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D.N.A配列:ドラゴン  作者: 吾妻 峻
第二章 紫夜叉・ヴァイオレットデヴィル
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ダークサイド・マーダー/門田璃砂

追加注文をした後、浩人は大まかに現在の状況を睦美に教えた。

勿論報道規制の敷かれた頭部損壊の詳細、四肢切断など、帳場に関わる捜査員しか知らない事実については、さすがに伏せて話しているようだった。


が。


遺体と現場の状況について話していた途中、中性的な彼の顔つきが厳しくなる。話が進むごとに顔をゆがめていたのは気になっていたが、如何したのだろう。

「あのさ、浩人」

うわ、この人……こんな鋭い目つきできるんだ。

「もしかしてさ。いやもしかしてなんだけど……、その事件の遺体って」


両の手足、千切れてなかった?


え。

「ついでに頭蓋骨の状態は?何か」

「ちょっと待て、ストップだ」

藤堂がいつになく真剣な目つきになる。なんで帳場の捜査員しか知らない事を、他の所轄の人間が知っている?彼の目はそう語っているに違いない。


間違いない。彼は四肢の有無を確認した後、頭部損壊の特徴について聞こうとした。

――どういうこと?


「その顔……。浩人も璃砂さんも、なんで知ってるんだって顔だね」

彼は自身の胸の前で両肘をたて、指を組んだ。


「これから話すのは、僕の独り言ということにしといてよ。被害者は女性。ここでの実名は勿論伏せる。彼女は丁度一か月くらい前、戸塚警察署の管区内で変死体として発見された。もうほとんど白骨化が進んでてミイラ状態。捜査は難航して手詰まり。帳場も縮小されて、今は戸塚署強硬班の巡査二人と捜査一課4係の主任一人しか動いていない。もう、未解決で半ば帳場は固まってる。しかも、身元の特定も果たせずに、ね……」


戸塚署の殺人事件の帳場。しかし身元不明とは。普通は警視庁の威信にかかわる事態だ。


「でもその、遺体周辺の現場には特徴があった。雨風で煤けているけれど大量の血痕の後。ルミノールで現場はそこらじゅう真っ青になったって言ってた。それと四肢の切断。驚いたことにね、骨が粉々に粉砕されていたんだよ。信じられるかい?」

そういうとこちらに視線を投げる。確かに信じられない。


だがあの現場を直に見た、浩人と璃砂は別だ。

――よく似ている。中野の帳場と。


「それだけじゃない。その、頭部が特に発見当時どう見ても異常で……戸塚署じゃ結構騒がれたんだ。だからその、浩人の言う頭部損壊ってのがどうしても気になってさ……後被害者がおそらく女性って言うのも。それこそニュースには隠されたけど、こっちの遺体に関しては勿論詳細は隠して頭部の損傷って形で報道してた。きっとその全容は君たちの方が詳しいと思う……。で、その頭部についてだけど、ず、頭蓋が、割られていたらしいんだ。丁度スイカみたいにってそう言ってた」


彼はその表現に怯えるように、口元を震わせながらも続ける。


「僕も捜査に参加したよ。人員が足りなかったから地取りには生安も駆り出されたんだ。捜査会議に参加した感じだと、初動捜査がまるっきり失敗だったんだと僕は思う。でも仕方無い。だって誰だって殺した後にその……四肢の切断とか、頭蓋の破壊とか、そういう異常者の犯行っていうのなら、そのほうがまだわかりやすいよ。だからその方面で捜査した。でも決定的な容疑者は全く見つからなくて……」


「え、ちょっと待って……下さい。それ、本当に戸塚の帳場の話ですよね……?」

浩人でさえ絶句している。璃砂は思考が追い付かず、とっ散らかった頭の中を整理することで手一杯だった。


骨を、粉々に、粉砕。大量の血痕の痕跡。スイカのように割られた、頭部。


聞けば捜査中に見た光景が、いやがおうにも思い出される。


脳裏に浮かぶ乾いた大量の血肉、押しつぶされて穴の開いた電柱、そしてザクロのように真っ赤な血に染まった、頭蓋の半球。


その一つ一つが璃砂の脳内で事実としての存在を主張して、考えがまとまらない。

「つまり、浩人……」

「ああ、今回の中野の一件」


――連続殺人の可能性が、出てきたわけだ。


あの殺人が、他に。しかもまだ、これから起こる可能性があると言うの……?

璃砂は自分の背筋を、何か冷たいものが掠めるような予感を覚えた。


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