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序
少年にその知らせがもたらされたのは、彼がまだ五歳のころだった。
「お父上とお母上が亡くなりました。お二人は王国の誇り高き軍人として魔族と戦い……」
彼の不運だったのは、幼いながらに聡明だったことである。五歳にしてその意味するすべてを理解した少年は、悲しみ、そして憎んだ。
その爆風は大地をえぐり、木々を吹き飛ばし、がれきの山を築き上げた。辺りには正体不明の毒が発生し、美しい地を一瞬で死の砂漠へ変貌させた。
弱小貴族出身の少年の魔法は、十年行方知れずで、ある日ポッと帰ってきた少年の魔法は、まさに神話の世界にしか語られなかった、神々の御業そのものだった。
そして、人々は思った。
ああ、人類に「救世主」が現れたのだと。