、声も――全く一緒だな、妃宮(ひめみや)さんと」

一人になった竜は――先程まで話していた、この魔法のゲームの

プレーヤーである“椿”と、自分が知る、現実世界の“妃宮椿”と

――姿を重ねる。

「いやいやいや! でもまさか本人な訳はねーよな! そもそも俺が

 こんな違う訳だし! 全く変わらないのはさすがにねーよな!

 まぁありえるとしたら――外見似てるのは創造者がたまたま

 見かけてデザインしたとか、そういうパターンだろ、きっと――」



それから竜は、ステージ上の悪魔の少女を見る――




「初めまして、ようこそ――BATTLE CHARACTERSの世界へ

 ……“4人目”の“現実組”さん?」


「……逃げたい、と……思ったのでしょう? “その”世界から――」


「現実逃避を望んで、RPG化の魔法にかかった者達――

 それを、現実組と呼びますわ……」


「……望んだ事なのに?」


「――コインをどうするかも、何時、どのように、この世界に

 “存在”するか――それは、貴方のご自由ですが、

 コインに選ばれたなら、使わなければ損ですわよ――

 では、お楽しみ下さいませ……ごきげんよう☆」



その姿を見ていると、嫌でも蘇る――忘れもしない、初めて“竜”

……ゲームのキャラクターに変身できたその日の事を……

心の存在しない、悪魔のナビゲーターデータに

言われた言葉の数々を――


「それにもし、同一人物だったとしても――妃宮さんは

 俺が…………だとは絶対に、分からない……だろうな」

竜は――複雑な気持ちで、そう呟いた。




そして椿はロッサの元へ向かう――ロッサの周りには

他のプレーヤーはおらず、1人ステージの上で微笑を浮かべていた。


「あら……初めまして、椿様。お話するのは初めてですわね――

 私は昂様に作られたナビゲーターデータ・ロッサ……

 蓮様がいつもお世話になっておりますわ♪ 昂様の代わりに――

 お礼を言わせて頂きます。ありがとうございますわ☆」


椿が話しかける前に、椿の存在に気付いたロッサはそう言って

笑顔でお辞儀をした。


「え? いえいえ! そのっ……お世話になっているのは私の方です!

 ロッサさん……初めまして、こちらこそありがとうございます……!」

「ふふっ……昂様のデータ通り、謙虚なお方、ですわね♪

 そして――ご質問はどのような事でしょうか?」

「それは――あの……強制イベントの報酬は――

 もし自分が手に入れたとして、別の方に譲渡するのは可能ですか?」

「もちろん、可能ですわ。」

「……! ありがとうございます! それだけ聞きたくて――」

「――蓮様の為に、手に入れたいのですわよね?」

ロッサは表情を変えず、微笑みながら椿を見つめる――


「はいっ! そうです……!」

「――ご健闘を祈りますわ♪」

「はいっ……! ありがとうございました!」

それから椿はロッサにお辞儀をし、その場を去る――


「……まぁ、私のデータによると、蓮様の性格上、椿様からの譲渡を

 素直に受け取る事はないでしょうが――それは、黙っていた方が

 良かった……そうですわよね? 昂様――」

ロッサは椿の姿を見送った後、

プログラム通りの対応ができたかを昂に問う――




「は~い、ありがと☆ ロッサ、よくできました~♪」

一方、昂は自室からロッサに返事をする――


「……や~っぱり椿ちゃんは蓮の為に頑張るつもり、なんだなぁ☆

 ふふ~嬉しいなぁ、蓮の事、大事に思ってもらえて♪ まぁでも

 蓮は納得しないんだろうなぁ……その時は実力行使するけど。

 それにしても……椿ちゃんは――蓮のレベルが最大になった時の

 事、考えた上でなのか――まぁそこまでは分からないけれど、

 とにかく、蓮を助ける為に必死だなぁ、相変わらず☆」

そして昂は上機嫌で監視を続ける――




「お~おかえり、眼鏡っ子♪ 疑問、解決したか?」

「あっはい……! おかげ様で――」

「そっか、良かった!」


椿が竜の元へ戻ると、竜は椿がロッサに何を聞いたかについては

詳しくは触れず、笑顔を見せる――そんな竜の姿を見て、椿は胸が

痛む……そして椿は――意を決し、口を開く。


「あの……先程、ロッサさんに聞いた事なんですが――報酬が他の

 誰かに譲渡できるのか、それを確かめてきたんです。ロッサさんの

 お話によると、それも可能という事でした」

「……へぇ……じゃあ眼鏡っ子は――

 もし優勝したら、他の誰かに報酬やるつもりなのか?」

「はい……私、正直……私より、その人に手に入れて欲しいって、

 そう思ってしまう人がいて……だから……その……ごめんなさい!

