彼女はトルネード
彼女はトルネードだ。
そう言ってしまうと、トルネードに性別があるのか、それが分かるお前はハリケーンか何かなのか、などと野次が飛んできてしまうかもしれないが、私は何の変哲もない男子高生だし、そんな彼女もまた何の変哲もない女子高生である。
トルネードというのは、あくまで比喩である。良く言えば天真爛漫、悪く言えばやかましい彼女は、私に多大な被害を与える。朝に顔を合わせるなり、挨拶と共に私の背中をばしばしと叩いてくるし、帰り道は事あるごとにジュースをたかってくるし、思い返せばよく私に絡んでくる。そんなにイジり甲斐がある人間ではないと思うのだが。
彼女と接すると毎回、竜巻に何もかもを根こそぎ吹き飛ばされたかのような心境に陥ってしまう。有り体に言えば、スキンシップが激し過ぎて疲れてしまった。
溜まりかねた私は彼女に『なぜこうも私に付きまとうのか』と尋ねた。
「あほか。こんなこと、好きな奴にしかしねーよ」
彼女は私の腹に一発のパンチを残し、去っていった。打たれた部位を庇い、うずくまりながらも、私は彼女が頬を赤らめていたことを見逃さなかった。今までとは違う意味で、私の心は大きく荒らされていた。
やはり彼女は、トルネードだ。