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chapterⅤ reality -現実- Ⅴ

蓮と椿がピンチ!?な お話です。

「くそっ……早くしねぇと――他の奴らが復活する――」

蓮は親衛隊の男達はどうにか全員倒したが……

最後の1人――綾がまだ残っていた……

「ふふっ♪ 降参……するぅ?」

箒から降りた綾は、瀕死の蓮に歩み寄り――蓮の剣を奪い取る。


「……誰がするもんかっ!」

今や蓮は、女から容易に剣を奪われる程 衰弱しきった状態――

それにも拘わらず、蓮は綾を睨みつけた。


「そうやって、苦しんでる姿見てると、ドキドキしちゃうなぁ~☆

 やっぱりぃ……美形がそうやって、必死で抗う姿ってぇ……

 ス・テ・キっ♪」

綾は悪魔のような笑みを浮かべる――


「……こんの悪趣味野郎っ……」

「ふふっ☆ ――死にたくなかったら、ほぉら……約束、して?

 この世界で、私の可愛い下僕にな~る事♪ どうせ拒否権なんか

 ないけどぉ……だって蓮、セーブ使ってないんでしょぉ?」

「……てめぇ……どこまで知ってる?

 俺の事……アイツから……どこまで聞いて……?」

「どこまでってぇ……そこまでよぉ? でもでもっ! あのランサぁ君

 ――お偉いさん、なんでしょお? 蓮の事、色々知ってるみたいだし

 蓮倒したらぁ蓮の事好きにして良いって言われたしぃ☆」

「……それは否定しねぇ……それにしても、

 あの……悪魔の野郎は今日はいねぇようだな」

「はぁ? 悪魔ぁ?? 誰それ?? 私、親衛隊の子達の事はぁ

 全員把握してるけど……そんな子いないよぉ?」


「……やっぱり、てめぇの関係者じゃなかったか……

 だからあの時も――俺を追わなかったのか……だったら……

 あの時俺を突き飛ばしたのは……やっぱり……!!」

「なぁに?下手な会話で時間稼ぎでもしようって訳ぇ?

 まぁでも私に勝つのは無理ね。セーブを使っているとはいえ!

 名誉ある『現実組』の『1人目』……私もそれなりの

 プレイ歴の長さなんだしぃ♪」

綾は得意気に、そう言った。


「……1人目……だったのか……」

「……蓮はやっぱりこの単語、知ってるのね……って事は~

 ……3人目が、蓮だった……とかぁ?」

「違う……創造者から聞かされてたから、知っていただけだ」

「……私が現実組って事は知ってたの?」

「そもそも……創造者でも創造者の関係者でもねぇのに

 飛行能力を持っている時点で分かる」

「……あれぇ? 碧君は飛べないのに?」

碧と面識がある綾は――不思議そうに聞き返す。


「……2番目と3番目の奴は2代目のRPGキャラが飛べるはずだ」

「ふ~ん……だったら碧君、2代目は飛べるって事か……

 ふふっ♪ 今度会ったら空のデート、誘ってみよっかな~☆

 3人目は誰か知らないけど、

 4人目の竜が飛べるのは――現実組だから、だったのね」

「てめぇは手慣れているように見える……

 『生粋のゲーマー』みたいな奴だから意外と言えば意外だが」

「そりゃあ、毎日遊んでたら慣れるわよぉ……初めは意味不明

 だったけどぉ、この世界に、この体……こ~んな可愛くて

 ナイスバディな体ぁ……おかげで男はいくらでも寄って来る……!

 だぁれも知らない……現実の私が――裏でこんな事してるなんて

 ……み~んな知らない……つまらない現実世界の奴らは、み~んな

 『本当の私』を知らない……! いっその事、この世界が

 現実だと良かったのにぃ……そうは思わない? 蓮?」

「……ざけんな……」

蓮は静かに呟いた――


「え……?」

「このゲーム……『BATTLE CHARACTERS』は――

 現実だが、虚構だから――成り立ってる……!! 1日1時間しか

 できねぇのも、てめぇみたいな自制心のない野郎を――中毒者に

 させねぇ為だ……それに『現実組』の奴らは……現実世界で

 現実逃避を望んだ、心の弱ぇ奴らだ……

 何が名誉だ……不名誉でしかねぇ……!」

蓮がそう告げた瞬間――

「……目的、変わっちゃったぁ……」

「……っ……」

魔女は蓮の首筋に、先程奪った剣を当てる――

「……今の状況わかってるぅ? 私……今すぐ蓮のデータ、リセット

 できるのよぉ? それに……私にそんな口聞いて許されると思ってる

 のぉ? 私は、弱くなんかない……! 碧君だって、竜だって……!

