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chapterⅣ mind -本心- Ⅰ

蓮と強化データのお話と、竜と桃のお話。 今年最初の投稿です。引き続き毎週投稿&chapterⅩⅠまで公開が今年の目標です。

「……っ……!?」

蓮は左胸の近くに酷い傷を負っていた――しかし、急所は逸れていた……

理由は――剣士が立膝をつき、倒れそうになったからだった。

「ぐあぁぁぁっ!!?」

口から――吐き出される、血。剣士は一人で苦しみ出した。


「『状態維持』ができなくなったみてぇだな……」

「はぁっ……くそっ……!! 魔力か……時間切れか……」

それは2人共予期していた事、強化データがプレイヤーを乗っ取り

強化データの意志により動かされる……

その「終わり」の時が近付いた証――


「……こうなったてめぇは――制御データがくるまで

 苦しむだけだ……終わったぜ……これで満足か創造者……!」

蓮は――世界の『どこか』で見ているであろう、

この世界の創造者に向かって告げる――

「くそっ……!!

 はぁっ……あっ……くぅぅっっ……これが……!?」

「てめぇ……俺の事をあれだけ知っておいて、自分の事は知らねぇ訳

 ねぇよな? てめぇが“2人目”の体を乗っ取っていられる“条件”……」


「……っ……苦しっ……」

「――その苦しみからの解放は回復アイテムじゃあ通用しねぇ……

 今の状態を解除できるのは……おそらく……

 創造者と……創造者に制御データを託された奴だけだ……」

苦しみ続ける剣士に蓮は――そう言い捨てた。


「はっ……まぁ……予想はしてた……けど……

 いっその事、1回死んだ方が楽かもしれねぇ、な……

 てめぇは俺を殺さねぇのか……? 殺した方が上がるだろ、経験値」

「……そう、かもな……」

剣士の言葉に……蓮は――静かに同意した。




「……んっ……」

「……生きてる? バカ男」

一方、椿が去った後――竜は目を覚ます。


「……桃……?」

「……!! だから名前で呼ばないでって!!

 っていうか目覚めたなら起き上がりなさいよ!!

 いつまで私の上にいるの!?」

「あ~悪ぃ……なんか結構寝心地良かった気がして……

 そっか……なるほど……」

起き上がった竜は……状況を察すると笑顔を浮かべ、桃を見つめる。


「!? なっ……何よ!?」

「膝枕と回復魔法、サンキューな!」

「……別にっ……!!

 自分のせいで死なれたら気分悪いからでっ……!!」

 大体アンタがセーブ使ってたらわざわざこんな事……!!」

竜のストレートな礼の言葉に、桃は赤面する。


「……セーブの話、覚えてくれてたって事だよな」

「それは……! アンタの弱点の一つだからに決まってるでしょ!!」

「それでも嬉しい、ありがとう」

「……っ……!! どうして……どうして……私なんか助けたのよ!?

 バカじゃないの!? ……っていうかバグったの!?」

一方、桃は――自分を助けた竜を諌める。


「……バグじゃねぇよ、100%俺の意思。

 仕方ねぇだろ、いやなんか助けなきゃな~って思ったら……

 反射的にっていうか、結果的に失敗して俺重傷っぽかったけど」

「重傷だったわよ! ってか死にそうだったんだから!!

 私はアンタとは違って初期化しない……!!だから助ける必要も――」

「でも、痛いのは嫌だろ?」

当たり前のように、竜は――答える。


「それはそう、だけど……アンタはデータ全部かかってるじゃないっ!!」

「……まっ全部消えるより、目の前でお前に死なれる方が気分悪いしなー

 消えた時は消えた時で仕方なかったんじゃね? それにほら、現に

 こうして治ってる訳だし問題ねーよ。それに俺は痛みとか慣れてるし

 ……こっちでも……あっちでも。だから全然平気」

「……まさかアンタってドM?」

「M? 何のサイズだ??」

「……知らないならいい」

不思議そうに聞き返す竜に――桃はあきれる。


「それに……てめぇになら、殺されても別にいいかもなって思うし」

「は……?」

「なーんてな、いつか見せてくれよな。初めて会った時

 出そうとしたドラゴン……今度こそ上手く、召喚してくれよ」

竜は――その時の事を思い出しながら、桃に笑顔を向ける。


「……確約はできない……けど……考えといてあげる……」

「え? 意外だな。絶対ぇ拒否ると思ったのに」

「それは……だって……その……それ位のお礼はっていうか……

 さっきは……その……助けてくれて……あり……がとう……」

いつも竜に対しては怒ってばかりの桃が――

照れながら、たどたどしく――だけど、確実に……竜に礼を述べる。


「……いつも俺に怒ってばっかのお前に礼言われると、

 なんか違和感すげぇな。」

「なっ……失礼過ぎないっ!?」

「ははっ……どういたしまして。にしても、よくここまで

 回復したよな……お前、大分魔力消費してんだろ……?」

僧侶系以外にとっては難易度の高い、他人への回復魔法――

桃の魔力はほとんど残っていなかった。


「ほとんどは椿ちゃんがやってくれたから、

 そこまで消費はしてないけど……」

「ああ、また眼鏡っ子にも礼言わなきゃだな~でもちょっとの

 回復でも結構使うよな、魔力……悪ぃな、俺のせいで」

「……それは……今日は……その……助けてくれた訳だし……

 気を遣う必要な――……!?」


桃の言葉の途中――竜は強引に桃の唇を奪った。


「……んっ!? ……んうっ……!?」

――竜が舌を絡めると、桃の体に竜の持つ魔力が流れ込む――

「……っ……!!」

初めて口の中を侵食していく、他人の舌。

桃の舌の表面、舌の裏、歯茎や歯の裏側まで、

1つ1つを確かめるように、熱く、深く、入り込む……

2人の口の中で、粘液が混ざり合って、溶け合う……

それと同時に、竜の生温かい魔力が――桃の体に入り込んでいく……

桃の体中の血液と同化していく――体中がしびれるような感覚……

何が起こっているのか分からない……

怖くて、目を開ける事もできない――どうする事もできず、

されるがまま――息継ぎをする、余裕もなかった……


「……はぁっ……はぁっ……」

「あっ……悪ぃ、苦しかったか? でもこれで多分元はとれ――」

不意打ちの譲渡に息を切らす桃に対して――

魔力の譲渡を終えた竜は……一度は申し訳なさそうな

表情を浮かべるも、笑いながら、こう言った。

そんな表情をみた桃は――我に返り、瞬時に表情が変わる――

そして――


「……痛っ……!!? なっ……!?」

竜の頬を思い切り叩いた――

「いきなりっ……何すんのよっ!? 最低っ!!」

そう言い残し、桃は姿を消した――


「なんでアイツ……あんなに怒ったんだ……?

 ……嫌なら突き飛ばすなり、俺の舌かむなり……

 抵抗すればいいじゃねーか……あれだけ長くやってて

 拒まなかったって、俺的に謎なんだけど……

 それに――別にイーじゃねぇか……

 どうせゲームの体、なんだし……訳わかんねぇ……」

竜は呆然としていた――


「なんなのよっ!? アイツ……普通あんな真似……」

勢いで現実世界に戻った雷音は――独り言で、竜を諌める。

「しかも舌まで入れっ……」

ゲームだとはいえ、口の中が今も――熱く、感じた――

自分の口の中を侵食した、生温かい――

忘れられない、竜の舌の感触……


「なんで……!? ゲーム……ゲームなのに……

 ……こんなに感触……まだ残って――っ……!!」

混乱した雷音は、椿達の事を考える余地もなかったのだった――

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