3、宴、そして彼女の事情
あいも変わらずキリが悪い…
自分のペースで投稿するので間隔が空くことがこれからも予想されます。ご注意を。
その夜、広場は崩れた家屋を木材に、大きな炎が焚かれた。その周りをご馳走が囲んでいる。
「うわー、すっごい…。家とかはそんなに損害無いとはいえ、半日でここまで出来るもの?」
「普通なら、もっと被害が出てたからね。今回はかなりマシな方。それに、エレインがみんなの怪我治してたじゃん。それで元気有り余ったからだと思うよ。」
怪我人の手当を終え、夜まで休んでから外に出ると、村は祭り一色になっていた。
「お、本日の主役がいらしたぞ。」
「エレインさん、ありがとう!」
「テッド、よくやった!」
村の人たちから口々に感謝を言われつつ、進められ、広場中央にたどり着いた。そうして、飲み物やら食べ物やらを次々に渡され、質問責めにあう。
「どうしてこの村へ? へぇー、王都に向かう途中なんだ。」
「魔法ってどうしたら使えるんですか? 生まれ持っての素質かぁ…」
「お姉ちゃん、どこから来たの? うーん…知らないとこだ」
「エレインさんって彼氏とかは…「ちょっと待った!」」
テッドが止めにかかる。
「みんな落ち着けって。エレイン困ってるじゃん!こっち来て。」
「おい、テッド!」「聞きたいことあったのに……。」「覚えてろよ!」
村人の残念そうな声が聞こえるが無視して、テッドは歩いていく。そして村長の家へ再び案内した。
「ごめんな、みんな悪いやつじゃないんだけど。」
「分かってるって。でも、あんな風に構われるの初めてでびっくりしたかな。でも、後々大丈夫?」
「う……。まぁなんとかなるよ。みんなのこと嫌に思ってないなら良かったよ。ところでさ、一つ気になったんだが、どうして王都に向かってるか聞いてもいい?」
「え?あぁ、構わないわよ。この村にも関係ある事だと思うんだけどね、上納に関して意見書を出したいんだ。私、ここより奥のカルンの村ってとこに住んでるんだけど、去年から納税が急に多くなってね、長老様が別のいくつかの村や集落に確認をとったら、どこも同じ状況で苦しんでるみたいなの」
「それってさ、この辺の領主様に言うことなんじゃない?」
「もうやったけど駄目だったみたい。だからもっと上まで行ってしまえってね。」
「いや、余計無理だと思うけど!」
「テッドの言う通りじゃよ、お嬢さん。」
「村長!?」
2人が振り向く先には村長がいた。家主が帰って来たのだ。
「いや、すまんの。話が聞こえてしまってな。それで、話を聞く限りだと城へ向かうようなのだが……、こんな田舎ものは門前払いされるのがオチであろう。このガナットとて急な増税には苦労も多いが、貴族からのお達しには逆らえまい。」
「っ、やはりこの村も……。確かに、可能性は低いかもしれません。しかし、だからといって諦めては何も変わりません。私は私のことを受け入れてくれたカロンのみんなに恩返しがしたい……。だから、厳しいからと諦めはしません。行きます。」
途中、自分に言い聞かせるように呟く。そして、一点の曇りも無くまっすぐとした瞳でエレインは言い放った。
「そうか……。ならば、敢えて止めはせぬ。そもそも、わしに止められる権利もないしな。一つ提案がある。このガナット村も奏上に加わらせて頂きたい。その代わり、テッドを連れて行かせよう。腕っ節はこの村随一だ。用心棒にはなるだろう。」
「へ?村長?」「えっ?」
テッドとエレインは素っ頓狂な声を出し、お互いに顔を見合わせた。