表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/66

chapterⅥ linkage -連関- Ⅳ

ヒロと あの子が出会って…!? 現実世界の あの子の事にも触れる お話です。


「うおりゃぁぁぁ~!!」

「……やっぱりさすが強化データ……強いわね。

 今日はちゃんと魔力の回復もできてるし

 私のサポートなんていらないじゃないの……」


そして――ヒロに連れられるまま、レイナは戦争の森でヒロのクエストを

見守っていた。強化データという事もあり、その強さを見せつけるように

ヒロは次々にモンスターを倒し――レイナは出る幕がなかった。

だが、敵を一通り倒し終えた後の事……


「!? アイツは『(いさむ)』……! こんな奴らより戦ってみてー

 奴がこんな所にいるとはなぁ……ラッキーだぜぇ!!」

「えっ……!?」

「何っ……!?」

単独クエスト中の諷に、ヒロは――突然襲い掛かる。

しかし――諷は瞬時に察し、2本の日本刀でヒロの大剣を防いだ。


「おぉっ! やっぱ期待通りの反応♪」

「……其方は、初めて見る者でござる……

 何らかの条件で出現する、此処の敵か?」

ゲームの敵データだと思った諷は――静かにヒロに問う。


「いーや、俺様は此処の敵じゃあねぇ……お前、諷だな?

 データ通り、良い反応するじゃねーか……さすが蓮に

 致命傷負わせたり、あの時 椿を死なせただけはあるなぁ……」

「……! その事も存じてるとは……其方は何者でござる?」

「俺様は……」

「止めなさいヒロ!」

「くっ……! 何するんだよレイナ!?」

レイナは――急いでヒロの動きを止める魔法を使う。


「当たり前でしょ!? 敵モンスターは良いとして、むやみに

 他のプレイヤーを襲わないでよ!?……すみません、私の

 連れが失礼な事を……ヒロ、これ以上の無礼は私がさせないわ」

「……えっと、ひとまず――レイナ?殿……止めてくださり

 感謝でござる……ヒロ?殿、といったか……

 其方は拙者と戦いたいのでござるか?」

諷は驚きつつ、レイナに礼を言い、ヒロに問う――


「ああっ! 俺様は強いお前と戦いてぇんだ!!」

「……そう、か……だったら少し――待っててほしいでござる!」

「えっ……?」

そう言って、諷は――自分の戦いに戻っていく。

ヒロはレイナと共に、諷を見守る形になった……。



「……ヒロ、一発殴りたい所だけど」

「……碧の為にも殴らない、って事だよな?……悪かったよレイナ、

 もう拘束魔法解いてくれよ? 諷のクエスト終わるの待つからさ」

「……約束よ?」

レイナはヒロに念を押し、ヒロへの拘束魔法を解除する。

その間に、諷は猛スピードで敵に突進した。

「おおっ! すげー! 強い強い! そこだー! やっちまえー!」

ヒロはすっかり諷の剣技に見入って応援していた。

「……ヒロが戦いたいだけあって、強いプレーヤーのようね」

そして――諷は自分の戦いを終える。


「よしっ! ステージクリアでござる~☆ 今日はこのエリアの

 アイテムドロップが多い曜日だから、ついつい熱中して

 しまったでござる。お待たせしましたでござる!」

「……そんな時に、邪魔をしてすみません」

「大丈夫でござる! 拙者自身、強い者として名が知れているのは

 光栄でござる! だったら場所を変えて――お互い万全の状態の

 方が良いでござるな。魔力の回復と、セーブも使わせて欲しい

 のでござる。……殺すつもりできてくれても、良いように」

「……本当に付き合ってくれるのですね、ありがとうございます」

ヒロとの真剣勝負に本気で乗ってくれる諷に、レイナは頭を下げる。


「おー!ありがとなー!! んじゃ、敵が少ないエリアに――

 あっ……! くっ……!」

「……しまった、30分っ……!」

「えっ……!?」

苦しみ出すヒロに――諷は戸惑う。


「くそっ……時間がきちまったみてぇだ……

 せっかく諷と戦えると思ったのに~!!」

「もしかして、ヒロ殿の時間切れでござるか……それは――残念で

 ござる……だが……また会った時に真剣勝負、するでござる!」

「……おぅ! サンキュー諷! 良い奴だな!!」

「……今度の発動の時は、他のプレーヤー襲わないように、

 気を付けなさいよ?」

「おぅ、レイナも――遊んでくれてありがとな!