 私、もしかしたら……竜さんを裏切ってしまうかもしれません……」

椿はそう言って、竜に頭を下げる――


「え……??」

「もちろん、私達が勝てたら、私が手に入れて

 それを、その人に渡せばって思うんですが――」

「……状況によっては、そいつを勝たせる為に――

 俺を裏切る可能性があるって事か?」

椿が言葉を続ける前に、察した竜は真剣な表情で問う――


「……! はい、すみません……」

「ははっ、そんなの気にしないでいーじゃんか! お互い、

 裏切る事があったとしても――恨まない、それで良くね?」

「……竜さんはそれで良いんですか!?」

予想に反して笑顔を見せる竜に――椿は驚きを隠せなかった。


「え? だって眼鏡っ子がそうしたいんなら仕方なくね? ただ

 その時は――俺の事は……多少の攻撃とか邪魔は……してもいーけどさ、

 ライフゼロだけは勘弁してくれたら助かるな~死にたくはねぇし(汗)」

「そんなっ……私、竜さんが死ぬような事はしたくありませんっ……!」

「あ~だったら安心したぜ! 後、他にも俺みたいにセーブ使って

 ねぇプレーヤーもいるかもだから、俺は基本的に全員殺さない

 ようにはするつもりだけど……そいつの事は特に殺さないように

 気ぃ付けるから…特徴、教えておいてくれないか?」

「はい、あの竜さんはご存じか分からないのですが

 蓮さんっていう……」

「あの最強プレーヤーの?」

「はいっ……!」

「あ~蓮は実際見た事ねーけど、噂で外見とかは把握できてるから

 説明なしで平気だけど……もし蓮に遭遇したら、むしろ俺、

 瞬殺されるんじゃねぇか……?」

椿が報酬を渡したい相手が蓮だと知った竜は――

不安な表情を見せる。


「……そう、かもしれません、ね……でも、蓮さんは飛行能力は

 持ってないので、先程竜さんがおっしゃっていた飛行魔法が

 あれば――直接竜さんに手を出すのは難しいかとは思います」

「……組んでる奴が飛行魔法持ってなきゃいーんだけどな。まぁ

 飛行魔法使えねープレーヤーでも、一時的に飛べるアイテムも

 あるから、油断はできねーな。それとさすがに眼鏡っ子は

 顔見知りみてーだから殺されるの免れるだろーけど……」

「……いえ、正直……私も殺されるかも、しれません……」

「……マジかよ!? 自分が殺されるかもしれなくても……

 それでも、眼鏡っ子は、蓮の事は殺さないで欲しいのか!?」

出会ったら殺すような人間を殺さないで欲しいという椿に、

竜は信じられないというような表情を見せる――


「はい……それでも私は――」

「本気、なんだな?」

「はいっ……すみません、我儘を言ってしまって……でも……

 おそらく私達が蓮さんに遭遇したら、蓮さんは弱い私を狙うと

 思いますし、もしもの話、蓮さんが竜さんを殺そうとしたら――私、

 竜さんの盾になりますから! 私が20%以下になれば、負けては

 しまいますが、竜さんのデータは守れます……! 私はセーブを

 使ってるから良いのですが、セーブを使ってない竜さんは

 絶対死んでほしくないんです……!」

「……ありがとな、眼鏡っ子。それにそんなに謝るな! もしかしたら

 俺の方が――眼鏡っ子、裏切る事になる可能性もなきにしも

 あらず、だし……」

「え……?」

竜の意外な言葉に、椿は驚く――


「俺も、何があっても死なせたくねーヤツはいるからさ……つーか

 そもそも来てるか自体分からねーけど。――前みたいに、勝手に

 体が動いちまうかもしれねーんだよな。とっさに無茶な事やらかす

 かもしれねーとは言っておくぜ」

それが誰の事を言っているのか――すぐに察しがついた。

だから椿も優しく微笑む――


「……その時は、是非助けてあげて下さいね。でも、その方が

 竜さんに何かあったら――きっとまた泣いちゃうでしょうから、

 竜さんの命は、その方の為にもお守りしたいと思います」

「おぅサンキューな! まぁでも基本的に俺らが勝てそうだって

 判断した時は俺らで勝ちにいくって感じでいいか?」

「はいっ!もちろんです!! 頑張ります……!」

「頑張ろうな!」

そして二人は笑い合う――


「……もし私が蓮さんに会っちゃったら―― 

 蓮さんは何も迷う事なく、私を殺すの、かな……」

それから椿は考える――蓮が自分達に会った時の事を。

おそらく蓮は目的の為に手段は選ばない。

だから、自分に会ったら自分を殺すだろう……

「……我儘かもしれないけど、その時は――死なない程度にって

 思っちゃうなぁ……でも、蓮さんが願いを叶える為なら、

 私は――」

そして、椿は――覚悟を決める。




「それでは、強制イベント開始、1分前ー!」

それから、予告通りの時間――

プレーヤー達はランダムの場所に自動転送される。

「転送された、な……いよいよだな、眼鏡っ子。緊張してるか?」

緊張した面持ちの椿に、竜は笑いかける。

「はっ……はいっ……正直――

 足を引っ張ったら申し訳ないです……!」

「――大丈夫だって! それに作戦通り、最初は――」

「そうですね、ありがとうございます! その事もすごく助かります!」


そして、30秒前のカウントダウンも始まる――


「……絶対にこのイベントに優勝して

 俺はレベルをMAXにする――そして――」



「先に――クリア報酬を説明しておくよ」

「1つ目は、君を許す事……

 2つ目は、僕が新城家と今後一切関係を持たない事」

それは数年前――初めて“蓮”に変身した時、昂に約束された事……

蓮の脳裏に、よぎる――



「……このイベントに優勝したら

 “あの子”のスキルMaxにする……そして――」



「なーんてな、いつか見せてくれよな。

 初めて出会った時に出そうとした…………

 ……今度こそ上手く、召喚してくれよ」

「……確約はできない……けど……考えといてあげる……」

桃の心に、“彼”との、かつての約束が蘇る――



「強制イベント、スタートですわ~!!」


そして、フィールド上に――ロッサの大声が鳴り響いた。

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