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chapterⅣ mind -本心- Ⅱ

蓮と強化データの元に椿が駆け付けて…!? 強化データが実は色々と重要な事を言っているかもしれないお話です。

「……もう、限界だ……!!」

そう言って蓮は――近くの木にもたれかかる。

急所は逸れていたとはいえ、大量の血が流れていた……

もう攻撃する気力も残っていなかった。

そうして、回復薬を飲み出す。


「……殺さないん、だな」

剣士は不思議そうに蓮を見る――

「……どうせ大した経験値にはならねぇだろ……

 プレイヤー同士の潰し合いばっかにならねぇように……プレイヤー

 殺しても大した経験値にならないって創造者も設定しているはずだ……

 それはきっと……てめぇも例外ではない……てめぇが乗っ取ってるのは

 プレイヤーの1人だし……第一これ以上は俺の体力ももたねぇし、

 つーか今だって死にそうな位だ」

「……その心配はねぇよ、てめぇはそもそも――」

「……??」

「……あれ? 言えねぇ……これ以上はプロテクト、か……」

剣士は何かを言おうとしたが、上手く言葉が出ない様子……。


「まぁ、大した情報じゃねぇだろうな」

「……蓮、ありがと、な」

「……はぁっ!? 何言ってやがる!? 気持ち悪っバグか!?」

先程まで自分を殺そうとしていた強化データがいきなり礼を言い出した……

予想外の言葉に蓮は困惑する……

「……へっ……バグじゃねぇっての……

 こういう時は――『どういたしまして』じゃね?」

「てめぇに礼を言われる筋合いねぇし!!」

強化データの言葉に、蓮はツッコミを入れる……


「……今日は、すっげー楽しかったから!

 蓮は強ぇから戦いがいあったし!」

そう言って――強化データは満面の笑顔を浮かべる。

それは――

先程まで自分を殺そうとしていたとは思えない、無邪気な表情だった。

「……プレイヤー殺して、重傷負わせた事も、か」

「ああ、俺様血ぃ好きだから……いっぱい見れて楽しかったぜ?

 それに――初めて、『自分の体』動かせて、こうやって言葉も発せられて」

「……そう、か」

他プレイヤーを殺した事さえ楽しかった。血を見るのが楽しかった。

その気持ちはきっと狂っている。

だけど、強い相手と戦った時の楽しさ、自分の体を自由にできた楽しさ――

それはきっと、狂った感情ではない。

普通の人間とも通じる、楽しさだろうから……


「また逢えたら――その時は……

 今日が最初で、最後になるかは……まぁ、碧とレイナ次第、だけど……な」

「……」

彼がまた蓮に会えるかは――定かではない。

今後碧とレイナが彼を発動させるかどうか、それ次第……

昂からも事情を聞かされていた蓮は無言だった――


「……俺様には事情とか、よく分からねぇけど、さ……

 なんとなく、蓮……お前は、悪い奴じゃない気がする」

「……はぁっ!?」

根拠のない、思いがけない言葉に――蓮は困惑する……

「血が嫌いなくせに、そうやって、戦って、苦しんで……

 お前が大好きな創造者に、いつか――」

「!? 何言ってやがる!? 俺は――」

「だから――戦ってるんだろ?」

「……!!」

強化データは、見透かすように――蓮を見る。

創造者である昂の手で作られた強化データ、

昂の息子……というのは言い過ぎかもしれないが、昂の情報を受け継ぐ存在。

そして――その想いも受け継いでいるのかもしれない。

蓮の中で少しだけ、強化データが昂の姿と重なった――


「俺様は……創造者の手によって創られた……だから、俺様も――本能的に、

 かもしれねぇけどさ、俺様みたいに……蓮にもこの世界を――」



「蓮さんっ!?」

2人の会話の途中――椿が現れる。

椿が駆け付けると、そこには……血塗れの蓮、

そして――1人で苦しむ――碧に似たデザインの剣士の姿があった……

「ご無事ですかっ!?今すぐ――」

蓮を心配した椿は――即座に回復魔法をさせようとした……しかし――


「俺に近付くな!!」

「……!?」

蓮は椿を睨み、拒絶したのだった……

「でも……すごい怪我っ……!!」

「――今は回復薬があるから、てめぇの回復魔法は必要ねぇ」

「けど……回復魔法の方が――」

即効性も高いし、回復力も大きい、アイテムの消費も減らせる……

そう続けて魔法を使う前に――蓮は、椿に剣を向けた。


「……余計な事をしたら、殺す」

「……!?」

「俺に構うな!!」

「でも……」

「俺はもう誰の助けも借りねぇ……

 それに――お前との関係は、魔力を返した時点で……終わってる」

「そんな……」

蓮の激しい拒絶に、ショックを受ける椿――

そんな椿に、ゆっくりと『彼』は近付いた。



「そういえば……お前が……『椿』……か……?」

「はっはいっ……! ……え……??」

自分の名前を呼ばれ――振り向くと……

先程まで蓮と戦っていた、竜に重傷を負わせ――

自分や桃も殺そうとした、血塗れで苦しむ、碧の強化データの姿があった。


「大丈夫ですか!? 貴方も……」

自分達を殺そうとした……

でも、目の前で苦しんでいる、自分の名前を

呼んだ彼の苦しむ姿を見て――椿はとっさに回復魔法を発動させる。

「……はっ……さっき俺様、お前……殺そうとしたのに……使うのか……」

「だって……こんなに苦しそうで……それにさっきのも……

 何か……理由があって……ですよ、ね……?」

回復魔法を使用したら――回復した後、自分は殺されるかもしれない。

でも、椿は――色々な事に、納得ができていなかった。

彼は――碧に似た姿をしている。

碧と何か関係があるかもしれない……

そもそも何故竜や自分達を襲ったのか……話したら、何か分かるかもしれない。

ただ単に誰かを攻撃したかっただけなのか……

それは彼の心からの願いなのか――

納得できない気持ちのまま、彼を放っておく事はできなかった……



「……だからこそ――『創造者』は……お前を――」

「え……?」

「ありがとう、でも効果はねぇから……使わなくて、いいぜ」

強化データは嬉しそうに、笑顔を浮かべる。


「だったら、どうすれば――!?」

「何もしなくていい、それにきっともうすぐ――」

「でも何かっ……」

「だから……お前を、選んだんだな――

 余計なお世話かもしれねー……けど……『椿』」

「……!?」


そして――強化データは椿の耳元で囁くように言った。


「蓮を、救ってやってくれ……」


「……えっ……??」

先程まで蓮や椿を殺そうとした、そんな強化データの言葉。

信じられなかった、でも……偽りないように、聞こえた――



「やっと……見付けた……!!」

「!?」

そして――3人の前に、美しい天使が現れた。

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