 碧も体貸してくれてサンキューな! またな~!!」

ヒロは笑顔で消える――その瞬間、碧が現れた。


「……え? 碧殿!? これは一体――どういう事でござる?」

「……碧の知り合いだったのね……」

「すみません、お二人共……お久しぶりです、諷君! 実は――」

そして碧は――ヒロの事を諷に話した。



「成程……ヒロ殿は心を持った碧殿の強化データで、碧殿は

 ヒロ殿に体を貸してあげている、と。優しいな、碧殿は。

 ヒロ殿は特別な存在だからこそ、拙者の事もよく知っていた

 ――納得でござる。」

「すみません、ヒロ君が諷君にご迷惑をおかけして……」

「迷惑だなんて、そんな事ないでござる! それより――

 丁度良かった……碧殿に――聞きたい事があったのでな」

「聞きたい事、ですか?」

心当たりがない碧は、首をかしげる……


「――先日蓮殿と戦った時に傷付けてしまったプレーヤーに

 謝りたいと思っていて――碧殿なら知っているかと思って……」

「……えっと、先程ヒロ君も言っていた、椿さんの事ですか?」

「……名前は知らぬが――眼鏡をかけた巫女殿でござる」

「間違いないです、とても優しい方で――少しお話した事が

 あります。……そもそも諷君が椿さんを傷付けてしまったのは

 親衛隊の活動の関係、ですよね?」

「……そうでござる。蓮殿を狙ったはずが――それを庇った巫女殿に

 ダメージを与えてしまってな……初対面のプレーヤーに拙者は――

 せめていつか出会った時に、謝りたいと思ってるでござる」

そう言って、諷は――沈んだ表情を見せる。


「……そんなに気にしなくても大丈夫だと思いますよ?」

「……そうでござるか……?」

「――椿さんもきっと――蓮さんと一緒にクエストに行く事で

 危険が伴う事は覚悟の上だと思いますし、諷君も――

 綾さんの為にした事、ですよね?」

「まぁ……確かにそうでござる」

碧の言葉に、諷は頷く。


「それに――綾さんの目的が蓮さんならきっとまたすぐに……」

「……実は――綾殿の蓮殿への興味は、先日色々あって薄れて……

 だから、余計に会うのは難しいと思うのでござる」

「そう、でしたか……でもいつかきっと――

 自然にまたお会いする時もあると思いますよ?」

「……なんだか、碧殿がそうおっしゃると、

 本当にそんな気がしてしまうでござる――ありがとうでござる!」

「いえいえ、お礼を言うのは僕の方です~!

 今日はヒロ君にも優しくしてくださってありがとうございました」

そして二人は笑顔で礼を言い合った――


「あっ、今度は拙者の時間が――お二方、ありがとうでござる!」

それから魔法が解ける時間となった諷は、二人に頭を下げる。

「私はそんな礼を言われるような事は――」 

「ヒロ殿を止めてくださって、おかげでクエストに集中できたから」

「貴方……律儀な人ね」

「碧殿、またもしお会いして、ヒロ殿が戦いたがってたら――

 その時は遠慮なく教えて欲しいでござる!」

「はいっ! ありがとうございます! ではバイバイです~!」

「バイバイでござる~!」

諷は笑顔で消えていく――



「レイナさん、今日はありがとうございました。

 それと――すみませんでした、その、ヒロ君が……」

「……ヒロがやった事を碧が謝る必要はないわ。

 それより、あの時は殴ってしまって――ごめんなさい」

レイナは碧がヒロの体の時に、ヒロを殴って碧にも痛い思いを

させた事を既に謝っていたが――碧の姿に戻って改めて頭を下げる。


「え? いえいえ! その! ヒロ君が恥ずかしい事を

 おっしゃったので……あれは仕方ないですよ!」

「……あんな事を言わされる方も大変よね……」

ヒロに体を貸している碧は、無理やり言わされているとはいえ、

やはり自分が言っているような気持ちになってしまう……

礼儀正しく、紳士的な碧の口からは考えられない言葉の連発だった。


「……それに、レイナさんを……抱き締めて、しまいました……」

碧は――ヒロに体を乗っ取られていた時に

ヒロがレイナを抱きしめた事を思い出し、赤面する……

「……抱き締め返した方が良かったかしら?」

「えっ……!? えぇっ!?」

予想外の答えに、碧は更に赤面する。


「……まぁヒロがやった事なんだから、気にしないで」

「はっ……はい……分かりました……それと、名前!

 ――素敵な名前をありがとうございます! 一緒に聞けた事も

 ヒロ君の緋、僕の名前に合わせてくださった事も嬉しかったです!」

それから、ヒロの名前を一緒に聞いた時の事を思い返しながら、

幸せそうな笑顔で――碧はレイナに礼を言う。


「碧も気に入ったのなら――良かったわ……それから、改めて

 碧に聞く……碧は――今日ヒロに体を貸して、これからも、

 発動させたいって思った?」

ヒロを発動したら、碧は操作が効かなくなる。今日だって彼に

体を乗っ取らせていた間は、碧が望まないような事を無理やり

言わされたり、させられていた。だから――改めてレイナは……

真剣な眼で碧に問う――


「……何回発動できるかは分からないようですが、

 僕は――少しでも多く、彼に楽しんで生きて欲しいと思います」

碧は迷いなく、レイナを見つめ返す。

「……揺らがないわね。だったら――これからも協力するわ」

「……ありがとうございます!!」

「適度に、よろしくね」

「はいっ! 適度にお願いします~!」

碧は満面の笑顔を浮かべる――


「それと――魔導師の子の件はどうなの?