 私達を……現実組を……バカにしないでっ……!!」

そして、綾が蓮に向かって攻撃しようとした瞬間――


「……そこまでです……!!」

「!? なっ……メガネっ子ぉっ!? あんた死んだはずじゃっ

 ……回復早すぎ~!! どっからわいてきたのよぉっ!?」

「……生憎、私はこのゲーム超初心者なので弱い……

 でも、復活は早いんです! これ以上、蓮さんを苦しめないで

 下さい……!!」

驚く綾の前に椿は現れる――

 

「……アンタよくこんな男と一緒にいるわよね……

 この男、守る価値あるの?」

綾はそんな椿を睨み――そう言い捨てる。

「え……?」

「顔が良くて強いからぁ親衛隊の一人にいいかな~って思ってたけど

 こんなイライラしてばっかりで、説教じみた事ばっかり言って

 人の事すぐにバカにするつまらない男、関わる価値なんてない

 ……アンタ、何か弱みでも握られてるの??」


「私は……正直……蓮さんの事は知らない事の方が多いです……

 でも少なくとも、蓮さんの事、つまらない方だとか関わる

 価値がないとかは――思いません。蓮さんは律儀な方ですし

 私の疑問にもちゃんと答えてくれました。現実世界での事も

 しっかり考えていらっしゃるようで……私は尊敬しています。

 ……むしろ、弱みを握られてるのは蓮さんの方ですし……

 昂さんのお考えで一緒にいて頂いているというか……

 つまらなくて関わる価値がないのは――私の事だと思いますので

 ……その、蓮さん! ご迷惑をおかけしてしまってすみません!」

綾との話の途中――椿は蓮の方を振り向き、頭を下げた。


「って!? なんでそこで謝るんだてめぇは!?」

「……だって私は蓮さんにとって――」


椿の心によぎる……


「俺の視界からさっさと消えろ」

「……お前は、もう俺にとっては他人だ……

 てめぇの事なんか知ったこっちゃねぇ……」

「大体なんで俺がこんな見ず知らずも同然の

 女と組まないといけないんだ!?」

「足引っ張るんじゃねぇよ!!」

「お前に何がわかるっ!?」


蓮に言われた、強烈な言葉の数々――


「……確かに今日てめぇとクエスト行かされたのは創造者のせいで

 無理矢理だ……でもてめぇの事、つまらなくて関わる価値が

 ないとか……迷惑かけてるとか……そこまでは思ってねぇ」

「え……??」

「……って!……なんで俺、

 コイツをフォローするような事言ってるんだ……!?」

「そう……ですか、お気遣い頂いて、無理矢理言わせて

 しまったかもしれませんが……ご迷惑じゃなかったら

 安心しました……嬉しいです!! 今日は私とのクエストに

 付き合ってくださって本当にありがとうございます!!」

「……なんでそこで礼を言うんだてめぇは!」

嬉しそうに微笑む椿に――蓮はツッコミを入れる。



「……」


「本当に、良かったのかな……? 私は……君の事が好きだけど……

 私なんかがその……君の彼女で、迷惑じゃないかな?」

「迷惑なんかじゃねーよ! ……の事好きだったから……

 告白してもらえて――付き合えて、すっげー嬉しい!」

蓮と椿――2人の会話を聞きながら、綾は思い出す……

それはかつて現実世界で、1人の男子と付き合っていた時の記憶――



「なんか……ムカつく……今のアンタ……

 ……君だけを好きだった頃の私みたい……」

「……え……?」

「……興醒め……蓮みたいな奴、私にはいらないし、貴重な魔力

 使って倒す価値もない。そうする位なら、親衛隊にサービスする」

そう言って、綾は――蓮の剣を捨て、あっという間に姿を消した……


「……消えた……良かった……間に合って――」

あっさり消えてしまった綾に驚きながらも安心した椿は――

