集結/藤堂浩人
浩人は渋谷の大通を外れた裏路地を、列をなして歩いている。
隣には璃砂、その前に若い学生の男女。そして先頭に、素性もわからない若い女。
はたから見れば、非常に奇妙な集団だ。
ここに至るまでにはまぁそれなりに、複雑な事情があった。
鳥越充の身柄を抑えるため璃砂と手分けした後、既にことは起こっていたようだった。遠目からみても分かるくらいの、信じられない量の、血飛沫が舞うのが見えた。予想通り出入り口は混雑を起こし、浩人はなんとか一般人を背に、携行許可の下りた拳銃を構えて前を見た。
「順番ッ、並んで。押さないでッ」
現場は、浩人にとって、理解し難い状況を呈していた。
「んだよ……これ」
一人の男が、ホールの中央。血に塗れて立っている。手には……刀?それだけでも妙なのに、男はそれ以上に奇抜な格好をしていた。頭にヘルメットの様な、それともパーカーの様にも見える、何か歪な被り物をしていた。そこから器用に、目のみが覗いている。
奇怪な、悪魔の容貌。
あれがその、鳥越充……なのだろうか。非常に現実離れした立ち姿だった。
そしてその男が異様なまでに素早い動きで、学生服の四人に襲い掛かっていたのがちらりと、人ごみ越しに見え、すぐに新たな人の波の中に、掻き消え、また現れる。
――危ない。
男の動きは、それこそ人間離れしていた。そこにいたと思って先ほど携行許可が下りた官給の拳銃、ベレッタの照準を向けても、少し目を逸らせばそこにはいない。
常人では有り得ないスピード。
あれほど野生じみた動きをする人間は、もはや人間とは言えない。拳銃を構えても、当たる保証がない。これではあの、取り残された四人が――。
しかしそれに何と。
その四人の内、一人の青年が、それに、たった“一人”で相打っていた。
水の様な流麗な動きで男の刀を避け、跳びかかり組み伏せ、激しい一撃を抑え込み。まるで曲芸のようにして、その男と渡り合う。
まるで闘牛の突進をかわす闘牛士の様だ。
そしてその彼の顔立ちを、何故だろう。浩人は、初めて見た気がしない――。
その青年が、暴れまわる腕を組み伏せた、その時だった。
「藤堂さんッ」
璃砂だ。別れた後、やはり彼女もここに来ていたのだ。彼女は学生服の男女の、二人組を連れている、正に、その二人は……
鳥越と思われる男に襲われかけた、四人のうちの二人だ、間違いない。
「とりあえず、出ましょう」
璃砂が言うと、男子は唇をかむ様に俯き、女子はなんと泣き始めた。確かにこのままここにいられては困るので、誘導に従い素早くここを出た。でも本当のところは。
一人で化け物と戦う、彼を一人にはしたくなかった。