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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第三章 嗤魔群・ラフィンレギオン
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研修旅行当日/三位明崇

午前七時半丁度。玄関のチャイムが、うるさく鳴った。必要性を感じないなけなしの荷物がバッグに詰待っていることを確認すると、明崇は足早に玄関に向かう。


「おはよ」


桑折真夜が、そこに立っていた。


亜子と剛を途中で拾って、学校までは、あのお馴染みの四人で向かう。そう。


今日は、東京研修、その当日だ。


なのに、最も楽しみにしていたであろう亜子は、眠そうにその両眼瞼をこすっている。明崇と真夜が訪れた丁度その時も、まだ布団の中だったらしい。


「夕べ楽しみで眠れなかったんだってさ」

とは、剛の弁である。小学生かよ。

「しょうがないじゃん。眠れる方がどうかしてるよぉ……」


目が真っ赤。確かに眠そうだ。


「しっかり寝た方が良かったんじゃないか?バスの中だと寝苦しいぞ」

寝れるなら、だけど。

「んむー、ごめんねアキ君……」

そのやり取りを見て、剛が噴き出した。

「明崇、寝苦しいとかこいつが気にすると思うか?」

「……確かに」

うん、気にしなさそうだ。今すぐ立ったまま寝ても不思議ではない。彼女はどこでも寝ようと思えば寝ることのできる人間なのだろう。


明崇からすれば羨ましい限りだ。


「そういう明崇も、目が充血してるけど?明崇も楽しみで眠れなかったの?」


真夜が目ざとく、明崇をからかってくる。

「……」

嫌なヤツだ。絶対、朝会った時から気付いてたろ。

「違うよ。何と言うか……これは、その」

「こういうの久しぶりだから、緊張してたんでしょ」

――図星?

「真夜……」

「ふふ、ごめんごめん」

もはや、言い訳をする気にもならない。


友人と久しぶりの団体行動、旅行。班の一人は友人ですらない――


四年間同世代の友人とは無縁の生活を送っていた、明崇が緊張するのは自然な事だろう。

そして明崇は緊張すると、基本眠れない。この年で一時期不眠症を患っていたほどだ。

――昨日は三時くらいまで眠れなかった……。


昨日は初歩的なミスをした。寝つきが浅いのに耐えかねて2時過ぎくらい、思わずその時刻を確認してしまったのだ。あれで完全に眠れなくなってしまった。


「で、でも、楽しみだよな。俺も自由行動になったら合流する……。連絡くれよ」

剛が去り際、明崇をフォローするように言った。

「そう、だな」

うん。それでも確かに、楽しみだ。こういった催しが久しぶりだからこそ、明崇は柄にもなく、心中は少し、はしゃいでいたのかもしれない。



登校すると、教室は分かりやすい興奮の熱気で包まれていた。教員の朝の挨拶、点呼もそこそこに、校門前のバスまで移動させられた。


これならわざわざ、教室まで行くこと無かっただろうに。


眠気のせいか、明崇は少し苛立っていた。

そしてB組のバスに、順に乗り込んでいく。


「行こ、明崇」


真夜が明崇の手を引いた。それに続いて亜子。ついさっき遅れて登校してきた後藤は、いやいやながらついてくる。結果として明崇の班は、バスの最後尾の座席を陣取った。後に乗り込んできた三島と言う女子が座り、最後尾の座席はすべて埋まっている。


入ってくる側から見て、左から窓際に亜子、その隣に真夜、明崇、後藤、三島という順だ。


「なんで俺が真ん中なんだよ」

「そんなに嫌?」

「嫌じゃないけどさ……」

ここからだと、皆に見られている感じがして、居心地が悪い。

「あ、はいはーい。三位君、由香里が変わってあげよっか」

右端の窓際、三島由香里が後藤越しに声をかけてきた。

すると隣の真夜、その雰囲気が鋭く尖るのを感じる。

「由香里。少し黙ってよっか」

あの満面の笑みに、いつも以上の凄味を感じる。

「え、あ、はい」

「真夜……なんでキレてんだよ」

「ん?別にキレてないけど」

バスはまず最初の目的地、上野に向かって発進した。


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