レポート/三位明崇
食事が終わると明崇は「ゆっくりしていって」と言われたリビングで、伽耶奈と今後の事について簡単な、いわば作戦会議をしていた。
剛はすぐに自室に戻り、真夜と亜子は風呂に入ったようだ。リビングには二人しかいない。
「とりあえず、これくらいは回収できた」
伽耶奈がボロボロになった、明崇の通学カバンを引っ張ってくる。財布は空。携帯も充電はとっくに切れていて、カバン自体も目も当てられないほどに痛んでいる。
そして、神薙――。あの竹刀入れにしっかりと収まっているようだ。
「ごめん……さんきゅ」
「謝ることはない。明崇がやった事、私は正しいと思う。私はいつだって、明の言う事に従う。明の味方だよ」
「ああ、分かってるよ、ありがとう」
伽耶奈の妄信的とも取れる信頼が、明崇の不安を駆り立てる。
その期待を、信頼を、裏切らない行動をしなければ。反省点はいろいろあるけれど……
いや、もう過ぎたことだ。大事なのはこれから。これからどうやって、
――ヤツを追い詰めるか。
御手洗篤史とはこちらから頼んでおいた調査があったにも関わらず音信不通になっていた。そう思われていたがそんなことは無かった。伽耶奈が彼から連絡を受け、なんと非常に細かいところまで、捜査状況をネットのドライブ上にレポートしてくれていた。
伽耶奈のPCでネットに接続し、アドレスとアカウントパスワードを入力。
実際こんな事をすれば篤史も明崇もおそらくただの犯罪レベルでは済まないだろうが、そんな事を気にしていてはまともに行動できない。
「これか」
「ああ、おそらくな」
そのドライブクラウドの中の『For Akitaka』と名称の付いたファイルをクリックする。
デスクトップ上一面に、彼の仕入れたであろう捜査状況が詳しく羅列されていた。
「……」
集中し、現在この事件が刑事事件として、どれほどの捜査状況であるかを的確に判断、導き出す。そうすると、今まで報道された内容では判断できなかった真実が見えてくる。
先ず、今回の事件が連続殺人事件として扱われるようになった経緯だが……。
――なんと、明崇が想像していた状況とは全く異なっていた。
まず明崇は、頭部の損壊と言う共通点から勝手に、戸塚、四谷、中野の殺人事件を連続殺人事件として思い込み、“鎌鬼”の襲来を確信していた。
しかし、実際に捜査を行った捜査員達はある期間までその案件一つ一つを、連続殺人事件として扱ってすらいない。
――これは、どういうことだ……。