告白/沖伽耶奈
「お久しぶりです」
「うん、久しぶり」
互いにぎこちない挨拶をして、真夜の自宅のある、中野駅方面の一本道を歩き出す。
気まずくなる前に、ここはストレートに聞く事にした。
「明崇が今どこにいるか、知らない?」
その問いに。彼女の目線が凝固し、かと思えば左右に揺れ始める。
「分からない、です……」
弱弱しく頭を振る。
「いやぁ、今明と連絡が取れないままなんだ。姉としてはちょっと心配でね」
「……」
きっと真夜は、明崇の失踪について伽耶奈も知らない何かを知っている。それはあった時の反応で確信している。何か悪い事をしたわけではないのだろうが、居心地が悪そうだ。しかしそれを強引に言えと強制すべきじゃない、と伽耶奈は判断した。
――本当は、泣き縋ってでも聞き出したいけれど。
どうでもいいような会話をしながら平和な中野の街並みを眺める。歩いて少し経って。
「明崇とは、あの頃に戻ることができたんだって、この前まで思ってました」
彼女が話し出すのを、伽耶奈は注意深く待った。その結果だった。
「明崇とちゃんと話できたし、亜子にも……、ああ、亜子って言うのは私の友達なんですけど。それと亜子のお兄さんと四人で、三日前……、放課後一緒に遊んだり、したんです」
なんと。あの人嫌いの明崇が。それにしても三日前と言うと。
――明崇が喫茶店に行った日だ。
つまりその日に何かあったと、そういうことか。
「で、別れ際に、亜子を送ってあげてって。私二人が仲よくなればいいなって思ってたから、明崇に、そう頼んで」
そしたら。
「亜子、なんか変なのに巻き込まれて、で明崇はそれを何とかしようとして、でもそれを亜子に見られたから、もう会えないって、アイツ……」
幼い頃から大人びた性格をした真夜だったが、その彼女にしては取り乱した、はっきりしない物言いだった。
まぁそれでも十分に。
大体、事情は察した。だとしたら、明崇は相当危険な状態にいることになる。
――あの状態になった明を元に戻すのは、骨が折れるな……。
しかし明崇がいなかったら、その亜子と言う子も危なかっただろう。
「伽耶奈さんは知ってるんですか?明崇が今どうなっていて、その……何をしているのか」
それは。話すべきなのだろうか。しかし明崇からも聞かされている。
――真夜に見られた事を、彼はずっと気に病んでいた。
自虐的に引き攣る頬。涙。昨日の事のように思い出される。
「明崇は勝手に……、私に言いもせずに距離を取って。そんなの納得できないです」
「あの姿を見ても?」
「私は、そんな事気にしません。きっと亜子も気にしない。伽耶奈さんも、明崇も。そんなに私の事、信じられませんか……」
悲痛な、等身大の、女子高生の叫びだった。
そうだ。真夜はそんな事気にする子じゃない。事実四年間の間も、彼女は明崇の事を忘れずにいてくれたのだ。
普通の女の子であれば、都合よく忘れてしまうのではないだろうか。
伽耶奈は打ち明ける事を決心した。明崇の四年間。彼女には知る権利がある。