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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第二章 紫夜叉・ヴァイオレットデヴィル
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UNKNOWN-4

食事が下手な僕に対して、アキラの食事は芸術的だ。四肢の切断にも一切の無駄がない。僕は今でも彼女に初めて、捕食の仕方を教えてもらった日の事を忘れられないのだ。あまりに興奮しすぎて、僕は彼女の食事を目撃する度に股を濡らしたものだ。

そしてその時おこぼれにあずかり味わった禁断の果実。その味もまた、

――忘れられない。


そして今日までそれを忘れられず、その味をずっと、求め続けている。


「酷いよアキラ」

――一度知ったら、病みつきになってしまうよ。

そして僕は脳みそを食べるようになってから、どんどん生命体一個体としては、強靭になっていっているようだった。


“なり立て”の頃はそうでもなかったのに、今では生身で壊せないものは無いし、学校の調理実習で手元が狂っても、包丁で指が切れることは無い。

だから、そうだ。食べるだけ僕は強くなる。僕を食い殺さんとしたアイツを殺せる日も、憧れのアキラを狩る日も、いつかは来ると確信しているのだ。


そして強くなると同時に、脳みそを食べたいと言う欲求も最近増している。


もうみんな家畜にしか見えない。町を歩く人、ひと、ヒト。みんな僕のおやつだ。

――頭の中に、いっぱいのクリームを詰めこんでいる。


小学生くらいの頃僕の好物は生クリームだった。好きで好きでたまらなくて、僕は冷蔵庫からくすねては、両親に内緒で味わっていた。

そしてそこまで行くと今度は、子供のくせして贅沢なことに、食べものに関してこだわりが生まれる。つまり、どこの生クリームが美味しいとか、こうした食べ方の方が上手いとか、そういうのだ。


今そう言ったこだわりに見合うのが、まさに“女”と言う条件にある。男は殺す時もあまり楽しくないし、同性を犯す特殊な趣味もないからつまらない。だがそれ以上に、単純に、女の脳みその方が、美味いのだ。男のはなんだか……、そう。味に深みがない。

それに、美人であればあるほど美味い気がする。


そう。美人は良い……。


アキラを超越し屈服させ、食すさまを、想像する。正に幼い頃覚えた自慰行為のように細部まで。彼女の四肢をもぎ、その小ぶりな頭、その中の甘味に手をかけて……。


いや、でもアキラを殺すのはやはり惜しい……。最初に、そうだな。アキラと同等になることから始めなければ。


僕は強くなる。

旨みと、強さを求めて。アキラとともに、先ずこの東京の裏世界。その生態系ピラミッドの頂点に立つのだ。


野望に燃えていると神の啓示か。「彼」から再び連絡がきた。

「もぉしもーし」

「ああ、あんた今どこ」

「生意気な……」

上から見下ろすような態度に心中が煮え立つ。普段はそこまで気にならないのに、今の僕は気が立っている。


ケチりやがって……、何様だ。良いじゃないか女の一人二人くらい。

お前から、殺してやろうか――


するとククッと声が聞こえた。笑っているのか……?

「ミツル君。そんな態度でいいのかよ」

おい、なんだその言い方。何かいい話でもあるのか。

――贅沢しても良いって、言ってるようなもんだぞ。

「女。やってもいいってよ」

おお。期待通り。

「ただし」

ただし、何だ。早く言え。

「やっていいのは一人だけ。しかも標的は指定してある。しかもあんたの嫌いな男連れだ。」


おいおい。男は殺すななんて無茶言うんじゃねえだろうな。


言う前に察したか、彼はこう言う。

「男ももちろん始末して構わないさ。その二人に関しては煮るなり焼くなりすきにしろ、と言うのがクライアントの要望だ、まぁつまりだな……」


――人を二人、消せ。


誰の都合も知った事か。この際だからたくさんの血を浴びよう。きっと最高に気持ちいい。

そうだ。

もらった薬、あれを全部直接注射でキメて、男をぶつ切りにして、女の方を無理やり()って、()って、そして最後に食う。

――うん、良いよ。最高だ。

不思議だ。先ほどまで暗く映っていた新宿のネオンが、先ほどとは全く違って見えてくる。

全身が痺れるような陶酔感。

彼から標的の位置情報を知らせる旨のメールが届いた。確認して一呼吸おいて、僕はありったけのダイヤを溶かし――

丁寧に静脈に注射した。


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