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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第三章 嗤魔群・ラフィンレギオン
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惑う夜/三位明崇

「ま、それ以前に、協力するって言ったって、子供三人加わったところでできることなんてないさ」

「……何を他人事みたいに」


伽耶奈は亜子の部屋で三人と、明崇は剛の部屋で寝ることになった。というより、明崇がそう、主張した。今の真夜や亜子と、顔を合わせたくなかった。


今は洗面台で歯を磨きながら、伽耶奈と口論の続きをしている。


「ふざけないでくれよ」

「ふざけてないさ」

彼女の顔は確かに真剣そのものだ。でも……。

そこで「はぁ」と、伽耶奈はわざとらしくため息をついて見せる。しかしその口から出る言葉にはやけに老成した重みがあった。


「明、今自分に必要なモノが、自分で見えているとは限らないよ」


何故だろう。明崇はその言葉に、言おうとした言葉がつっかえて――

言い返すことができなくなってしまった。



階段を二階に上がって、亜子の部屋の隣。

「おう、お疲れ」

「ああ、いや……気にしないでくれ」


剛の部屋だ。


彼は大きめのヘッドフォンのようなものを付けていた。音楽を聞いていたようには見えない。どちらかと言えば何か、作業をしていたように明崇の目には映った。

「……」


こうしてみると高校生の割に綺麗に片付いていて、そこまで狭い部屋には見えない。

掃除の得意でない明崇ではできない芸当だ。


「寝るのか」

「大丈夫だ。電気は付けといてくれていい」

「いや、俺ももう寝るつもりだったから」

二人で協力し、二人分の布団を敷いた。こうしていると幼い頃、毎日弟と寝床に着いたのを思い出す。

「……あのさ」

「ん?」

同年代の友達と言うのが明崇にはとても新鮮だった。質問に答えようと、体ごと剛に向こうと……。


「さっきの、話」


かと思えば、すぐに現実に引き戻された。また口論をしなければならないのだろうか。捻った体を、そっともとに戻す。

「俺は、さ……。明崇の言いたいことも分かる。自分のやってることに、家族とか」


――あんまし、近づけたくないよな。


「でもそういうのってさ。案外自分勝手だと、俺は思うわけよ。相手の事を考えてねぇっつーか、いや、そこまで責めてるわけじゃないんだけど。単純な話さ。きっと明崇が思ってるのと同じくらい、相手も明崇の事を思ってるってこと」


俺も、そうだったからさ――


亜子と昔、何かあったのだろうか。

「だから危険な場所に身を置くなら一緒に……あいつらが考えているのはそういうことだよ……。うん、それだよ俺が言いたいのは」

うすうす気づいてはいたが、剛は俺なんかより、よっぽど頭が良い。絶対に、口では勝てないなと思う。

「剛は……」

「うん、何だ」

「そういう、さ……」

何が、必要だと思う?

――すぐ隣にいる人達(あいつら)を、守るのに。


分からないんだ。

今まで、守る、なんてことは。

「考えてこなかった」

――それこそ本当に、一人、だったから。

自分の事ならいくらでも。

でも。

彼女達は――


「分からないよ。でも、俺はそれを明崇と、一緒に見つけたい」

――一緒に考えれば、いいんじゃないか?


咄嗟に返事はできなかった。でも、剛はその空気を察してくれたのだと思う。それ以上何も言わず、ホッと、安堵したようなため息をついていた。


会話はそれで終わり、そう思った。

しかし。


「そうだな、お近づきの印にとりあえず一つ、ある情報を明崇に提供しようと思う」


――何?


「今回明崇が追っている、その連続殺人、多分……警察も記者も、誰も信用しちゃダメだと思う」


結局その日の夜、明崇の寝付はそこまで良い物にはならなかった。


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