二の華・種類と愛で方
はい、お待たせいたしました。
蜜蝋燭の燃え方はいかがでしょう? お茶のおかわりもございますよ。
さて、妖精の話ですね。
妖精には動物性のものもおります。植物性のものもおります。
動物性のものにもじっとしてふだん動かないものがいたり、植物性のものにも動き回って動物の血を吸って生きるのもおります。
人間の頭で考える「動物」と「植物」の枠にははまらないものでございます。
え? 『じゃあいったいどこで見分ける』?
そうですね、わたしは専門家ではないですし、一概には言えませんが……分かりやすいのは「味で見分ける」と申します。
え? 味ですよ? 味です。がりっとね……腕でも足でも、なんなら頭でも、がりっと噛んでみるのです。出た血と裂けた肉の味で、その妖精が動物性か植物性かが分かると申します。
動物性なら鉄の臭いが濃く香って、植物性なら青臭い、もしくは花の蜜のような香りがすると……われわれ妖精に関わる仕事の輩の間では、ごく有名な話ですよ。
ははは、まあ動物性か植物性かなんぞというのは、それこそ食用の妖精にしか関係のない話ですがね!
普段づかいに妖精を飼おうといわれる方々には、ほとんど関係も興味もない話でしょうが……。
まあ妖精という生き物は、われわれ人間にしてみればおおむね「愛でる」対象ですしね。
「愛で方」は人によってもいろいろ。
こう言ってはなんですが虐待する、虐殺するのを「愛でる」と言ってはばからない方々も、この業界には多くいらっしゃいますね。
ええ、いたぶり方、殺し方もそれはいろいろございます。
悪趣味な方々にも好みというのがございますしね……。
そうですね、まずは「羽根切り」ですか。
羽根を持ち飛び回るのが身上の生き物から、羽根を切り取って奪うのです。
ちぎるのがお好きという方もいらっしゃいます。ただ小人のようになって、白い足でとぽとぽ歩き回るのをことさらに哀れがって愛でるという……。
後はそう、海水をかけると光る妖精がございます。これは何でも動物性で、蒼海蛍と同じような原理で光るらしゅうございますが……小生科学には疎いもので、あまりくわしくは存じません。
この妖精の足を固めて洒落た形の水槽の底へくっつけて、逃げ出せないようにした上で海水をかけて楽しむという……つまりはインテリア照明ですな。
海水をかけると、疲れきって死んだようになっていたのが正気づいて、必死に羽根をぱたつかせるのが、なんとも哀れで可愛いという……。
もしくは「生き人形」ですか。
小さなテーブルに小さな椅子、硝子の花瓶に造りものの花なんぞを配置した人形仕様のミニチュアハウスに、防腐加工した妖精の屍体を飾るという……。
危険、危険! そんなものを部屋に置く人々の気がしれません!
ああ、そういうものを売っているのがわたしでしたな。はは……。
蜜蝋燭の香りが濃くなってきましたな……今度はいささか気分を変えて、八重のくちなしの香りのする蝋燭を点してみましょうか。