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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第四章 天雷鎚・サンダハンマー
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急狗/沖伽耶奈

その音を伽耶奈が認識したのは、何回かコールが、既に鳴った後だった。

「ぅん……」

私設研究所の自室。染色処理が終わった机。その横の何も置いていない机に突っ伏し、伽耶奈は休憩ついでに眠りこけていた。その浅い眠りを妨げる、コール音。


「誰ぇ……」


ぱたぱたと、突っ伏したまま腕を伸ばして音のありかを探り当てる。

「はい……、沖です」


どうせあれだ、この前からしつこく飲みに誘ってきた理化学研究所の主任教授だ。もしくはドイツの学会でやたらと口説いてきた、若い上に脳みそが空っぽのバカ殿准教授だろう。

――もう少し、まともな人からかかってこないかな……


しかし声の主は、予想だにしない人物だった。

「伽耶奈姉さん、ですか……?あ、その」

――亜子、です。

「ん!?あ、え、ええッ。亜子ちゃん?」


思わず立ち上がってしまった。けほけほと咳をし、声の調子を整える。うん、完璧。

「ど、どどどうしたんだ?」

ところが、気持ちが全然整ってなかった。

そりゃ、連絡先は交換したけど。

まさか亜子ちゃんから電話をもらえる日が来るとは思わなかった。

――なんかお姉ちゃん、うれしいなぁ。

自然に頬が緩んでしまった伽耶奈だが。次の一言で、彼女は氷水を浴びたような気分になった。

「あ、あの。今、アキ君と、真夜ちゃんが大変で……」

気持ちがすっと、明崇の方に向いた。


明崇と真夜が、大変。


――嫌な予感がした。

電話越しにうるさく、何か音がしている。

その音にもどこか、意味があるように思えてきてしまう。

――確か研修旅行、とか……


そうだ。


明崇は今日、神薙を、持って行ってない……

「その、かん、かん……「神薙(カンナ)」っそう、カンナ?を、持ってきてって」

「場所は?」

「んぅ、えーと……」

「代わりました、剛です」

声の主が、途中から聞こえていた、剛のものに変わった。

「今渋谷の、ヒカリエの中に明崇と真夜が閉じ込められてます。例の明崇の追ってた殺人犯だと思います、結構ヤバいっぽいです。なんか、よく分かんないすけどその人殺し……」


――正体がうちの教師、だったみたいで。


何、だって。

それまで聞いてすぐ、伽耶奈は車のキーを引っ掴み、外に出た。

もう眠気は、微塵も感じなかった。


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