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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第三章 嗤魔群・ラフィンレギオン
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合同捜査会議直前/藤堂浩人

目を覚ましてまず目に入ったのは、見覚えのない白い天井だった。見回すと、一人暮らしには広すぎるであろうその寝室の全貌が見えてくる。

「ぅん……」


自分の今の状況を把握するのに、数十秒を要した。


「ああ……」

昨日を思い出すと朝なのに、どうしようもなくまた、途方もない倦怠感に襲われる。


するとどたどたと、忙しそうな音がした。目の前の寝室のドアが開かれ、これまた見覚えのないリビングと、


「藤堂さん、おはようございます」


ドアの前に立つ、スーツの上にエプロン姿の璃砂が視界に入った。

「ぁ、ああ。おはよう」

「寝ぼけてる暇ないです。着替えて下さい」


もしかして朝っぱらから買ってきたのか。新品のスーツとワイシャツが一着。リビングから漂ってくるのは、朝食の匂い、だろうか。


「すまん、助かる」

「いえいえ」

浩人にスーツを手渡しながら璃砂も、いそいそとスーツのしわを伸ばしている。

「なんでそんなに急いでるんだ」

――決まってるでしょう。


「今日は新宿署に移った帳場で、初の合同捜査会議じゃないですか」


携帯を確認する。倉持と多野の両方から数十の着信があった。

「大丈夫です。私から連絡は入れておきましたから」

その対応はむしろ、状況を悪化させているんじゃなかろうか。また健人に何か言われそうだ。

「襟、変ですよ」

「あ……、ああ、すまん」


起き上がってスーツを着ると、かなり自分が空腹であることに気付いた。朝食の匂いが意識を完全に覚醒させてくれる。

「ど、どうぞ」

「いただきます」

豪勢な朝食だと浩人が言うと、彼女が出来合いだと言ってはばからないそれを胃袋に収めて、二人してマンションを出る。新宿までは電車で30分もかからない。

捜査会議には、何とか遅刻せずに来れた。



もう既に、多野警部補、そして倉持が、全国で最大の規模を誇る所轄警察署・新宿署、正にその前で二人を待ち構えていた。

「おっ、おお、おぅ」

連れだって歩いてきた浩人と璃砂を見た、健人がうるさくはやし立て始める。

「いや、良いっすね。やっぱ二人並んで立ってると……、こう、絵になるわぁ」

「藤堂君は大丈夫かい」

「は、はい……?」

「少し体調悪いって聞いてたけど」


体調が、悪い?

――昨日死にかけたと知ったら、この人は何というのだろう。


それにしても。

門田警部補、ウソ下手すぎるだろ。ズル休みとかしたことないのか優等生。


「大丈夫です。何の問題もありません」


何で君が答えるかな……。

倉持はふやけたような笑顔を浮かべ、多野ですら苦笑している。


「……行きましょう」

居心地の悪い空気を察したか、多野は巨大な新宿警察署、その自動ドアへと足を向けた。

「結構、不味いことになってるよ」

多野が、神妙そうに、藤堂に告げる。

「どういう意味ですか」

「会議が始まれば分かることだけど……、でもまぁ、僕達が動き辛くなるのは間違いないと思う」

何だ。何があったのだろう。



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