回復薬を飲む蓮の傍に駆け寄る。

「……てめぇ……」

「……わかってます、回復魔法は使うな、ですよね?」

「……」

蓮は自分が言おうとした事を先に言われ、口を閉ざす――


「……蓮さんが望むのなら、私は回復魔法は使いません――

 ただ此処にいる事は、お許し頂けると嬉しいです」

「……さっき俺の目の前で死んだのは――

 バグか、妙なシステムが働いたからか?」

「それに関しては、先程まで――昂さんと話したのですが、

 昂さんのお話によると、私が蓮さんに死んでほしくないって

 思ったから瞬間移動できたみたいなんです」

「……あの野郎、余計な事を……アイツの事だ……

 何か色々妙な事を言っていたんだろうな」

「……えっと現実世界の蓮さんは音楽ゲームや歌を歌うのが

 お得意とか……」

「あいつっ……!! 人の趣味の事を勝手に……!!」

「……本当……だったんですね……」

正直半信半疑の部分を挙げて蓮の反応を見る限り

嘘ではなかった様子……


「……とにかくご無事でよかったです……それと……あの魔女の方が

 襲撃される前―― 詳しい事も知らずに、いいかげんな事を言って

 しまって申し訳ありませんでした……!!」

「え……?」

先程謝っていたにも拘わらず、また頭を下げて謝る椿に蓮は驚く――


「……昂さんから、色々とお話を聞きました……でも……結局私は

 ――蓮さんが具体的に何を望んでいらっしゃるのか、どうして――

 ここまで真剣にこのゲームをプレイされているか、わからない

 ままで――こんな状態のまま……またいい加減な事を言うと

 また不快な気持ちになってしまうかもしれなくて申し訳ないとは

 思いますが…これだけは、言えます……」


そして、椿は一瞬息を置く――


「私は、蓮さんに……幸せになって頂きたいです……!!」


「なっ……!?」

真剣に、蓮を見つめて発した言葉――

その言葉に――思わず蓮も一瞬で赤面した……


「あっ……あのっ……すみませんっ……

 上手く言えないのですが……そのっ……っきゃっ!!?」

その瞬間……何者かが椿の着物の裾を勢い良く引っ張った。

ビルの上にいた椿は……地面に向かって真っ逆さまに――


「……嘘っ……!? ……誰……? ……悪魔……??」

一瞬だけ、姿が見えた――

髪で顔が隠れていて、瞳は見えなかったが

空を飛ぶ悪魔の少年は――意味ありげに笑っていた……

「って!! 両足っ……! 両足つかなきゃまた死んじゃう……!?

 でもどうするの!? どうやったら両足ってつくの!?

 きゃああぁぁっ!!」

猛スピードで近付くコンクリート――

死なない為に、足を着く余裕も何もない――

もうダメー―……!! そう思った瞬間、


「……?」

確かに落ちたはずだった――だが、痛みはない……

「はぁっ……はぁっ……」

一方、椿の耳元では――蓮の激しい息遣いが聞こえる……

「え……??」

椿はおそるおそる目を開く――

「……間に……合った……」

「……蓮……さん……?」

椿の体は蓮の腕の中――椿が落下した瞬間、

蓮もとっさに飛び降り、息を切らしながらも

地面に落ちる直前、椿の体を受け止めていた……


「なんで……いきなり……落ちてるんだ――てめぇは!?」

「えっと……あの……見間違いかもしれませんが、

 悪魔の方が私の着物の裾を――……」

そう言って椿は空を見上げるが――悪魔の少年は消えていた。


「悪魔……だと……!?

 あの野郎……今のも……俺を試したのか……!?」

「蓮さん、あの方の事、ご存じなんですか!?」

「……おそらく……あいつは――」

「……って! それより!! 蓮さんのお体は!?

