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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第三章 嗤魔群・ラフィンレギオン
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惨劇の起源/藤堂浩人

「館山係長、大丈夫ですか」

壁に伸びていた館山を、肩を貸し支える璃砂が見えた。

「ああ、んあ……」

意識はしっかりしているように見える。本当のところ、沖和正はいったいどんな用で館山と話していたのだろう、とふと気になったが今はそれよりも。


本当にやるべきことが、今の浩人にはできてしまっていた。


「浩人、さん……」

璃砂が浩人を見上げた。気が付けば璃砂は、浩人の事を、下の名前で呼んでいる。その眼には、浩人の体の異常を慮るような、不安そうなそれが見て取れる。


でも、お互いそのことに、触れようとしないまま。


「行くぞ」


館山に心付けをした後、浩人は先ず、二人にとって事件が始まった場所、野方署に向かうことにした。


「ん、どしたんすか藤堂さん」


まず浩人は遣人に電話をかけ、多野主任に取り次ぐように頼んだ。もし忙しければ邪魔してはいけないと思ったからだ。しかしそれも取り越し苦労だったようで、すぐに多野本人が受話器を変わってくれた。

「藤堂君?」

「はい」

「今何やってるの」

「今から、行方不明者を洗います」

「えッ、い、今から?」

「ええ、今からです」

野方署から、アタリが出るまで所轄警察署を当たる。もちろん狙いは、早稲田通り沿い。


――ここから、挽回してやる。


浩人の読みはこうだ。

今回の連続殺人事件、連続と言う割に、その周期間隔が一定でないのだ。事件を時系列に整理するとこれはとても分かりやすい。


一件目。戸塚署の事案、帳場が立ったのは二月初旬。事件発生はおそらく3月4日。

二件目。四谷署の事案、帳場が立ったのは四月中旬。事件発生は4月11日。

三件目。野方署の事案、帳場は事件発生発覚と共に速やかに立てられた。事件発生は4月27日。


見て分かる通り、一件目と二件目の間に、明らかに一か月近いインターバルが存在している。対して二件目と三件目の間隔は二週間とちょっと。もしこの二週間という間隔が連続殺人、その本来の周期間隔だとするなら。


一件目と二件目の間に未だ発覚していない、警察の目が取りこぼしてしまった被害者が存在するのではないか――


連続、野性的な周期性……。

連続殺人事件としての発覚が遅れたため、その周期性などを今まで、まるっきり見過ごしていたのだ。

沖和正が言っていたのは、恐らくこれを当たれと、そう言う事なのだろう。

そこにあの男の真意は読めないが。


それでも、いい。



先ずは野方署。その生活安全課に提出された行方不明者届を調べる。調べ上げる期間は勿論空白の一か月間、正に今年の3月初旬から下旬までの期間に該当する行方不明者だ。


結果から言うと野方署は、ほとんど空振りに終わった。


該当期間に、これだと確信できる行方不明者は見たところ全く存在しなかったのだ。3月11日に20代男性の行方不明者捜索願が出されていたが、これはすぐにご本人の生存が確認され、家族の元へと連絡がなされている。そもそも男性と言う時点で、今回の件の被害者である可能性は薄いと浩人は感じた。


しかし二度目当たった中野署。

「おい、これ……」


行方不明者届が中野警察署生活安全課に提出されたのが3月23日。行方不明者として捜索願が出されていた、本名、朝倉桂子(あさくらけいこ)。なんと、行方不明者届を提出したのは朝倉桂子の勤務先の、クラブの同僚であるようだった。自宅は落合。彼女が働いていたクラブ自体は中野に存在しているようだ。そしてその行方不明者届には、その行方不明者女性の写真も添付されていた。それを見て浩人と璃砂は、本件に関わっているのではという、その疑念の確信をさらに強めた。


脱色した金髪。小さい作りの顔の輪郭。丁度よく緩み、たるんだ色気のある目元。


「お綺麗な人……、ですな」

試料をわざわざ運んでくれた中野署生活安全課の巡査長が、ポツリと零した。


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