序・初見
※妖精を酷く扱う描写、妖精を食べる描写に満ちています。そういった表現が苦手な方はご注意を!
いらっしゃいませ。
おや、初めてのお客様ですね? ほう、ほほぉう……。
いやいや、これは珍しい。こんな優しげな目をなさったお兄様が、このような悪趣味な店にいらっしゃるとは!
ああ、これはとんだ失礼を……。
いえ、たしかに悪趣味とは申しました。しかし間違いではないでしょう?
妖精をかごの中で飼い殺しにしたり、その死骸を飾り立てては売りつけるようなこんな店、悪趣味以外のなにものでもない……。
はい? 『自分の商売が嫌いなのか』?
ええ、そりゃあ嫌いですとも! 幼いころのあんな体験がなかったら、何が悲しゅうていい年こいた白髪の老爺が、有閑な金持ちの好むようなこんな店……!
おや、『幼いころにいったい何があったのか』?
ははあ……そうくるところを見ると、あなたどうやらお時間をもてあましていらっしゃる?
はい? 『彼女にデートをすっぽかされた』?
ああ、なるほど! それでいつもなら寄りつきもしない「妖精の店」なんぞに入っておひまを潰そうと……。
相分かりました。そういうご事情がおありなら、心ゆくまでお話をしてしんぜましょう。
なんせ老爺の昔語り、何刻時間がもっていかれるか分かりませんがな。
え? 『やっぱりいいよ』? ははは、まあまあそう言わず。飽きたらその場で席を立ってよろしゅうございます。
さあ、まずは一杯お茶なぞを……碧玉という名の玉露です。
このとおり何のとりえもない老爺ですが、茶にはちょっとうるさい性質でして。お茶菓子には白餡の苺大福なぞを……。
春花催いのこんな夜には、蜜蝋燭に火など点して、さあはじめるとしましょうか。