 回復途中でしたよね!?」

「俺をなめるなっ……ある程度は回復してる……!!」

蓮は強がってはいるが――

かなり無茶をして椿を助けたようだった……


「……勘違いするなよ!? さっき死なせたのは俺のせいでもあるし

 ……魔女の野郎に殺されかけてたのも事実だ……だから借りは

 返すって意味でっ……! それにまた俺の前で死なれたら

 胸くそ悪いからって理由だからな!?」

「はっ……はい、ありがとうございます……

 ……という事はこれは、蓮さんの……ご意思、なんでしょうか?」

「は? 何言ってやがる? 俺の意思以外に何が――??」

「なんというか、昂さんにそういう設定をされた……的なのではなく?」

「? 俺はそんな設定されてねぇけど……って!? なんでそこで泣く!?」

予想外に涙を浮かべる椿に――蓮は困惑する。


「あのっ……その嬉しくて……回復途中なのに、こんな危険を

 おかしてでも、今蓮さんのご意思で私を助けてくださった事が……

 本当に……ありがとうございます……!」

「……!! くそっ……なんなんだこの女は……俺は嫌われるべき

 なのに、なんで喜ばせてるんだ……何をやっているんだ俺は……

 調子狂う……今のも創造者の設定だったって嘘つきゃ良かった……」

椿を下ろしながら――心の中で蓮は呟く。


「でも、本当に私の事はお気になさらないで下さい……!

 私はセーブも使ってますし……蓮さんの為でしたら、この世界で

 死ぬのは大丈夫ですから……! どうか、ご無理はなさらないで

 下さい!! 私のせいで蓮さんが危険な目に遭うのは嫌です……

 せっかく積み上げてきた経験値を無駄になんかできません…!」

「……てめぇは……本っ当っっに、他人の事ばっかだな」

「そう……ですか……??」

蓮の言葉に、椿はきょとんとした表情を浮かべる――


「……やっぱり、助けてくれたね、蓮……椿ちゃん、

 君ならきっとなれる、蓮にとっての乙姫様……蓮も楽しみながら

 償えるようになる……あの時の……君みたいに――」

2人を見守る昂は微笑み、“彼”との出会いを思い返す――


----------------------------------


「楽しみながら、償えば良いんだよ」


それは――現実世界の昂が、椿の姿を初めて見た日、

初めて出会った”彼”に言った言葉――当時の”彼”を救った

今の“彼”の生き方に繋がる言葉――


「……俺のせいで……村上は学校に来れなくなった……

 俺がもっと……早く気付いて何かできてたら……!

 藤岡さんも……あんな……あんな辛い気持ちにさせて……!!

 戻ってきてくれ……話をさせてくれ……村上……村上……!」


それは――椿と蛍のやり取りを見守っていた時に聞こえた、

その少年の――心の叫び。当時”彼”の心の中を読んで知った過去……

詳しい事情を知らずに言った、自分は無責任だったかもしれない。

でも――罪悪感に苛まれる彼を、現実世界の昂は放っておけなかった。


「僕は“ショウ”。漢字は『星』……変わってるでしょ?」

「『…』に『………』で『……』」

ただ一度きりの出会いだったが――その時、本名も名乗り合っていた……


「……君……今、君はどうしてる……? 君にとっての

 “大切な人”にまた、会う事は――できているのかな……?」


その時、自分が彼の神頼みを止めてしまった。それで良かった……

とは思うが、その事で彼はその時椿と出会う事がなくなった……

そして昂は知らない……彼はもう既に、椿と同じ高校に通っていて

椿と関わっている事――それから、彼の“大切な人”は――


----------------------------------


「おかえりなさい、ひかるおにいちゃん!」

「……ただいま、蛍」

一方――椿達が住む町の近く、一人の少年が――帰宅する。

蛍と呼ばれた小さな少女が――

光と呼んだ少年を笑顔で出迎え、彼も微笑み返す。


「……今日も負け戦、だったな……まぁあの蓮を不意打ち以外で

 正面突破するのはやっぱり無謀だったよね……

 それに敗因はそもそも……にしても……あの巫女――」

心の中での呟きを終えた後、光は蛍に問う――


「そういえばさ、蛍が前に言ってた――

 僕が入院してた時に知り合った巫女の人って、どんな人だったっけ」

「つばきおねえちゃん? くろいかみで、めがねかけてたよ」

「……まさか……ね。まぁどこにでもいそうなデザインだし

 僕くらい変わるのが、普通だろうし。でも……今度一応、

 碧辺りに探り入れとこっかな。……基本的にプレーヤー全員に

 声かけてる碧だったら、名前くらい知ってるだろうし……ね」

心の中で思索する――次にRPG化した時の事を……

「どうしたの?」

「――僕の回復を願ってくれたその巫女の人に……

 いつか、会ってみたいかも……なんてね」


先程までRPG化し蓮と戦い――今日も蓮に殺された。

そして今日、椿を殺めた侍・(いさむ)……

本名・河内(こうち)光は、意味ありげに笑っていた――

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