三の華・遊び方
くちなしの香りはいかがです?
蜜蝋燭のそれと混じって、なんともいえない馨しい香りがするでしょう?
お茶のおかわりは……?
そうですか。時にあなた、幼いころに妖精で遊んだことはございますか?
え? 妖精「と」? 妖精「と」ではありません、妖精「で」……でございます。
ははあ、その様子ではご存じないのですな。
あなた「花隠し」という遊びはおなじみがなかったのでございましょう。
花隠し……「花」は隠語でございます。つまりは妖精を土に埋めて遊ぶのですよ。わたしがごくごく幼いころに、秘めやかに流行った遊びでございます。
この遊びはですな、まずは頃合いの妖精を見つけることから始まります。
妖精にもそれはいろいろおりまして……種類のことではございません、気性のことでございます。
こちらに見つかったとたんに剣突を食らわしたり、歯をむいて「いーい」をするような妖精は、この遊びには向きません。
木の葉の裏にひそんでいて、見つかったとたんにきゅっと気絶してしまうような、気の弱いのが向いております。
で、その気の弱いのを捕まえてですな、あらかじめ掘っておいた地面の穴に埋めるのです。
何もただ埋めようというのではない、とりどりの花や小さなとんぼ珠なんぞをあしらって、硝子の欠片でふたをする……その上からそうっと土をかけるのです。
いわば花葬ですな。
そうして隠した子たちが鬼の子たちを呼びに行き、鬼の子たちは土に埋まった妖精たちを探すのです。いわば、うがった隠れんぼうのようなもので。
妖精はいっぺん気を失って花葬されると、たいていはそのまま目を覚ましません。子どもたちもそれを承知で、埋めっぱなしに家へ帰ってしまうのです。
たまに気まぐれで昔の墓を掘り返すと、妖精は溶けて水になっていましたよ。良い香りのする水の中に、しおれた花ととんぼ珠と、羽根だけが浮いておりました。
その水を「香水だ」と誰かがふざけて言いましたが……私どもの中には、その水を肌につけるほど肝の太い輩はおりませんでした。
わたし? はは、わたしのような気の弱いのは、この遊び、二三回で音を上げました。どうにも可哀想でねえ……。
けれどもまわりの皆は、そこそこ楽しんでやっているようでした。
なにぶんこんな遊びは、かえって邪気のない子どもだからこそ出来る芸当で。長じるごとに皆もやらなくなったようです。
大人になったらこんなふわふわした残酷な遊びは、とうていやる気も起きますまいよ。まともな方は妖精が可哀想になる。そうでない方はもっと悲惨で残酷な、苛み方をお見つけになる……。
子どもばかりが出来る遊び、花隠し……。
ははは、まあやらないに越したことはありませんがね。
だがまあ子どものうちに虫も殺さず、いつでも机に向かって勉学し、大人になって人を殺める輩も増えている昨今は、それも良し悪しでございましょう。
お茶菓子のおかわりはいかがです?
ここいらでお茶の種類を変えましょうか?
さあ、今度は少し気どって紅茶をどうぞ。
茶葉は上質のアールグレイでございます。
お茶菓子も少し品を変えて、紅茶葉入りのスコーンなぞを……。