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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第三章 嗤魔群・ラフィンレギオン
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交わり/門田璃砂

璃砂は浩人と共に渋谷署の人員と合流した後、手分けをして捜索をすることになった。二人が捜索するのは、最も可能性が高い駅周辺。


まずは容疑者が勤める高校、その生徒などに声をかけ、正確な居場所を突き止める。


「手分けするぞ」

「はい」

璃砂は高校のブレザーを目印に容疑者を探した。彼らは団体で渋谷に来ているようだ。まばらに、その姿を見かけるものの、すぐに人ごみに紛れてしまい話しかけられない。しかしある制服姿の一団が、駅ナカの食品店前でたむろしているのが見えた。近寄り、そのうちの一人の男子生徒を見た、璃砂は思わず硬直してしまった。


「あの子……」


年程度に幼げな顔、しかし翳りのある、クールな目元……。

あの時、注射器を手渡してくれた少年だ。顔の鱗が引いているが、間違いない。


「君ッ」

我慢できず、声をかけた。もう捜査の事、容疑者の事は頭の中から吹き飛んでいた。

問いただしたい。浩人は……。


彼が沖和正と争ったとき、彼の拳がブロック塀を砕いた事を、鮮明に思い出す。


彼に何が起こっているの……。

浩人さんを、人間に戻して。

「君、あの時の……」

声をかけられた、少年の顔には戸惑いの表情がうかがえる。

「あの、ど、どなたですか」

彼がどもりながら問い返してきた。そうか、あの暗がりだから、こちらの事を知らなくても仕方無いか。

――思い出させてやるわよ。

意識しないまま、彼の腕をつかんでしまった。

「注射器。浩人さんを助けてくれたでしょ。彼は……その、大丈夫なの」


――化け物になんか、なったりしないのよね。


その一言で思い出したのか、彼の目が見開かれる。しかしそこで。

「あの、アキタカに何か」

制服姿の黒髪の女の子が、璃砂の前に立ち塞がった。とても美人な、女優でもやっていそうな雰囲気の子だ。

こちらを睨むその眼からは利発そうな、強気な印象を受ける。


彼女さん……かな。


「良いんだ、マヨ。こっちの話」

「でも……」

そのアキタカと呼ばれた男の子が前に出た。

「あれは、三又槍(トライデント)……あ、いや。肉体を修復するもの以外に変なものは入れてません。後生理ホルモンが少し……」

「ま、待って。でも彼は……」

「副作用があるとしたら、一定期間、身体的に丈夫になる程度です。力が強くなったり、よほどの事じゃ体が傷つかなくなったりする……それもすぐに普通に戻ります。変になったりは、しないので……安心してください」

彼は思っていた以上に、その後もしっかりと説明してくれた。人見知りな子、と言う感じを最初は持ったが、案外目上の人間と話すのは慣れている印象を受けた。


――じゃああれも、すぐに治る……

それだけの説明で信用するのもどうかと思ったが、彼自身の話口調から、どうやらウソはついていない、つけないタイプと璃砂は判断した。


璃砂は安堵し、その途端、冷静に立ち返った。

「ていうか、お姉さん誰なんですか」

美人な彼女、マヨちゃんが不審げにこちらを見てくる。

「あ、わ、私……」

まごつきながらも璃砂は、自分の警察手帳を取り出した。

「門田、璃砂……警部補」

彼女がそれを読み上げた。そこで璃砂はやっと、自分のすべきことを思いだした。

「あの、ふ、二人とも、こ、この人……見てない?」

モンタージュを、取り出す。それを見た彼女が言った。

「何これ……。鳥越?」

そこでまた彼らの後ろから、友達だろうか。やけに背の高い男子と、可愛い小柄な女の子が顔をのぞかせた。

「どうしたんだ」

「あ、この絵上手ー。鳥越先生だね」

これで二人が、この絵を鳥越充と認識したようだ。

「そう、鳥越。鳥越充先生……彼がどこにいるか、知らない?」

「この先生がどうか、したんですか」

アキタカと呼ばれた少年が、一歩前に出てきた。事情を説明しようとして、戸惑ったそこで、彼の目が鋭く、尖った。何かを察知したような……


その時――

広いフロアに、耳を刺すような悲鳴が響いた。


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