 ヒロ、謝りたがってたけど――連絡はつきそうなの?」

「あっ……竜君なんですが、携帯電話やパソコンを持っていないそう

 なので――レイナさんみたいにメール等で連絡はできないんです」

碧は残念そうな表情を見せる。


「……だったら、会えた時に話せたら良いわね。その時――

 私達が一緒にいて、ヒロの時間が残ってたら丁度良いんだけど」

「僕が1人の時だったら、竜君に予定を聞いて、それから

 レイナさんにご都合を合わせて頂く形になると思うのですが……」

「分かったわ」

「……それにしても……蓮さんが死なない事は、

 椿さんに知らせるべきかな……」

「……碧?」

「あっ……!なんでもないですっ!」

碧は――ヒロが言っていた、蓮の設定が心に引っかかっていた。




「それにしても――椿って人、蛍が言ってた人と外見似てるみたいだけど

 ……まさかね、僕みたいに変わるのが“普通”だよね……??」

諷は現実世界の――河内光(こうちひかる)の姿に戻った後、呟く。


「……まぁまたいつか会えた時は――その時はその時か。

 それにしても、今頃は――鈴ちゃん、病院……かな」

時計を見ながら――今日は時間が合わず会えなかった、幼馴染の事を

考える。今日はおそらく、鈴奈は――遅めの時間にあの世界に来る――

夜遅くだと家族の目もあって、光は魔法が使い辛い……だから、今日は

会わない事にした。しかし――普段はできる限り……鈴奈とはゲーム

の中で活動時間を共にしている。


「鈴ちゃんが遊び尽くすまで――あの世界で、僕は――

 『諷』として、君を監視し続ける……君がどうするか、見届ける……」


自分の正体を隠し、偽りの存在――綾の親衛隊の「諷」として、鈴奈を

監視する。それは――光が初めて、諷に変身できた時に決めた事。

入院中、見舞いに来た妹が買ってくれたクイズゲームに同梱されていた

コイン……それを手に入れ、BATTLE CHARACTERSのプレーヤーとなった為

鈴奈が綾に変身する瞬間も見る事ができた。……それから、諷は――

ゲーム内で情報を集め、綾の親衛隊の1人となり、今は変身した鈴奈……

綾を監視している。



幼い頃から鈴奈が大好きだった。幼い頃に結婚の約束もしたつもりだった。

なのに、鈴奈は別の男子生徒と付き合った――

光は、2人が別れてしまえば良い……そう、思った。


「無理矢理付き合わされている」


……嘘の噂を流したら、きっと女子生徒は――鈴奈をいじめる。

そうなったら、鈴奈は“彼”と別れるだろう……そう考えた。

そして光の考え通り、鈴奈はいじめられた……しかし、二人は別れなかった。

その代わり――鈴奈は精神崩壊し、学校に通えなくなった――


「違う……僕はこんな事を望んでいない…!

 ただ、二人別れてしまったら良いって、そう思っただけだ……!

 なのに、どうしてこんな事に――……!」


光は反省して、謝りたいと思った。そんな時に外で鈴奈を見つけた。

鈴奈を追いかけた―― その結果、光は事故に逢い、生死をさまよい、

目覚めた時は――下半身に後遺症が残り、1年留年する事が決まっていた。


「……僕の自業自得だって事も分かってる……でも……

 僕を裏切ったり、あの時現実逃避した鈴ちゃんも、鈴ちゃんがいじめ

 られたのに気付かず浮かれてた“あの人”も僕はまだ許せない……

 僕だけこんな体になった運命にも……納得はいかない……

 もう、純粋に……ただ君の事を好きだった頃には戻れないし、

 あんな事で――気が晴れるって訳でもないけれど……

 でも、今は――もう少し、“諷”として――君を見守らせて」


今はもう、好きという感情よりも、恨んでしまう感情が大きくなって

しまっていた。でもゲームの中で、理想の自分を演じている時間、

一緒に遊んでいる時間は――小さい頃に戻っていられるような

気持ちにもなった。純粋に鈴奈の事が大好きだった時のように――


そして光は明日からまた、“諷”を演じ続ける――

鈴奈が現実世界で進み出すまで、鈴奈が“綾”でなくなる時まで。

……それはこれから、もう少し先の物語――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